サークルワンのおっちゃん

机に足を取り付けようとしてインパクトでネジを回そうとしても回らないドゥルる

スカっスカっ

あいた!

先に穴空けないと難しいでしょ



そして家で置いてみたら足がグラグラする!

おっちゃん!


コンビニで買い物をし、女従業員が釣りを手が当たらないように落として渡した。いくら私がきしょいからと言って。

不愉快です。



指は10本あるんだよ?



潮風が吹いている…



そこは海が近い埋め立て地の草っ原



そう、さっきまで美依子と私がいた場所だ。





一台の車が止まった。


車から清華が出て来た。




清華が辺りを見渡すと、うずくまっている男が四人いた。



清華は男達に近づき尋ねた。


美依子は?


すいません、ターゲットに車で連れさられました。


腕を折られた男が答えた


へえ、その様子だとお前ら四人がかりでしとめられなかったんだ。そっかあ。そいつ強いね。


はい、奴はやたら握力が強く、私は掴まれただけで腕をへし折られました。
そして武器を持っていました。恐らく自分が襲われることを予め想定していたと思われます。


ふーん、ちょっとただ者じゃあなさそうだね。



清華は淡々とした口調でそう言うと、


今回は不覚をとりましたが
奴は必ず捕まえてみせます!


と指を失った男が言った。


はは!言うねえ!でもさ、


お前ら、もうダメだよ。チャンスないよ。
武器持って四人がかりで無理だったんでしょ?

俺が怖いから体裁だけでも取り繕ってるだけでしょ。もう無理だって本当は思ってるでしょ。


そっそんなことは!


男が自らを奮い立たせようとした瞬間



清華は男の胸ぐらを掴んだ。


いいね。ちょっとでも闘志が残ってるなら使えるかも。その闘志、増幅してあげるよ。





ぐがあああ!




清華は男に自分のエネルギーを注入した。



…清華が手を離すと、



男は震えがとまり、落ち着いた表情で




清華さん、ありがとうございます。自信と力がみなぎってきました。

この力、必ず清華さんの役に立ててみせます。




ばーか


ひゅんっ


清華は跪いた男の頭を蹴り上げると、男は首が180度回転した。縦に。

あーあーやっぱ男は使えねーなー。
お前の器はその程度かよ。あれ以上エネルギー注入してたらお前、パンクしてたよ。
美依子のほうが全然ふれ幅あったわ。お前、全然使えねえよ。


清華はそういい捨てると、残った三人を見渡した。

なんでだろーな。男より女の方が器がデカいんだよ。俺は例外としてさ。
女の方がストレスに強いのと関係あんのかな?

つーかお前らはそもそも心が折れてるから。

はい!死刑執行。


ひぃっ

ぐしゃっ
ガッ
みしっ





清華は蹴散らすように三人にとどめを刺すと、車に乗ってその場を後にした。




もしもし?俺だけどさ、例の埋め立て地に生ゴミ四人分出たからかたしといて。じゃ。




こいつらやった奴、面白いかも。


清華は車を走らせた。


続く













その頃、


進は恵と会っていた。



近くの駅で待ち合わせて、今は駅から近くの公園でベンチに座っている。


子供が砂遊びしている。



いきなり電話あってびっくりしたよ。恵さん。どうしたの?


進は恵に尋ねた。



はあ、はあ、今日は暑いね。
恵は汗だくになっていた。

ここじゃなんだし、
良かったら進さんのうちではなせないかな?


進はいきなり恵を自宅にあげるのは少し抵抗があったが、確かに外は暑かったので、了承した。


二人は進の部屋に向かった。特に会話もなく、二人は並んで歩いた。


進の部屋に着いた。


浩子さん、亡くなったね。病院に運び込まれたけど、もう遅かったみたい。


ごくごく…
恵はコーラの一リットルサイズを飲んでいる。


そうだね…もう、僕もびっくりしたよ。突然だったし。死因は心臓麻痺?脳出血?




進さん…

恵は意を決して話し出した。

私、見ちゃったの。進さんがみんなに配ってた飲み物に何か入れてるところ。


浩子さんが亡くなったのって、それと関係あるんじゃない?





進さん帰った後、警察の人が言ってたよ。
病院で血液検査したら薬物の成分は検出されなかったけど、なんらかの免疫反応があったって。死因は免疫の過剰反応によるショック死だって。




進は絶句していた。


美依子…証拠は残らないっていってたじゃないか。…



これでもし、恵にさっきの話を警察に証言されたら間違いなく僕は疑われる




なんてことだ…


進は視界がグニャグニャになった。





グビグビ…ぷはあ。
進さん、安心して。私、何も警察に話すつもりないから。私は、進さんの味方なの。

ゲプ
でも、なんでそんなことしたのか知りたくて。ゲプ

恵はコーラを飲み干すと、そう言った。






え…飲み物に僕が何か入れたって?何のこと?


進はしらを切った。


進はいつもその場しのぎの嘘をつく。


進さん…浩子さんに飲ませたグラス、ちゃんと片付けた?
警察に中身調べられたら証拠出ちゃうんじゃない?



はっ!


進は愕然とした。


なんてことだ…薬を飲ませるなんて簡単なことだと思ってて、薬は検死しても検出されないって聞いてて、グラスのことまで考えてなかった。


進は青ざめた顔を両手で覆った。


もうだめだ…僕は捕まる…関係ない人を殺して捕まる…

なんだそれ…終わった。僕の人生…






私が…私がなんとかしてあげるよ。
むっしゃむっしゃ

え…


私、今から職場に戻って思い出したことがあるとか言って警察に聴取し直して貰ってくる。もちろん全然進さんとは関係ない話を持ち出すよ。

そして、隙をうかがって浩子さんの飲んだグラスを処分してくるよ。
むっしゃむっしゃ


もう警察来て二時間は経ってるから、もしかしたらグラスは警察が持ち帰ってるかもしれないけど、まだ間に合うかも知れないし。
くっちゃくっちゃ


もうだめだよ。きっとグラスは回収されてるよ。
でもなんで僕なんかの為にそこまでしてくれるの?




私、進さんのこと…。


恵は、進に作って貰ったまかないのパスタの味を思い出していた。
ガーリックの焦げた風味と海水のような強い塩味、きつめのアルデンテの食感…

進に惚れた瞬間だった。


私、進さんの携帯番号聞いた時からご飯誘おうと思ってたんだけど、なかなか勇気が出なくて、そしたらこんなことになっちゃって。

進さんは私が警察になんか捕まらせないから。

くっちゃくっちゃ
恵は駅前で買ったダブルテリヤキチーズチキンカツサンドデラックスを平らげた。


恵…僕のことを…?もしかしたらそんなこと言っていまから警察に本当のことを話すつもりなんじゃ。

それに僕には美依子がいる。
(進の中では既に美依子は進の嫁だった。
妄想はとどまることを知らず既に子供の名前まで考えていた。)


恵の言うように確かにグラスの中身を調べられたらまずい。

けど、警察は殺人事件としてこの件を扱ってるとは限らない。グラスの中身まで捜査
は行き届かないんじゃないだろうか。


進はこういったことには変に楽観的なのだ。




それよりもむしろ、今、恵に全てばらされることのほうが不安だ。



…進は頭を抱え込んだ。



恵さえいなければ、警察の捜査がグラスにまで届くことはない。

進の頭の中では、いつの間にか楽観的観測を前提とした思考回路が出来上がっていた。



進さん、私は、
進さんがどんなにみんなからいじめられても嫌われてても、私だけは味方だよ。安心して。私があなたを守ってあげる。


恵は進を包み込むような、母親が我が子を見つめるような暖かい眼差しでそう告げた。



は?


その瞬間、進の中で何かがはじけた。



進は恐ろしい形相で恵の首を絞めた。


ざけんな!
何言ってんだ!

許さないっ
僕がみんなからいじめられてるって?嫌われてるって?嘘つくんじゃない!


僕はみんなから慕われてる人気者だあ!



お前っお前さえいなければ!
はあはあ!


進は両手で恵の首を絞めている。


しかし、恵の首回りは50センチ近くあり、手が回りきれず完全に絞めきれてない。


進さん…やめて…


進さん…


進は5分間、恵の首を絞め続けた

恵はとうとう力尽きた。





はあ、はあ、





恵が倒れている。




ああ、僕は関係ない人間を二人も殺めてしまった。

完全に終わった…


竹原に帰りたい…お母さん…








進は恵を部屋に残し、出て行った。




ゆうさん…



進は私が言ったことを思い出していた。


頑張ったよ。僕は。なのになんでこうなるの?


美依子…僕はもう終わった…ごめん、美依子のそばにはいられなくなっちゃった…




もう何も考えられない。何も感じない。すべてがどうでもいい。



僕は何のために生きてきたんだろう。









パンッ



進のこめかみから血がはじけた。


進はこめかみに手をやった。
生暖かい液体が手についた。

…血?


えっ、えっ…何?えっ


パン!パン!

進の隣にあった銀行の看板に穴が空いた。


そして進の眼鏡の弦が弾け飛んだ。


いたっ!えっ…何?撃たれてる?えっ


進は腰を抜かした。腰を抜かしながら逃げ出した。








100メートル先のマンションの一室で、ライフルをカバンにしまい、進の後を追う者がいた。



進は暗殺に使用した薬の件での口封じの為、今から消されるようだ。


チャリ、チャリ、

ウォレットチェーンの擦れる音とともに男は進を追った。

三発とも外すとはな。
やっぱりライフルは苦手だ。


男にとって、進を始末することはただの暇つぶしに過ぎなかった。


進は懸命に逃げた。



そして自宅に戻ってきた。


殺される…


進は震えている。


部屋の奥に入ると、恵が倒れている。



恵…なんてことだ。私も殺されてしまう。
警察に…いや、警察には会いたくない。

どうすれば…


ふと恵の持っていたカバンに目がいった。携帯がカバンからこぼれ落ちていた。

以前進が飲み会でふざけて被った着ぐるみの写メが、待ち受け画面になっていた。



恵…本当に僕のこと…






…うう…




恵は目を覚ました。


恵は死んではおらず、気を失っていただけだったのだ。





進さん…



恵っ!良かった!生きてて良かった!
僕はなんてことをしてしまったんだ!許してくれ!ごめん、恵っ!


進さん、いいのよ。私が何か気の障ること言っちゃったんだね。こっちこそごめんね。


僕は君のことが信じられなくて僕はっ恵っううっ


恵は泣きじゃくる進を優しく包み込んだ。


キュウウウウン

恵のお腹が鳴った。どうやら先程食べたものが勢い良く消化されているようだ。



そうだっ恵っ僕は今狙われてるんだ。ここにいたら恵も危ないんだ。警察は呼びたくない。どうしよう。恵、僕どうすれば…


進さん落ち着いて。私が進さんを絶対守ってみせるから。安心して。進さんは誰にも触れさせないから。


キュウウウウン






その頃ライフルを持った男は、すでに埋め立て地の空き地へ向かっていた。

そう、この男は清華だった。

私と美依子の決着までの暇を弄んでいたのだった。


もし私が美依子の呼び出しに応えずに進を尾行していたら…


どちらにしろニアミスだったのだろう。私と清華はまだ出会う運命ではなかったのだ。



進は自分から脅威が逸れたことを知らなかった。


その日、

進と恵は、いつまでもいつまでも抱き合っていた。




続く。









相手を好きにさせる
好きにさせてからつけこむ。
利用する。自分を弱みにする
周到に、




なんてことだ。浩子が死んでしまった。




しかも間違って殺されたのだ。進に。



進…奴は取り返しのつかないことをしてしまった。




私も、何が何やらわからない罪悪感というか、後味の悪さを患っている。




店の営業は中止となり、警察が来て現場調査している。


その場にいた従業員は全員事情聴取を受けた。


進は精一杯、知らぬ存ぜぬで対応していた。



浩子の悲痛な叫びが頭から離れない…



なんで彼女が巻き込まれなければならないんだ。


進…なんて愚かな奴だ。





進は聴取が終わると、放心状態のまま帰っていった。


私は進の後をつけることにした。


進は完全に呆けていた。


帰り道、何度も躓いたり人にぶつかりそうになったり、立ち止まったりした。


普通だったら徒歩10分の道のりを
さまよい歩く進は、すでに30分かけていた。



私は店を出てから進に見つからないようそして、レスの聞こえるギリギリの距離を保っていたが、200メートル程の区間、障害物のない真っ直ぐな道にさしかかった。


どうしたものか。200メートルは完全に射程外だ。レスポンスの射程距離は、この大通りの喧騒を考えると、10メートルくらいだ。

かといってレスの聞こえる距離を保つには、進が振り返ったら一発で見つかってしまうリスクがある。


…進はずっと放心状態で、さっきからずっとレスは聞こえない。


一旦射程外に距離を置くか。


私は200メートル間、進を追わないことにした。


進はしばらくその場に立ち止まったりして、なかなかその200メートル間を渡り切ろうとしない。


私は、少しイライラしていた。


進め!進!

私は、心の中で強く念じた。


念が通じたのか進はヨタヨタしながらも200メートル間を渡り切った。

よーしよくやった進!やれば出来るこだよ!


帰れ!早く家に帰れ!

すでに職場を出てから一時間が経過していた。


私は、進に追いつこうと急いで走った。


あっ


進が携帯を取り出した

誰かと話している。



くそっ!距離を取ったことが裏目に出たか!

進は200メートル間、一度も後ろを振り返ることもなかった。結果論かも知れないが、もっと信じれば良かった。進の目の節穴さを。


私が追いつく前に
進は携帯をポケットにしまっていた。

間に合わなかった!
誰からだったんだ?

美依子か?


私は射程圏に追いつくと、
進に意識を飛ばした。


えっ恵?

恵は職場のコだ。
どうやら恵から電話があり、今から落ち会うことになったようだ。


なんで恵?つか恵と番号交換してたんだ進の奴…


ちなみに進もなんで彼女から呼び出されたのかよくわからないみたいだ。

私は、このまま進と恵が落ち合うところまで尾行し続けようと思った。



ブブブ…


!私の携帯だ。



美依子からだ!



まさかあっちからかけてくるとは


もしもし。まさかお前からかけてくるとは思わなかったよ。


ゆうさん、生きててなにより。なんか大変だったってね。今日出勤だった真緒のフェイスブック見たんだ。浩子さん、亡くなったらしいね。

浩子さん、

どんな表情で逝っちゃったのかな?逝く瞬間見てみたかったな!



ってそんなこと言ったらまたゆうさんに怒られるから程ほどにしとくよ。

てゆーか今から会えない?



…!まさか向こうから呼び出してくるとは!


今、進を尾行中だし、恵と進のやりとりも気になる…だが、優先度はこっちだ。

いいよ。俺もお前に話したいことあるし。



私は、今から美依子と落ち会うことを承諾した。


いつもそうだ。そういうものだ。何かを得るためには何かを手放さなければならない。




私は、指定された場所に来ていた。




そこは開発を見送られた埋め立て地で、


所謂草っ原だ。

わざわざ瀬戸内海を狭くして、環境を汚染し、
何の為に埋め立てたのか、何が何やらわからない場所だ。県は何税金を無駄遣いしてるんだ?

そういえば
以前、サウンドマリーナが開催された場所でもある。僻地なので、日中なのに車はおろか人っ子一人いない。


年に一度あるかないかのイベントにしか使われない場所なのだ。



何故こんな場所に呼び出した。
私は、きな臭い匂いを感じていた。

ちなみに私の能力、電話越しには発揮出来ないようだ。

レスポンスに用いる媒体は、音波、電波とはまた違う媒体なのだろう。


…これは、美依子が何を企んでるのか、最悪のケースも考えてないといけない。


私は、右腕に目をやった。



車が一台やってきた。




美依子が降りてきた。


その後、

武装した男達がぞろぞろと車から降りてきた。

その数四人。





まあ、こんなことだろうと思った。
もっと大人数かと思っていた。



美依子、久しぶり。ちょっと痩せた?



うん、少し痩せたかな。
ゆうさんこそ痩せたね。てゆーか見違えたよ。本当にゆうさん?ってくらい。


あは、そんなに変わったかな?

うん、別人みたいだよ。ちょっと前まではいい人なんだけど、なんか頼りないって言うか、物足りないっていうか。

目が変わったね。なんか私の全てを見つめられてるような。


その目が気に入らないの。


私を見ないで。


そう言うと、男達が私を取り囲もうとした。


取り囲もうとしていたのがレスポンスにより私はわかっていた


全員武装している。鉄パイプが一人、木刀が一人、金属バットが二人。

一番油断してる奴、肝が据わってない奴…


こいつだ。

鉄パイプの男は完全に多人数の利によって油断してる。

私はおもむろにそいつとの距離をつめ、男が持っていた鉄パイプの根元を右手で掴んだ。

男は完全に油断していて全く反応出来なかった。

男が鉄パイプを離すまいと手に視線が行き力を込めた瞬間、

左手で男の首に指をかけた。



グシッ


私は容赦なく男の首をつぶした。


…!男は声も出せずにその場にうずくまった。


ついに私は人を壊した。復讐を誓った日から、いつかこうなる覚悟は出来ていた。

だが…

左手に首の肉を潰した感触が生々しく残っていた。


美依子はいきなり一人やられて動揺している。




連れないこと言うなよ。美依子。俺はお前のこと嫌いじゃないよ。

こないだ見せて貰った動画、最高に面白かった。扇風機に顔書いてる奴。またあーゆーの拾ってきたら見せてね。



ゆうさん、あんた強かったんだ。その落ち着きの根拠はその強さからきてるの?でもまだこっちは三人いるよ。もう不意打ちは通用しない。それでも勝てるの?



ああ。強かったっていうか、この数週間で強くなったんだよ。
ちなみに強さはただの副産物だ。美依子、お前には想像もつかない力を俺は持ってる。


殺して!こいつを!

美依子は声を荒げた。

男達は一斉に私に掴みかかろうとした。

もはや油断している者はいない。


私は取り囲まれないようにバックステップした後すぐ切り返し、私の左側に周り込もうとしてる木刀の奴に接近した。

男は反射的に木刀で殴りかかろうと振り上げたが、

そんな予備動作してる時点で素人だ。

もちろん私も素人のようなものだが。

私は振り上げた木刀を振り下ろせないように肘を掴み、


そのまま握りこんだ。


バギ

ぎゃあっ…!



男は腕を抱えて悶えた。





残った男二人は、それを見て私に近づくのを躊躇した。


一対複数の場合、取り囲まれないようにすることが重要だ。そのためには一人ともみ合いにならないようにすることが必須なのだ。

だから一撃で戦闘不能にしなければならない。躊躇は出来ない。

私が触る部分は指だろうが何だろうが全て急所だ。素手による先端破壊が可能なのだ。防御がそのまま攻撃に繋がる。私は身長やリーチはあまりないが、この握力とレスポンスを駆使することにより、武器を持った多人数相手でも同等以上の間合いで戦える。


私は目が良くなった。というか、使い方が分かった。動体視、周辺視…今まで使いこなせてなかった。

レスポンスによりどこを気をつけたらよいのか、何に備えたらよいのかがあらかじめわかる。


人対人の場合、
圧倒的不利なようにみえて、実はそうでもなかったりするものだ。


何故なら、人間は多人数かつ圧倒的有利な立場になると、必ず怠慢になる奴が出てくるからだ。


手を抜いたり油断したり。
そこを冷静に突けば、
動揺する奴が出てくる。
さらにそこをつき、包囲を完全に崩し、
状況を五分に持っていくことはそんなに難しいことではない。




私はケンカは素人同然だが、レスポンスプラスアルファにより相手を把握する能力は達人レベルに達していたのだ。



男二人は懐からナイフを取り出した。
と同時に殺意のレスが聞こえた


ざわ…

とうとう出たか。


殺意って奴。


殺意って、自分に向けられると、どんな気持ちになるのか。


そんなこと今まで考えたこともなかったが、

進に向けられた時、わかった。

全身の毛が逆立ち、
殺意を持った者の存在を問答無用で全力で消したくなる。



つまり、殺したくなる。
私は理性が薄らいで行くのがわかった。

殺意は殺意で塗り潰す。




私はアップライトに構え、左手で額の汗を拭う仕草をしながら左側の男に半歩近寄ると、手首のスナップを利かせながら腕を振り下ろした。


ヒュン


風を斬る音がした。


私の左手にはトンファーが握られていた。


私は、右腕にトンファーを隠し持っていたのだ。トンファーは通販で購入していた。トンファーは男のロマン。


男が悲鳴を上げた。おとこの左手の中指と薬指がどこかに飛んでいってなくなった。


私は間をおかずに最後の一人につめより、反応出来ない男の横っ腹にトンファーの柄の部分を叩きつけた。



男は…体をよじらせながら沈んでいった。



トンファーは様々な攻撃方法のある道具だ。

鎌のように相手の各部位に絡めて引き付けたり体勢くずしたり、

柄をスナップを利かせて回転させた時の打撃スピードは、常人にはまず反応出来ない。


棒で殴るダメージは線だが、トンファーの柄で殴るダメージは点だ。破壊力が違う。


トンファー超かっこいい。



戦いはいかに自分のリズムでやれるかだと思う。緩急を相手に読ませないように相手の緩急を崩すように。

今回は完全に私のリズムが場を支配した。



美依子、一人になっちゃったね。




…本当に強いね、ゆうさん。

私は見た目通り、ゆうさんにかなうような力は持ち合わせてないよ。

うちとの勝負はゆうさんの勝ちね。

ゆうさん、





逃げて。


なに?


うちは任務を失敗した責任を取らされてあの男にきっと殺されるよ。


清華が今からここに来る。

ゆうさんがいてもいなくてもどうせ私は殺される。
だからその前に逃げて。


清華?
誰だそいつ


しゃしゃしゃしゃ…

!この音は!


ギョロ


殺す!殺す!殺す!



美依子が突然豹変した。
目をひんむき歯を軋らせ私に掴みかかってきた。


な!この力…!女の力じゃない。


ググググ…ギシギシ!


美依子の骨がきしむ音がする。歯ぎしりし過ぎて歯が割れたのか、口から血が流れている。

私を掴む腕はビキビキに血管が浮き出し、脈打っているのがわかる。

腕の静脈が脈打つって、美依子の血流は今どうなってるんだ。耐えられる訳がない。


…操られているんだ。潜在能力を無理矢理引き出されて。


美依子!やめろ!体が持たないぞ!





ぞわっ!


私は鳥肌がたった。


なんだこの声は…


来る…ヤバい奴がここにやってくる。


まだ目視出来るところにはひと気はない。相当離れたところから…


私の射程圏を無視したような一方的なレス…

絶対普通じゃない。




ダメだ。今こいつに会ったらダメだ。
殺される。

私はレスを聞いただけで、その男のヤバさがわかった。


私が復讐を誓った相手は

こんなヤバい奴だったとは。


あの時は今ほど感受性は研ぎ澄まされてなかった。酒も入っていた。わからなかった。わかってたら…あるいは…


逃げなきゃ。今すぐ。


美依子、離せ。


ここにいたら二人とも殺されるぞ。


美依子!


私は、普段、相手に意識を飛ばす時、意識の球体のイメージを相手に飛ばしている。

そして意識を飛ばすのは質問するときだ。


今回、私は精神的にかなり追い詰められていて、

無意識のうちに、暗幕のような形にならないイメージを彼女に飛ばしていた。


ぷしゅー!!

何か冷たくてキラキラした気体のようなものが美依子から解き放たれたような気がした。



美依子は急に力が抜け、気を失った。




私は急いで美依子を車に乗せ、その場から離れた。


途中、一台の車がこっちに向かってきた。


ぞわぞわ…


あいつだ…あの男が乗っている。
ダメだ。こいつのレスはこれ以上聞きたくない、このままでは気がおかしくなりそうだ。



ギイ…ギイ…ギイ…

~!

私は、声が入ってこないよう、心を閉ざした。




あいつの乗った車は見えなくなった。



はあ、はあ…。


助かった。


なんなんだあいつは。今まで何万人とレスを聞いてきたが、あんな禍々しい声の奴は一人もいなかった。


すごく暗くて重くて、無機質で硬質で無造作。

まるで油がきれて不快な音を立てながらゆっくり回転してる分厚くて巨大なプロペラの前に立たされているような気分だった。

突如高速回転したら…私は、抗う術もなく飲み込まれてズタズタに引き裂かれてしまっただろう。








あの男がこんなヤバい奴だとあの時知っていたら、私は、復讐なんて諦めていただろう。関わりたくない。あんな声を発する人間とは。



でも、今の私は、あの時とは違う。
しかし…

美依子は助手席で気を失ったままだ。



…さっき

咄嗟に美依子に飛ばした意識…

今まで質問系の意識しか飛ばしたことがなかったが、あの時は咄嗟に


暴れる小動物を、毛布かなにかでくるんで大人しくさせたいイメージの意識を送ったのだ。

つまり
静かにしろ!

という力づくの命令に近かった。




そしたら美依子は気を失った。



私はこの能力を受信機のようなイメージで扱ってきた。だが、レスポンスとは返信という意味だ。返信があると言うことは送信もある。
私は送信もしていた。質問も送信の一つだ。

それに今思えば、質問系以外の意識を、私は無意識にこれまでにも飛ばしていたのかもしれない。


送信、

命令…暗示…


まさか、奴の能力はこれか?

奴と私は、近い能力を持っているのか?



ざわ…


だとしたら、私は…


続く