8月の初め、参加している勉強会で長く読み進めてきた『コンテクスト・マネジメント』(野田智義著)を読み終えました。1年以上かけてじっくりと向き合ってきたこの本は、質の高い組織・会社を目指すことは難しいけれど、その素晴らしさを教えてくれました。ワクワクすることもあり、読み進めるたびに新たな発見がありました。   

 この勉強会は少人数制で、オンラインで行われています。参加者は経営者や後継者の方々が中心です。ただ感想を述べ合うだけではなく、先生からのフィードバックを通して、より深く考える機会があることが、私には合っているように感じています。表面的な感想には、時に鋭い問いがなされることもあり、緊張する瞬間もあります。でもそれは、私たちの学びを本物にするための先生の優しさなのだと感じています。先生が多くの時間をかけてご準備くださったと思われる資料をもとに、丁寧に説明とワークを交えて進めていきます。

このテキストで印象に残っているのは、第8章に登場する「不真面目な優等生」という言葉でした。

野田先生はこう書いています。『・・・アクティブ・ノンアクションはとりわけ伝統的な日本企業に蔓延していると危惧しているからです。その状況を僕は「不真面目な優等生」の氾濫と表現します。

 不真面目な優等生とは、組織から与えられた仕事はそつなくこなし、頭をなでられることにモチベーションを見いだす人を指しています。正解(と思しきもの)を探す能力に優れ、目先の問題を解決する能力にも長けていますが、その行動には未来をつくり出す活力や躍動感がまったくといっていいぐらい欠落している。日本企業では、社員だけでなく、経営幹部の多くも、この落とし穴にはまっているように見受けられます。これこそが、バブル崩壊後から続く失われた30年の真因ではないかとすら僕は思っています・・・』  組織の中で与えられた仕事をそつなくこなしながらも、未来をつくる力が欠けている——そんな姿勢が、長く続く停滞の一因ではないかという指摘に、深く考えさせられました。これは、大学での学びや他の勉強会でも感じることがあります。「正解」を探すことを目的にする人が多く、先生の考えを先回りして答えようとする姿も見受けられます。しかし、実際の人生や社会の中で必要なのは、自分自身で考え、選択していくしかないことが多いように、この年齢になってヒシヒシと感じています。

私自身「生きにくいとか、今の世の中には合わない。」…と思ってきたのは、案外この辺りに理由があるのかもしれないなと、ふと思いました。子どもの頃から、何も考えずに暗記するだけは苦手で…「不真面目な優等生」にもなれなかったなと・・・・・・

コンテクスト・マネジメント 個を活かし、経営の質を高める (至善館講義シリーズ)

 

 この2か月あまり、アメリカ在住の日本人の先生によるオンラインセミナーにも参加しました。専門職の方々が多く、大学院を出られて留学されている方々も多くいらして・・・最初は場違いかもしれないとドキドキしました💦

始まってみると「方法や手段を教えてほしい」という質問が多く、少し驚き、ガッカリしました。先生は穏やかに「方法は状況によって変わります」と繰り返されていて、その言葉にホッとしました。もちろん、知識やフレームワークを知っていることも大切ですが、基本を学び、実践し、行動し、自分で掴みとって自分のものにしていくしかないのだと思います。セミナーのワークでは、クライエントの気持ちを体感することで、状況を感じ取る力の大切さを学びました。知識だけでは届かない部分、先の部分を自分で捉え、鍛えていく意味、必要性を教えていただいた気がしました。

また、同じグループの方との対話を通して、どれだけ学びを重ねても、それを自分の中で葛藤し、行動に移さなければ前には進めないことを感じました。専門家と呼ばれる人は多くいますが、本当の専門家は、そう多くはないのかもしれないとも思ったりしています。

 

 先日の大学のスクーリング「組織変革論」でも、変革には時間がかかること、そしてそれをやり遂げようとする思いを自分の言葉で語れるかどうかが大事だと言われていました。先の野田先生が語る「アスピレーション」もそれを掲げ、自分の言葉で語ることの重要性を書いておられました。

 

 セミナーで出会った方の中には、「私には無理」と繰り返す方もいました。もちろん、行動してもうまくいかないこともありますし、賛同者が少ないかもしれません。でも、あきらめてしまえば、今まで学んできたこと、大事にしてきたものも、そこで止まってしまうように思い、悲しくなります。また、起業されたばかりの方と話す際に「自分には優れた知識や良い製品があるのに、上手くいかない、周囲が理解してくれない。」と話す方に出会うことがあります。その気持ちは分かります。しかし、伝わらない理由を外にだけ求めてしまうと、歩みが止まってしまうこともあるように感じます。だからこそ、本当に大切なのは、自分の思いを言語化してどう伝えていくのか、半歩ずつでも進み、明日に繋げていくしかないのではないかと思います。

 

 お二人の先生の姿から、ご自身たちが大切にされてきたミッションをやり遂げるために、一つひとつの困難を乗り越えてこられたことが伝わってきます。その姿勢に触れることが、何よりも価値ある学びなのではないか――そんなふうに感じたりしています。

 

 このように書き進めていくと、気づけば、今も揺らぎや葛藤している自分がいるように思います(笑)

 

 勉強会のメンバーの会社が、今回の大雨で床上浸水の被害を受けました。

 後を継がれて、変革が少しずつ上手くいっていた矢先でした・・・

 私は東京の青空を見上げました。私の思いや祈りが届くように願っています🌻