(1)理系大学院の内部進学と外部進学

 

理系学部の人は就職先がよくなることも多いので、大学院に進学する人も多いです。その際に自分の出身大学に進学する内部進学と他大学に進学する外部進学があります。

 

 それぞれのメリット・デメリットを考えていきたいと思います。

 

(2)内部進学のメリット

 

①慣れ親しんだ環境のため新たな環境への適応のストレスが少ない

➁大学院入試が外部進学の人に比べて有利

③学部時代に所属していた研究室なら研究が1年早くスタートできる

④内部進学者に研究上の優遇をする可能性がある

 

①慣れ親しんだ環境のため新たな環境への適応のストレスが少ない

 

 自分の出身大学の大学院に進学した場合は周囲に以前からの知り合いが多数います。自分が学部時代に所属した研究室に院進する場合は研究室自体も変わりません。新たに新しい関係を作ることが苦手なコミュ障の人にとってはこれは大きなメリットだと思います。

 

➁大学院入試が外部進学の人に比べて有利

 

 基本的に院試の問題は教授が作成します。学部時代に受けた定期試験と院試の問題が似ていることもありますし、試験対策が立てやすいことは明らかです。

 

 さらに場合によっては院試の一部が免除される場合もあります(面接のみとなる場合もあります)。

 

 大学院入試は内部進学者が圧倒的に有利だと思います。

 

③学部時代に所属していた研究室なら研究が1年早くスタートできる

 

 通常大学院の修士課程では2年間で研究成果を出します。これが内部進学で学部時代と同じ研究室に進む場合は学部時代の研究を発展させる内容で研究を行うことも可能です。研究期間を3年間として計画を立てることも可能なのです。

 

④内部進学者に研究上の優遇をする可能性がある

 

 一部の大学、一部の研究室では自大学出身者を優遇する場合があります。あからさまにこのようなことをすると、外部出身者が集まらなくなってしまうので、明確な差別は行わない研究室が多いのですが、そうでない研究室もあるのが現実です。

 

 

(3)外部進学のメリット

 

①より評価の高い大学の大学院に比較的容易に進学できる

➁自分の興味にあった研究室への進学が可能

③研究環境のよい研究室に進学が可能

④自大学への内部進学よりも就職がよいことが多い

 

①より評価の高い大学の大学院に比較的容易に進学できる

 

 自大学よりも世間一般の評価の高い大学へ大学入試の時よりも容易に大学院への進学が可能です。東京大学への学部レベルの進学よりも大学院レベルの進学の方がより容易だと思われます。

 

➁自分の興味にあった研究室への進学が可能

 

 自分の興味にあった研究室が自大学にない場合、外部進学によって自分の興味にあった研究室への進学が可能になります。

 

③研究環境のよい研究室に進学が可能

 

 大学の研究設備や研究費は大学毎、研究室毎に大きく異なります。また、指導教官の研究力、指導力も研究室毎に大きく異なります。外部進学により研究環境のよい研究室への進学が可能になります。

 

④自大学への内部進学よりも就職がよいことが多い

 

 地方国公立やMARCHから旧帝大の大学院への外部進学の場合は就職状況がよくなることがほとんどだと思います。ただし、後述のデメリットもありますから、それらとの相対的な比較にはなります。

 

 

(4)内部進学のデメリット

 

 外部進学のメリットがそのまま内部進学のデメリットになると思います。

 

①自分の出身大学の評価が大学院の評価にもなる

➁自分の興味にあった研究室が自大学にない場合は次善の研究室を選択することになる

③研究環境があまりよくない研究室で研究することになる

④就職状況は自大学の評価による

 

(5)外部進学のデメリット

 

①大学院入試の十分な準備が必要

➁大学院入試に失敗する場合がある

③自分がよいと思った研究室が期待外れのリスクがある

④新たな人間関係を作らなければならない

⑤内部進学者に比べ差別される可能性がある

 

①大学院入試の十分な準備が必要

 

 内部進学の場合は相対的に有利な状況で院試に臨むことができます。外部進学者は不利な条件で院試に臨まなければなりません。また、自大学よりも評価の高い大学の大学院への進学を考えている場合は、競争相手が自分よりも大学入学時点での高学力者なのです。これらの人々との競争で院試を突破するには十分な準備が必要だと思われます。

 

➁大学院入試に失敗する場合がある

 

 目指す大学院入試に失敗するリスクもあります。その頃には就活もほとんど終わってしまっていますので、それから就職先や他の大学院を探すか、1年留年して次年度の大学院進学あるいは就職を目指すことになります。特に人気の高い研究室を目指すとリスクは高まります。

 

③自分がよいと思った研究室が期待外れのリスクがある

 

 学外から集められる情報には限界があります。自分がよいと思って入った研究室に想定内のマイナス要因があることがあります。例えば研究室の環境が予想以上のブラックな環境のこともあります(一流の研究室はブラックな環境のことが多いと思いますが)。内部進学の場合は学内の情報を集めれば想定内のマイナスは避けられることが多いので、これらは外部進学の大きなデメリットだと思います。

 

④新たな人間関係を作らなければならない

 

 外部進学の場合は修士課程に入学し、周りにほとんど知り合いのいないアウェーの状況で新たな人間関係を作り上げなければなりません。相応のコミュニケーション能力が必要だと思われます。コミュ障にとってはつらい環境だと思います。

 

⑤内部進学者に比べ差別される可能性がある

 

 研究室によっては内部進学者を優遇し、外部進学者を差別する場合もあります。実際には扱いに大きな差がなくても疑心暗鬼になってしまう場合もあるかと思います。特に内部進学者は1年早く研究室生活を始めているので、疎外感を感じてしまうことは多いと思います。

 

(6)青年よ、大志を抱け!

 

 自分のキャラクターと能力と自大学の研究室と他大学の研究室のメリットとデメリットを考えて自分にあった道を選んでください。

 

 特に大学受験で思うような結果を出せなかった人は、人して1年を受験勉強に費やし、不確かな結果にかけるよりも、入学した大学で必死になって勉強し、大学院入試でのリベンジを果たすのも選択肢だと思います。

 

 学歴ロンダリングと揶揄する人もいますが、そんなことは気にしなければいいと思います。浪人するよりも1年早く研究生活を始められるのは大きなメリットだと思います。

 

 外部進学はリスクも高いけれどリターンも大きいと思います。

 

「青年よ、大志を抱け!」と私は思います。