(1)発達障害「グレーゾーン」

 

発達障害「グレーゾーン」

岡田尊司著

ソフトバンク新書 定価900円+消費税

 

 自分や家族、周囲の人々が「発達障害かも」と思ったら、読んでいただきたい本です。

 

 

(2)「グレーゾーン」という言葉は使う人によって意味が異なる

 

 上記の本の中では「グレーゾーン」という言葉を以下のように説明していました。

 

「グレーゾーンという用語は幼児期のように、まだ症状がはっきりせず、診断に至らないという場合に使われる場合と、青年・成人期にありがちなのだが、症状としては明確になってきているものの、診断基準をすべて満たすには至らないために使われる場合があり、両者では、意味合いが違ってくる」

 

 発達障害はスペクトラム(連続体)の性質を持っています。


 また、現在は操作的診断基準といって、「診断基準に挙げられた症状のうち〇個以上症状があったら△症と診断します」という形式をとります。「症状があり」と判断するか、「症状がない」と判断するかは情報提供者(本人・家族・学校の先生など)がどのような情報を提供するのかに大きく左右されますし、判断する医師の知識・経験・主観にも多少左右されてしまいます。

 

 私も「グレーゾーン」という言葉は使う人によって意味が異なっていると感じています。

 

①診断基準を満たすまでには至らないが、そのような特性を持っている場合

➁診断基準を満たしているのか、満たしていないのかはっきりわからない場合

③診断基準を満たしていると医師は考えているのだが、家族が受け入れそうもないために、診療を継続するために敢えて「グレーゾーン」という言葉を用いている場合

④医師によっては他の医師が診断基準を満たしていると考えるような場合にも、「グレーゾーン」と判断する場合もあるかもしれません。

 

 言葉の意味としては、①の「診断基準を満たすまでには至らないが、そのような特性を持っている場合」を「グレーゾーン」と呼ぶのが正しい使用法だと私は思います。

 

 幼児期などのように、「診断基準を満たしているのか、満たしていないのかはっきりわからない場合」には、「現段階では〇〇症の可能性が考えられますが、診断基準を満たしているのか、満たしていないのかはっきりとはわかりません」と説明すべきだと私は思います。「グレーゾーン」という言葉を使うと、「うちの子は発達障害ではないんだ」と安心してしまい、した方がよい対応を家族が取らなくなる危険性があると思えるからです。

 

 更に、家族が「障害」という言葉や「病名がつくことに否定的な場合」には、診断レベルのケースに対しても「グレーゾーン」と説明することもあるかもしれません。

 

 また、情報提供者の情報にって診断は大きく左右されますし、どこからが「診断レベル」で、どこからが「グレーゾーン」なのかは医師それぞれで微妙に異なります。多くの医師なら「診断レベル」とするケースを別の医師が「グレーゾーン」と考える場合もあるかもしれません。

 

 自分が、あるいは家族が「グレーゾーン」と説明されたのなら、上記のどの意味なのかを考えておいた方がよいと思います。