樹海の中では、自分の入ってきた道を見失わないように、

途中の樹に、一メートル間隔に赤い紐で目印をつけながら進むのですが、

頭上を見上げるとカラスが飛んでいて、
それを見るたびに何ともいえない嫌な気分になったものでした。

 案内をしてくれた年配男性の話では
毎年、定期的に地元の捜索隊が入って

自殺者の遺体収容を行っているということもあって、

私が入った時は、その捜索が終わったばかりと聞いてホッとしたものです。

とはいえ、女物の時計や男物の黒い革靴など、辺りには遺留品が幾つも散乱していて、

中には明らかにここで首を吊ったであろう、木の枝にかかったままの古い縄や紐が、
そのままの状態で残されていて、

それらが、
風に揺れてブラブラしているのを見るのは、とても生々しいものでした。

周囲には睡眠薬の小瓶らしきものもありました。

(こんな場所で、さぞかし寂しい亡くなり方をしたのでしょうね…。)

と、心の中で手を合わせながら初日の取材を終えた私は、その場所を後にしたのですが・・・・。


樹海での取材が終わって、近くの旅館に到着したのは、

辺りもすっかり暗くなって、
夜の9時をまわっていたかと思います。

その日は、修学旅行生でどの部屋も満杯、私たちが通されたのは、
離れのような古くて薄汚れた部屋でした。

他の男性スタッフ達とは1人だけ別の部屋に通された私は、
何となく、カビ臭い部屋だなぁと思いながら

翌日の早朝取材に備えて、
早めに布団に入ったものの、疲れているはずなのに
何故かなかなか寝付けないのです。

その時の気持ちを表現するのは、
とても難しいのですが、心がザワザワしているとでも言いましょうか、

どこか落ち着かない、身体がゾクゾクするような違和感がありました。


清水由美