(1)よくある質問

 

「うちの子は病気なんですか?」

「うちの子は障害なんですか?」

「うちの子は薬を飲まなけれならないほど悪いのですか?」

 

 どこからが病気で、どこからが障害で、どこから薬を飲んだ方がいいのか。

 

 考えていきたいと思います。

 

 

(2)発達障害は「スペクトラム」の性質を持っている

 

 「スペクトラム」とは連続体を意味する言葉です。発達障害の特性を持っている人は正常から異常まで連続的に分布しているので、どこからが正常でどこからが異常なのか決めにくい側面があります。

 

 さらに日本でも「心の病気」によく使われる「アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5)」では、「〇個の症状のうち□個以上の症状があれば△病である」というような形式をとります。症状を「あり」ととるか、「なし」ととるか。そして症状の数によって病気であるかどうかが判断されます。このため同じ人でも、情報提供者の情報の提供の仕方により、そして、その情報を判断する医師の判断基準によって診断が左右される場合があります。「病気である」か「病気でない」かの境界は明瞭ではないのです。

 

 

(3)困っている?困っていない?

 

 更に発達障害の場合、その症状で「困っている」場合のみ、「病気である」と診断されます。

 

 症状があっても、「困っていない」ならば診断基準上は「病気ではない」とされています。

 

 「困っている」か「困っていない」かは、判断する人によって変わりうるものだと思います。

 「今は困っていないけれど、将来困る可能性がある」場合にどうするかが問題になります。

 私はこのような場合も「困っている」に入れて、「病気である」と診断するのも許容されるのでは、と思ってます。

 

 自閉スペクトラム症の特性があると、小学生時代にはあまり困っていないように見えても、中学生時代や社会人になって困る例が結構多いです。このようなリスクを最小化するためには、小学校時代に積極的に診断し、通級指導教室や放課後等デイサービスで必要な支援を受けた方がよいと思います。このためには「自閉スペクトラム症である」あるいは「広汎性発達障害である」と診断する必要があるのです。

 

 

(4)境界はあいまい、本人にとってプラスな方を選ぶ

 

 上記のように、「病気である」と「病気でない」の境界はあいまいです。

 

 私はどちらでも判断可能な場合は、本人にとってプラスの方を選べばいいと思っています。

 

 私は「発達障害である」と診断した方が良い場合が多いと思っているので、私たちのクリニックを受診する人は、「発達障害です」と言われる場合が多いと思います。

 

 診断の境目は医療機関によって多少異なる部分があるのではないでしょうか?