(1)特別扶養児童手当とは

 

 特別扶養児童手当は、「大変困っているようですから手助けのためにお金を補助します」という制度です。市町村によってもらえる基準が異なります。通常はだいぶお子さんの状態が重くないともらえません。

 

(2)静岡市の基準

 

私のすんでいる静岡市の概要は以下の通りです。

特別児童扶養手当

 精神または身体に障害を有する20歳未満の児童の生活の安定を図るため、障害児を家庭で療育している保護者に支給します。
 
(1)支給対象
  1級
  • 身体障害者手帳1・2級または3級の一部の障害を有するもの
  • 知的障害でIQがおおむね35以下のもの
  • 精神障害であって上記と同等のもの
  • 合併障害があって上記と同等のもの
  2級
  • 身体障害者手帳3級の一部と4級の一部の障害を有するもの
  • 知的障害でIQがおおむね50以下のもの
  • 精神障害であって上記と同等のもの
  • 合併障害があって上記と同等のもの
(2)手当月額
1級 51,450円(平成29年4月から)
2級 34,270円(平成29年4月から)
(3)支給月
毎年4、8、11月の11日に4ヶ月分を支給
※支給日が土・日・祝日の場合は金融機関の直前の営業日の振込み
(4)支給制限等
施設に入所しているとき(資格喪失)※母子入所は資格喪失とはなりません。
本人、または配偶者、扶養義務者の所得が一定以上あるとき(支給停止)
 
 

(3)市町村によって異なる基準

 

 静岡市は特別扶養児童手当の基準が非常に厳しくなっています。

 

 上記のように知的障害ではIQがおおむね50以下でないと取れないことになっています。ただし、発達障害の合併があったら、IQが50以上でも通ることはあります。

 

 静岡市では、他の症状次第の面もありますが、IQ60台の後半ではまず無理。60代前半は微妙、60前後以下で何とかもらえる、という程度です。

 

 身体障害者手帳1・2級あるいは療育手帳のAがあれば通ると思いますが、療育手帳のBでは難しいことが多いと思ってください。

 

 しかし、中には、IQが70台、場合によっては80台で通る県内の他市町もあります。

 

(4)医師は何とかしてあげたいとは思うのですが・・・

 

 発達に特性があって、だいぶ苦労されているご両親が、特別扶養児童手当を希望されたらなるべく受けられるようにしてあげたいと思います。

 

 「食事は手助けすることなく自分ひとりで食べられますか?時に手伝いますか?いつも手伝いますか?」

 「顔を洗うことは手助けすることなく自分ひとりで洗えますか?時に手伝いますか?いつも手伝いますか?」

 「服を着たり脱いだりは手助けすることなく自分ひとりで着たり脱いだりできますか?時に手伝いますか?いつも手伝いますか?」

 

 など質問した時に、「自分ひとりで出来ます」「自分ひとりで出来ます」「自分ひとりで出来ます」と答えるお母さんがいます。自分の子どもはいろいろなことができると主張したいのでしょうが、「それでは特別扶養児童手当は通らない可能性が高まりますよ」と心の中で思うのです。(口に出すと答えを誘導することになり、不正の可能性があると思っているので口に出しません)

 

 どちらとも取れるような返答の場合は、なるべく重い症状として記載することが多いのですが、それはなるべく手当てを取れるようにする、医師の思いやりだと思ってください。

 

(5)申請が通りそうもない場合には窓口でそのように保護者に伝えてください

 

 特別扶養児童手当の書類は書くのに20~30分かかります。費用も3000円ほどかかります。

 IQが75前後以上の通常なら通りそうもない患者さんの中でも、特別扶養児童手当の診断書を希望されてくる人がいます。市役所の担当窓口に相談したら、「とりあえず、診断書を添えて申請してください」と言われたとのことです。

 

 最終的に、静岡市の委嘱を受けた医師が判定するのですが、担当者はどれぐらいの状態だと、申請しても通らないかがわかっているはずです。申請してもほとんど通りそうもない状態の場合には、窓口で、「お子さんの状態では申請しても通らない可能性が高いです」と言って欲しいと思います。

 

 書類を書く時間が2人分あれば、初診の患者さんを1人は診ることができます。今初診待ちの患者さんがどれぐらいいると思っているのでしょうか?

 

 まあ、これは、「書類を書くことが非常に苦痛に感じるADHD小児科医N」の特性からくる私怨が混じっているとは思いますが・・・。