ランチが終わり、今はけだるいアイドルタイム





私は店内の窓際の席に座り、ぼーっと外を眺めている。






はあ…疲れた。昼間は飲食店従業員、夜は復讐の鬼…寝る暇もない。

こんな奴きっと日本に私一人だけだ。
日本一真面目な復讐鬼だぜ。


いっそ仕事辞めてしまおうか。


でも辞めたらなあ…復讐終わったら俺、どうするんだろってなるし。


私にはレスポンスがある。鍛えた体がある。肉体労働だろうが訪問販売だろうが、しんどい仕事でもこなせるだろう。

多分探偵とかもやれる。レスポンスを使えば不倫調査なんて一発で証拠現場掴めるだろう。むしろ証拠を掴むまでの経緯を説明出来ないのが難点か。

恐らくどんな仕事でもやれるだろう。


でも、私はこの店が好きだ。ここで働いてる仲間達も好きだ。この仕事が好きなんだ。


手放したくない。


以前は、毎日くたくたになるまで働かされ、ろくでもない仕事だと思っていたが、今はそうは思わない。自分のエネルギーを最大限に引き出してくれる最高の職場だ。

そう、エネルギーは使わないと。

ケチってもあまり意味はない。余ると澱む。澱むよりは空になった方がいい。

そして飲食って仕事は、レスポンスはあまり意味を持たない。客に対する誠意、料理に対する誠意。従業員に対する感謝が全てだ。客が何を考えてようが同じように誠意を示すし、従業員が何を考えてようが感謝して接する。

料理に対する誠意も同じことだ。




うん、やっぱこの仕事続けていきたい。私にはここは必要な場所だ。


そう思い、仕事に戻ろうとした時…


…あれ?通りに車が一台もない。ここは大通りに面していて日中は車が途切れることなく走っている。それが途切れたのだ。





まあ、赤信号だろ。


ほら、すぐ車が来た。


あら?


なんだ?車が四台、四車線キレイに揃って走ってる。


車が店の近くまで来た。


ざわ…



何か変だ…揃い方がキレイ過ぎる。

と思った瞬間、
四台の車は進路を左に変え、縁石を乗り越え、うちの店めがけて突っ込んで来た!



ちょ、嘘だろ!








ガッシャーン!



ガラス貼りの窓ガラスが、一瞬ですべて粉々に砕け散った。


粉々になった窓ガラスが

店内にまるで夕立のように降り注いだ。



ガチャ




車の中から四人の女が降りて来た。

一人の女が私を見つけると、


やっぱ無傷か。

と言った瞬間、私に銃を向けた。



私は余りの出来事にあっけにとられていた。
不意をつかれた。
完全に先手を打たれた。


レスポンスが敵意を自動的に感知してくれるので、不意打ちを食らうことはまずないと私は思っていた。考えてもなかった。

確かに、車で一気に距離を詰めればレスポンスが反応したところで逃げる暇はない。


だがまさかこんな派手な方法で来るとは…

敵が銃くらい武装してくるだろうことは想定していたが、生まれて初めて向けられた銃口は、想像以上に冷たく鋭い殺気を帯びていた。

私はかがみながら椅子やテーブルを盾にして奥へ逃げ込もうとした。


バン!

大きな炸裂音がした。


女は銃を私に放った。


その瞬間、肩に激痛が走った。

銃弾が肩をかすめていた。



危なかった。今の私の行動は最悪だった。敵を背にして、レスポンスも聞かずに。肩をかすめただけで済んだのは完全に運が良かっただけだ。


私は肩の痛みで冷静さを取り戻した。



敵は四人、いや…車にまだ何人か残ってる奴らがいる…
車から降りてきた女全員から放たれるこのレス、…こいつらみんな清華に操られている。恐らく一人一人が美依子が暴走した時のような力を持っているだろう。しかも周到に準備しているに違いない。

最悪な状況だな。

何が一番最悪かって…


きゃああ!


ああ!クソ!やっぱりか!
私は顔をしかめた。

女の一人が、うちの従業員に銃口を向けている。


その従業員は恵だった。


女が恵に銃口を向けたままゆっくり近づくと、後ろから恵の頭に銃を押し当てた。


憂!これどういう状況か、わかるよね?
奥に隠れている私に女が叫んだ。



私は両手を上げ、奥から出て来た。
完全に後手に回ってる…


いい子ね。


残りの三人は、野次馬が集まってこないように店の入口に一人、外に一人、従業員達を一カ所に集めて一人、見張っている。
全員銃を持ってる。


憂、さっき撃った時はわざと外したんだよ。殺意は感じなかったでしょ?あんたをここで殺すのは造作もないことなんだけど、あんたを捕まえて来いってのが清華の命令でね。

どうする?
大人しくついてくる?


…俺を捕まえてどうするつもりだ。


さあ?美依子の居場所を吐かせるつもりなら今ここで私達にも出来るし、清華の頭の中はよくわかんないよ。


どうする?大人しくついてくる?



どうするも何も…


私には恵を見殺しになんか出来るわけがない。


恵!恵ー!




進!


進がこっちに走ってくる!

進は車が突っ込んで来た時、丁度トイレに行っていた。トイレは入口から出てすぐのところにある。

進はトイレから出ると、見張りの女に店内には入らないように制された。しかし恵が人質に取られているのをみるや見張りを振り切って猛然とこっちに向かってきていた。



なにあいつ…
佐緒里!そいつこっちに近づけんな!
恵を人質に取っている女が言った。


見張りの女は進に目掛けて引き金を引いた。


バン!バン!バン!


いっ


銃弾は一発が左腕に

一発が左足に

もう一発が

左脇腹に命中した。



それでも進は止まらなかった。


恵!恵ー!





バン!バン!バン!


あっ



バン!バン!バン!




進は背中にさらに六発の銃弾を受けた。



め…ぐ…



進はその場に倒れた。



進…!く…!


私は何も出来なかった。
進が撃たれている間も、恵を人質に取っている女は一切スキを見せなかった。

しかも四人とも銃を持ってる…例え恵を解放出来たとしても人質はいくらでも代わりが効く状況…




何あいつ…キモいんだけど。
なんか邪魔が入ったけど、状況変わってないよ。大人しくついてくる?






私は彼女たちに捕らえられた。




進…。


続く





でかした美依子!



私は海廊町にやってきた。美依子は危険なので、レスポンスで尾行などないのを確認してネットカフェに置いてきた。


海廊町…海に面した小山のある、それ以外特に特徴のない町だ。

私は近くのパーキングに車を停めて、二階堂のすむマンションまで歩いて行くことにした。




マンションに向かって歩いてる時、さっき美依子と話していたことを思い出した。


そういえば、美依子は進を利用して、俺を毒殺しようとしたでしょ。あん時はマジで進にはムカついたよ。あれから進とは連絡とったの?

私が、そう聞くと、

いや、とってないよ。電話でも話したとおり、真緒のフェイスブック見てゆうさんの暗殺に失敗したの知ったの。三幸さん…あの薬渡して失敗するようじゃどうしようもないと思ってさ、

ことの経緯を話して清華に頼んで人手を用意して貰ったの。そして、ゆうさんを始末しようと思ったけど…失敗に終わったってわけ。
ああ…三幸さんにも悪いことしちゃったね…


そっかあ。美依子は奴らに見つかったらまずいね。進とももう連絡取らないほうがいいよ。進も話聞く限りだと、すでに始末されてる可能性があるね。

もしかしたら、恵も組織と関係してる?

恵?いや、そんな話は聞いてないよ。もし関係してたら、耳に入ってくるはずだし。

なんで恵?


実はね、進を尾行してたんだ。

そしたら恵から呼び出されたみたいで。落ち合う所までつけようと思った所で美依子から呼び出されたんだ。
何だったんだろうな…

あ~

あんね、恵、進のこと好きなんだよ。だから多分告るためじゃない?

マジで!

恵が進を!
そうかあ、あのままつけてたら野暮なことしてしまうところだったわけだ。

しかし、進はやっぱ許せない。美依子に乗せられたとはいえ、自分の意志で俺を殺そうとしたんだからな。しかも間違って浩子を殺した。あいつは始末されても何とも思わないよ。(いや…思わなくはない。私は殺意を向けられて平常心で進のことを考えられなくなっているだけだ。)



実は私…男をたぶらかして破滅させたのは
進だけじゃないの。進が三人目だった。


多分ね、清華の暗示の力って、伝播する。


操られてた時のうち、清華程じゃないけど、少し似たような力持ってた気がするの。

というと、?


心の中で清華の声が聞こえる時、自分でも全く根拠のない自信と使命感が芽生えて、ターゲットを決めたら必ず破滅するまで追いやれたの。…ゆうさんと悠希は例外だけど。


自信と使命感…


人間はこの二つがあれば、精神は充実し、己のポテンシャルを最大限に活かすことが出来るだろう。

自己暗示とかスポーツの世界なんかでもよく聞く話だ。暗示を受けた人間の精神状態ってのは、きっと迷いのないシンプルな状態なんだろう。流れる川のように細胞一つ一つの向きが直列に揃った状態。それが揺るぎなさ、強さに結びついてると思う。

迷いがあると、人は全力を出せない。細胞の向きがバラバラだと力は発揮出来ない。
それは自分の経験からもそう思う。


私のイメージでは、
心の気圧の高さは高い程、力が発揮出来ると思う。

心の気圧。

心圧の高さ。



清華は恐らく、この心圧が桁違いに高い。
普通の人間の心圧が紙風船からゴム風船レベルだとすると、清華は

ガスボンベレベル…もしくはそれ以上…

気体を昇華させ、液体、固体に自由に操れるくらいのレベルだ。


心圧を自在に操り
相手に高圧の心圧を送り込み昇華させ核を作ることで、相手を支配しているのではないか。


それを可能にしてるのは清華の器の強度だ。普通、そこまで心圧が高まると器が耐えられず破裂してしまうだろう。そうならないってことは、常識を越えた耐久力を持った器の持ち主だ。


もしそうだとしたら、暗示出来るのは相手の器次第な部分もあるだろう。

どれくらいの心圧に耐えられるかは、相手次第だろう。



そして心圧に耐えられる程、強力な力を手に入れることが出来るのではないか。


もし、私と清華の能力が裏と表の関係だとしたら…

私は相手の心圧を抜くことが出来るのではないか。


多分間違ってない。


だからさっき美依子の暗示を解くことが出来たのだろう。


私は自分の能力の全容が見えてきた。


美依子の暗示を解いた
あの暗幕のイメージ…



よく思い出してみると…あの繊維質…


あれは多分、私の精神的イメージの触角だ。


触角で美依子を包み込み、弁を手探り…いや、触角探りで見つけて開き、心圧を放出してしまったんだ。


私は触角人間だ。


その頃、急激に金がバラまかれ、その消費効果により経済は潤っていた。バブルの再来。


世間は浮かれていた。
一部の学者が警鐘を鳴らすも効果なし。
昔のバブル崩壊の反省いかせず。




そういえば私はストレスが溜まりにくい体質だ。

安全弁が付いているのか。

この安全弁(リミッター)を外したら…あるいは奴に近づけるのか。



心圧は高い方から低い方へ。その逆はない。


奴が誰かに暗示をかけた直後、私がかけられたコの心圧を奪う。


奴の心圧を…


私が
ねじ伏せ、打ち勝つことが出来れば、私は強力にパワーアップ出来る。


もしうち負けたら…逆に乗っ取られる


私は強いレスを感じるコを食らい続けた。

清華も気づいた。私の存在に。


その頃、世間はインフレの恐怖を体験していた。
消費を抑えられない市民はインフレに拍車をかけた。

金の価値が下がりまくり、連日円安更新。ついに一ドル20円を切った。



ポンプなら…奪う心圧の高低に関わらず心圧をどんどん吸い上げることが出来る。



7000人分の心圧。


私は耐えることが出来るのか。


無理だった。今のままじゃ勝てない。



たぎる激情により、熱い血により心圧が爆発した。


清華…お前の敗因は、熱くなれないことだ。誰かを思い、怒りをたぎらせることが出来ないことだ。


もし熱くなれたら…お前は太陽のように世界を照らす救世主になれたのに。



私は…心にぽっかり穴が空いていた。
いつも寂しかった。穴を埋めて欲しかった。埋めても埋めても足りない。
大きな穴が空いていた。

誰かに埋めて欲しかった。


清華…お前なら私の心の穴、埋めてくれるのか?


私は清華の心圧を取り込んだ。


私の器にひびが入った。


私はありったけの声で鳴いた。


その声は日本中の人々の心に届いた。

最・高!

これだ。私が求めていたもの。私は放出したかった。自分という存在を、すべて放出したかった。最高な最後だ。

人生の最後が人生で最高の瞬間だった。



私はその場に大の字で倒れた。悔いのかけらもない満足げな笑みを浮かべて。

私は死んだ。


心圧をすべて失った清華は、一気圧の無力な人間に戻った。


清華も、被害者の一人だった。



清華…気分はどうだい?


なんかすっきりしたよ。今ままで息苦しいかった。今は最高に爽やかな気分だ。

清華は嬉しそうに笑った。


温かな日溜まりの中で。

春がきた。












う…ん…


ここは…
車の中?

痛い!歯が痛い…体がだるい…



起きた?気分はどう?



そう言うと私は美依子にミネラルウォーターを差し出した。


つ…しみる…

…最悪…歯は痛いし、体がスッゴいだるいし。


だろうなあ、美依子、血管脈打たせてすごい馬鹿力出してたからな!

まあ、車の中もなんだし、俺の部屋行くか。

美依子を部屋にあげた。


適当に座って。

私の部屋はこざっぱりしていた。
というか、ものが極端に少ない。
いつ追われる身になるかわからない。すでに今日、四人をのしたことにより、そうなっているかもしれない。

もちろん、レスポンスと予め用意している逃走プランにより、何時でも逃げられる準備はできている。






なんか、最近の記憶が途切れ途切れなんだけど、あれ、全部夢じゃなかったよね。

美依子が言った。

そうだよ。全部現実だよ。美依子、お前、操られてたんだよ。清華?ってゆー奴に。

…そっかあ。操られてたのか…うん、そんな感じだった。たまにうちがもう一人いて勝手に体動かしてる感じだった。

今でもうち、操られてるのかな。


どうだろーね。


(おそらく、美依子の暗示は完全に解けている。)

清華の声はもうしない。なにより、さっきまで霧がかかったような美依子のレスは
いまでは11月の秋空のように澄んでいて晴れやかだ。

私が、清華の暗示を解いたのだろうか。




ってゆーか
ゆうさんって何者?
なんか不思議な力持ってない?




私は少し迷って


そしてタバコに火を付けた。


…蛾っているじゃん?


あいつらの触角、すごいと思うんだよ。俺達人間の感覚器官てさ、基本、穴じゃん。

穴の中に外部からの情報が入って来て、初めて情報処理するよね。つまり受動的器官なわけだ。しかも各器官につき司る感覚は基本一つずつ。


蛾の触角ってさ、耳であり舌であり鼻であり皮膚でもあるんだよ。4つの感覚を司るすごい器官。まあ、その分視力は笑っちまうくらいたいしたことないけどそれは置いといてさ(笑)

でも、俺が本当にすごいと思うのは、人間は感覚器官が穴なのに対して、蛾の触角は

むしろ体から飛び出しちゃってる

すごい獰猛だよね。情報にがっついてる。

感覚って基本受動的なものだけど、蛾の場合はかなり能動的。


知ろう、探ろうとしてる。


進化ってあるじゃん。定行進化。


蛾はさ、外界のこと、仲間や敵のこと、何万何千年とかけて気にしてきたんだ。そしたらあんな形になった。


俺もね、周りの人達の顔色をずっと伺って生きてきたんだ。

そしたらある日突然、人の心の声が聞こえるようになってね。あはは!

色々聞こえるんだよ。

ただのぼやきだったり嘘言ってたり、騙そうとしてたり、怒ってたり、楽しそうにしてたり、悲しそうにしてたり…苦しそうにしてたり…


人の心が聞こえるのって辛いね。
苦しんでる声聞くの特に辛い。まるで苦しみが直接伝わってくるみたいなんだ。。

それに世の中知らない方がいいことばかりだ。俺のことバカにしたり悪く思ってる人、思ったよりいるしさ、けっこうみんな平気で嘘つくもんなんだなって。もちろん俺も人のこと言えたもんでもないけどさ…



甘い幻想と現実の狭間で都合良く生きている方が楽だった。


相手の本心わかったら、こっちは本心言えなくなっちゃうことだらけだ。

それに今、
相手の持ってる力の強さ、やばさが闘う前からわかっちゃってさ、心がおれかけてるんだ。情けない…あれだけ復讐を誓ったのに…でも、それでも奴には一撃お見舞いしなければならない。(彼女の為にも…)


私は自分の歩む道があまりに険しいことを思い、涙ぐんだ。



私以外にこのこと知ってる人は?


いないよ。美依子にも言おうかどうか迷ったけど、言っちゃった。多分ずっと吐き出したかったんだろーね。

やっぱ人の心が読めるって気持ち悪いよね。ごめんね。




大丈夫!うちはゆうさんに嘘つかないし!心読まれても困ることないよ。つーかそれ、すごい能力じゃん!世界征服出来るかもよ!

世界征服は出来ねーよ(笑)はは…ホントに出来そうな奴知ってるけど…

美依子…ありがとう。



ところで
それなに?パソコン買ってきたの?


ああ、そうだよ。今までケータイでネットやってたけど、そろそろパソコンでしようと思って。


貸して見して。

そういうと、美依子はパソコンを立ち上げ、瞬く間にネット環境を整えた。


すごいスピードで指先が動いている。


美依子すごいね。


指は10本あるんだよ。せっかくあるんだから全部使わなきゃ損でしょ。
これ通信遅いよ!イライラする!


といいつつも、
美依子はあっという間に組織の概要を調べあげた。

表の会社名エステニア製薬
1985年設立

代表取締役 笹皿慶介
資本金8000万円
東証一部上場
株価8900円
この株価はここ二年で六倍に急上昇



全社員800名
準社員を入れると5000人


主な業務は新薬の開発、製造、薬品の販売
広島の薬局、歯科医院、病院の約五割に薬を卸している。


本社は広島にあり、ここ2年で新薬の開発に何度も成功し、急激に全国展開させているようだ。


表向きは一部上場の一流製薬会社だが、裏では当たり屋、美人局や結婚詐欺…ヤクザまがいのことを組織的にしてる噂があり、

なんで世間で騒がれてないのか謎…


自殺、自己破産の件数がここ一年で急増しているのはこいつらが原因かも。



相当ヤバい組織だよ。非合法の薬品ガンガン犯罪に使ってるし、ヤクザやマフィアなんかともつながってる。

美依子は清華と関係してたとはいえ、短時間でここまで調べ上げた。



清華は代表じゃないのか…まあ、形式的に別の奴をトップに置いて、裏で組織を支配しているのか、まだ入社して間もないのだろうか。


清華はね、三年前に入社したって。今は本社の開発部新薬課の課長補佐だよ。あ、こないだ課長に昇進したって言ってた。


美依子…お前はなんで清華と知り合ったの?




1ヶ月くらい前かな。あの日、近所を散歩してたんだ。

ガガガガって音がして、ふと見たら、日曜大工してるおじさんがいたの。

そのおじさん、すごい不器用でさ、

木製のテーブルに足を付けようとしてるんだけど、テーブルが硬くて、インパクトで回してもネジが入らないの。

ドゥルルる…ドゥルルる…ネジは入っていかず、すぐ倒れてしまう。



あーもう。先にドリルで穴空けないと何回やっても入んないよ…



そう思ってたら案の定、おじさん、ネジ滑らしてケガしてさ。



見てられなくなって声かけたの。
もちろんその模様を動画撮った後でね


んで、ドリルで穴空けてネジで固定してテーブルは完成したの。

礼をいわれて、おじさん最近引っ越してきて家具を新しく買って組み立ててたとか、おじさんの会社のこととかちょっと立ち話してたら、

割のいい仕事あるんだけどやってみない?って言われたの。

うちは別にお金困ってないし、なんか怪しいし、ことわったんだけど、そのおじさんすごいしつこくてさ、すごい引き止めてくるの。すごい気持ち悪かった。

そうこうしてたら車が一台止まって、中から出て来たのが清華だったの。
清華すごい男前でさ、見とれてたら

ふっと手を触って来て、


いい手をしてる。男を手玉に取れる、いい手をしてる。

って言って

なんか清華の暗くて重くて冷たい意識がうちの中に入ってきたような気がして、

それから
無性に男をみるとひどい目に合わせてやりたくなってね。


実は…こないだのアミューズメントビルの放火あったじゃん?あれ、事前に知ってたの。放火するからあのビルには近づくなって。知らされてた。
放火犯は清華に操られてて、あの時四階のカラオケ店でなくなった人達の何人かはエステニア製薬の幹部でね、清華の上司がいたみたい。ちなみにカラオケ店員も操られてたみたいよ。

私は火事を間近で見たい好奇心と、悠希をひどい目に合わせてやりたくて、…

最低だね、うち、…悠希に合わせる顔ないよね。



…なるほど
そのことはいいよ。美依子は操られてたんだ。先生も気にしてないと思うよ。てか気づいてない(笑)



さっき動画撮ったって言ったよね。ちょっと見せて。

いいけどあんまし面白くないよ。むしろイラッとする(笑)それに清華は映ってないよ。不器用なおっさんだけしか。


そのおっさん、そうとう有力な手がかりになる。


私はその動画を見た


…!こいつ!


二階堂じゃないか!




広島にいやがったのか!相変わらずムカつく顔してやがる!


美依子!ここはどこだ?


えっとね、海廊町。


見つけた!
まさかこっちから見つけられるとは!

私は奴を必要以上に挑発し、わざと私に恨みを持たせるように仕向けた。いつか報復にきたら返り討ちにして新しい情報を引き出そうと思っていたのだ。

まさかこっちから出向くことになるとは…


美依子!でかした!


続く