(1)Fランク大学出身にも潜在能力の高い人がいる

 

 入試難易度の低い大学を「Fランク大学」とバカにする風潮があります。

 

 しかし、以下のような場合など、「実は潜在能力が高い」Fランク大学学生(卒業生)がいるのです。

 

①地方には、地元の国公立大学に合格できなかった場合には、都会の私立大学に進学するのは家庭の経済状況が許さないため地元私立大学に進学するしかなかったが、選択できる大学が「Fランク大学」しかない場合があります。彼らの潜在能力は高いと考えられます。

 

➁小学校・中学校・高校と勉強嫌いでほとんど家庭で勉強してこなかったため、成績が悪かったため、「Fランク大学」に進学したが、その中には潜在能力が高い人も一定数いると考えられます。

 

 

(2)「Fランク大学」出身なのにIQ130超

 

 Aさんは30歳台の男性です。

 

 最近1年間に3回交通事故を起こし、「何か病気があるのでは?」と上司に疑われて、当院を受診しました。

 

 小学校時代から落ち着きがなく、じっとしているのが苦手でした。

 忘れ物、なくし物は多く、片付けは苦手で、宿題もほとんどやりませんでした。

 授業中は集中が持続せず、落書きをしたり、消しゴムを使って工作をしたりしていました。それでも成績は上1/3ぐらいだったようです。

 

 中学校でも家庭学習はテスト前のみでした。成績は中の上程度になりました。

 

 内申書が思わしくなかったこともあり、低めの偏差値の高校に進学しました。高校時代は部活動に熱中したこともあり、赤点ギリギリの成績で、その成績で入学できる大学に進学しました。当時の偏差値と今の偏差値は違うかもしれませんが、彼の進学した大学学部学科は河合塾の偏差値では「BF」でした。

 

 小学生の頃の症状はADHDに合致していますし、頻回の交通事故の原因としてADHDも疑われます。診断の一助とすべくWAIS検査を行いました。

 

 結果は、下位検査に最大16の差がありましたが、IQは130を超えていました。

 

 

(3)いくら高い潜在能力があっても、勉強しなければ学力は伸びない

 

 Aさんは家でほとんど勉強しない状態でも小学校の時は上1/3ぐらいの成績でした。

 しかし、中学校、高校と学年が上がるたびに、同年齢の中の相対的な成績は低下していきました。

 

 130を超えたIQがあったのに、入学した大学は「Fランク大学」だったのです。

 

 いくら潜在的に高い能力があっても、勉強しなければ学力は伸びないのです。

 

 

(4)入試難易度の低い大学にも、潜在能力が高い学生はいる

 

 一流大学の学生や卒業生の中でもIQが130を超えている学生は多数というわけではないと思います。

 

 「入試難易度の低い大学にも、潜在能力が高い学生はいる」ことを多くの人に知ってもらいたいと思います。

 

 採用担当の人には、以下のようなことを伝えたいです。

 

「偏差値の高い大学には優秀な人が多いが、そうでない人もいる」

「偏差値の低い大学には能力的にやや低い人や小中高校生時代にあまり勉強熱心ではなかった人が多いが、そうでない人もいる」

「大学名だけで判断するのではなく、丁寧に優秀な人材を採るような努力をしてほしい」

 

 

(5)Aさんがもし小学生時代にADHDに気づかれていたら

 

 Aさんはおそらく不注意症状が中心のADHDだと思われます。

 

 知的能力が高い不注意症状が中心のADHDは日常生活で困ることが多くないので、学校で指摘されることは多くないと思います。

 

 Aさんも、忘れ物・なくし物や宿題の未提出はありましたが、成績は悪くはなく、小中高校時代に「困った経験」はあまりなかったようです。

 

 しかし、誰かがAさんの特性に気づいていたら、今とは違った人生もあったのかと思います。

 

 「自分が頭がいいことに気づかない高IQのADHD」の人は一定数いると思います。

 

 本人にとっても、社会にとってももったいないことではないでしょうか?