(1)発達障害は以前よりも見つかるようになった

 

小児科医P先生が「発達障害が増えた理由」について記事を書いており、その中でP先生は、「見つかるようになったから」という説を唱えています。

【わかる人】30年前の発達障害【教えて】|小児科医Pの発達外来診察室 (hattatsu-kids.com)

 

①発達障害という概念が、広く浸透した。

②あの子そうかも? と思う機会が増えた。

③「そういう目」で見ると、受診につながる。

④受診が増えると、診断が増える。

 

発達障害が増えた理由① | ADHDの小児科医が伝えたいこと (ameblo.jp)

 

 

(2)発達障害の症状を示す子どもが増えた

 

①授業中に離席する子ども

②授業中に隣の子としゃべり、先生が注意してもやめない

③授業中に自分の好きなことやっていて、先生が注意してもやめない

④他児への暴力を、先生の見ている前で行う

 

 太平洋戦争が終わるまで(戦前)は、①②③④の症状を示す子どもはほとんどいなかったと思います。

 

 授業中にそのような行動があったら、先生は鉄拳制裁(体罰)によりこれらの行動を制止したでしょうし、目に余る行動の場合には家に連絡されて、父親に、「先生の言うことをちゃんと聞け」と激しい叱責(暴力を含む)を受けなければなりませんでした。ですから、子どもたちは先生の前では指示に従っていました。

 

 教室のルールを守るためやしつけのためには暴力が許容されていました。

 子どもたちは有無を言わさず従わされていました。

 

 敗戦により、日本にアメリカ風の考えが入ってきて、学校や家庭において「力で子どもたちに言うことを聞かせる」姿勢は少しずつ弱まっていきました。まだ、1960年代、70年代には、学校においては「きまりの順守」、家庭においては「しつけは親の責任」などの考えが色濃く残っていたと思いますが、1980年代、90年代はだいぶ弱まったと思います。

 

 「力で子どもに言うことを聞かせる」姿勢が弱まっていくとともに、子どもたちは先生や親の言うことをだんだん聞かなくなっていったのだと思います。

 

 1970年代の後半から1980年代にかけては、中学生たちが暴れる「校内暴力」現象が日本の中学校の至る所に見られました。子どもたちの気持ちによりそい、締め付けを弱めたことは校内暴力の鎮静化に一役買ったと思います。

 

 しかし、やがて1990年代の後半には「学級崩壊」と呼ばれる、子どもたちが先生の言うことを聞かない状況が報道されるようになりました。

 

 「学級崩壊」は先生の指導力の問題だけではなく、家庭のしつけの問題もあったと思います。

 

 発達障害の特性を持った子どもたち(一部はそうでない子もいるかもしれません)が、家庭のしつけのゆるさと学校現場の強制力排除により、先生の言うことを聞かなくなった現象が「学級崩壊」なのだと思うのです。

 

 学校現場で困る子どもたちの行動(=発達障害が疑われる行動)は年々増えていると思います。これらの行動は

①先生の指導力の強弱

②親のしつけの強弱

③子どもの発達特性

によって生じると思います。

 

①と②の力がだんだん弱まったので、③の発達特性に起因すると思われる行動が増えたように見えるのだと思います。

 

 

(3)1990年代の後半までは発達障害は実際に増えているのでは

 

 戦前の子どもたちの行動を今の発達障害の診断基準で判断しても、発達障害と診断される子どもは多くなかったと思います。

 

1970年代の学校には授業中に離席する子どもは稀だったと思います。

1980年代には1970年代より増えたと思います。

1990年代にだいぶ増えて、学級崩壊と称されるようになったのだと思います。

 

 時代の進展とともに、1990年代の後半までは発達障害と診断される子どもは増えていっているのだと思います。

 

 

(4)発達障害は遺伝だけではなく、環境の影響も大きい

 

 エピジェネティックな変化が起こっていないと考えれば、戦前にも発達障害の遺伝子を持っている人はいまと同じぐらいの割合でいたと思います。

 

 しかし、戦前の環境はそのような遺伝子を持っている子どもたちや人でも、行動を抑制せざるをえない環境だったのだと思います。

 

「言うことを聞かなければ殴ってでも言うことを聞かせてください」と先生に頼む親御さんがいます。しかし、先生がそのような行動を取ったら、他の親経由で問題になり、懲戒処分を受けてしまうでしょう。

 

 親が厳しいしつけをしたら、児童相談所に通報されてしまう時代です。

 

 今の時代に、「一部の先生だけ」「一部の親だけ」、厳しい対応をすることは不可能なのです。

 

 「本人の納得いくように、やさしく、何回でも話す」ことが良しとされるのですが、発達に特性のある子に納得させるのは大変です。

 

 ただし、発達障害の遺伝子を持っている子どもにとって、問題行動が出現し、将来多少困ることになったとしても、頭ごなしに叱られたり、暴力を含んだ対応をされるよりはましなのだと私は思います。