(1)3年生の7月から勉強に本腰を入れ始めたADHDのA君
A君はADHDの男子です。結構能力は高かったです。
A君は小学校の頃から薬物療法を行っていました。
問題行動は薬物療法開始後速やかになくなったのですが、集中が続かない状態は続き、薬をやめると学習のパフォーマンスが落ちてしまうので内服を続けていました。
A君は、「あなたは勉強すれば伸びるのに」と親にも、塾にも、主治医にも言われ続けていましたが、彼の「やる気スイッチ」が入ることはありませんでした。
やっと受験勉強に真剣に取り組み始めたのが、高校3年生の夏休み前の時期でした。その時期からは別人のごとく、受験勉強に取り組み始めましたが、「時すでに遅し」と私には感じられていました。
私はA君に、北の国公立大(会津大・函館公立未来大・室蘭工業大・北見工業大)に進学し、北の地で捲土重来を期すことを勧めました。
(2)共通テストで8割を超える得点
そんなA君が共通テスト後に初めて私たちのクリニックを受診しました。
「共通テストはどうでした?」
「〇〇〇点でした」
「えーっ!?」
いくら何でも真剣に受験勉強に力を入れ始めたのが、高3の7月ですから、その期間では到底間に合わないだろう、と私は思っていました。
しかし、彼の得点は8割を超えており、私の予想を大幅に上回っていました。
彼のかねてからの志望校にはA判定が出ていました。
もし、彼が1年生の頃から真剣に勉強に取り組んでいたら、どこまで学力を伸ばすことが可能だったのでしょうか?
「受験勉強は1年半~2年半は本腰を入れてやらなければならないもの」だと私は考えていました。しかし、そうではない例外もあるようです。
ただし、みんながA君のように短期間の受験勉強で学力を伸ばせるわけではないでしょう。可能なら1年生から、遅くても2年生のうちに受験勉強に取り組めるとよいと思います。