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中学の野球部に入ってから、
僕はすぐに頭角を現した。
毎日の練習で
誰よりもバットを振り、
走り込みも欠かさなかった。
その成果もあり、
練習試合では結果を残した。
打席に立てば、
ヒットを量産することができた。
時には鋭い打球で
3ベースヒットを打ち、
チームの流れを変えることもあった。
監督からの信頼も厚く、
気づけば僕は
先輩を差し置いて
レギュラーに抜擢されていた。
本来なら誇らしいこと。
でもその裏には
複雑な感情がつきまとった。
先輩たちの視線。
羨望ではなく、
嫉妬と苛立ちが混ざったような目。
「なんであいつが」
そんな空気が
練習中にも漂っていた。
先輩のプライドを
傷つけてしまったことは
肌で感じていた。
でも、試合では
結果を出し続けるしかなかった。
打席に立つたびに、
「打たなきゃ居場所がない」
そんなプレッシャーを背負っていた。
ヒットを打てばチームは喜ぶ。
でもベンチの一部からは
冷たい視線が刺さる。
3ベースを打ったときでさえ、
素直に喜べなかった。
「また先輩を追い詰めてしまった」
そんな後ろめたさが
胸を締めつけた。
野球が楽しいはずなのに、
いつしか僕にとっては
居場所を守るための戦いに
変わっていた。
努力が報われて
レギュラーを掴んだのに、
素直に喜べない自分。
ただ、打席に立てば
バットを振るしかなかった。
ヒットを打った瞬間、
心の奥では確かに嬉しかった。
でもその喜びを
表に出すことはできなかった。
周りの空気を壊さないように、
心からの笑顔を押し殺した。
「実力があるから出ている」
それは確かに事実だった。
でも同時に、
僕は先輩の居場所を奪った。
そのことに
ずっと罪悪感を抱えていた。
本当は胸を張って
レギュラーだと
言いたかった。
けれど僕は、
嫉妬と敵意の視線を
常に背中に感じながら、
試合に立ち続けていた。
中学時代の野球は、
誇りであり、同時に苦しみだった。
結果を出すことが怖い。
でも出さなければもっと怖い。
そんな矛盾を抱えながら、
僕はバットを握り続けていた。
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