昨年の秋、産業能率大学の通信教育課程を卒業し、その後も科目等履修生として、オンラインスクーリングにひっそり(?)と紛れ込みました。この半年で3科目を受講し、2年間の通信教育と合わせて振り返るうちに、終えるに当たって「成績」や「評価」について考えました。これまであまり気にしたことはなかったのですが…。

 

ずっと昔──40年ほど前に通っていた母校の成績証明書を、産能大学への3年次編入のために取り寄せました。久しぶりに目にしたその成績表は、若い頃の記憶を静かに蘇らせました。

 

当時の地方の女子大は、華やかさはあっても派手ではなく、先生方も今とは違う意味で誇りを持っておられました。母校を卒業し、留学を経て、再び母校で教鞭を取られる先生方も多く、特に年配の女性の先生の凛とした姿は今でも鮮明に思い出されます。京都大学出身の男性の先生は芸術にも造詣が深く、試験はテキスト持ち込み可。内容は単なる暗記ではなく、考えを深く問われるものでした。私はその先生が好きでした。一方で、ただテキストを読むだけの授業をされる年配の男性の先生もいらして、試験はテキスト持ち込み不可。内容もそのまま答える形式で、唯一「不可」の成績を取った科目でした。

 

若い頃には気づかなかったことが、今になって見えてきます。

 

この2年余りの学びを通して、試験や問いに対する自分の姿勢が、少しずつ見えてきました。

 

今回受講した「組織変革論」は、最後のオンラインスクーリングになるかもしれません。講義はとてもわかりやすく、興味深く、面白いものでした。課題も試験も文字数制限がなく、課題3つで約2,500文字、試験記述式2つで約3,000文字。どこまで書けばよいのか迷いながらも、自分の中に落とし込むようにして取り組みました。

この科目でも、テキストの内容をまとめるだけでなく、自分の考えや日常、仕事とのつながりを、自分の言葉で表現することが求められているように感じました。講義を通して思い浮かんだ知人・経営者の事例を交えて書いたのですが、先生の評価は気にせず、頑張っている知人の姿──今の中小企業の経営者の姿を伝えたいと思いました。変革とは、こうした個人の行動から始まるのではないか──そんな思いを込めて書いた結果、嬉しいことに「S」をいただきました。オンラインスクーリングで8つ目の「S」になりました。

 

しかし、先生がどのような観点(この科目の重要なこと)で問いを立てているかを考えずに答案に向かうと、どれほど文字を重ねても、どこかすれ違ってしまうことがあり、予想外の成績になったりと・・・むしろ、迷いなく書けた時ほど、あとから「重要な観点を見落としていたのかもしれない」と感じたこともありました。私自身、スラスラと書けた答案が沈んでいった経験があります。

もちろん、テキストには基本的なことが書かれ、その理解は必要です。

ただ、その先が見えるかどうか──それが、私にとっての学びの本質だったように思います。それが、高校までの勉強とは違うところのように感じています。

 

 

振り返ると、私はいつも「よくわからないなぁという冷や汗💦」から課題や試験に取り組んできました。自分自身で腑に落ちていかないと書けないため、テキストに書かれていることをそのまま書くことができず、推敲しているうちに少しずつ自分の中で変化が出てきて、何かが繋がっていく感覚があったり、「この科目のこの問いは、私に何を問いかけているのだろう」と考えたり…。そのままテキストや先生に正解を求めることはできず、自分がこの受講を終えてどう思ったのか、どう繋がっていくのか、どう繋がってほしいのかを、自分の言葉で書いてきたように思います。

 

若い頃に出会った京都大学出身の先生との記憶も、今の学びと重なります。化学の科目試験で「よく出来ている」と声をかけていただき、成績も「優」でした。その後の自然科学では「良」だったのですが、その試験の際には先生の顔を見ていたような気がします──先生の正解・テキストの中に書かれている正解を求めていたように思い、それが成績の差だったように、今更ながらに感じます。あのとき、先生は肩越しに私の答案を眺めておられました。今思えば、少しばかりガッカリされていたのかもしれません。

 

今回の「組織変革論」では、知人の経営者の姿を通して、変革とは何かを自分なりに考えました。講義での重要な点と繋がった感覚がありました。そして、その繋がりを答案に素直に書くことができ、それを先生が読んでくださって、その結果Sを頂けたことは、先生にそのことが伝わったのではないかと思うと嬉しくなりました。

 

40年という時間を経て、再び大学で講義を受けることができた日々は、やり直しではなく、重ねてきたものの先にある豊かな学びになりました。

 

試験という問いを通して、科目の中にある重要なことと、自分の中にある思いや経験と静かに繋がっていく感覚がありました。そして、それを誰か(先生)に話すことができました。その言葉に耳を傾けてくださった先生がいらしたことが、何よりも嬉しいことでした。

 

──それが、オンラインスクーリングの授業を終える今、心に残った一番の思い出になりました。