《妄想物語》A HAPPY NEW YEAR ⑫ | みんなちがってみんないい

みんなちがってみんないい

田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

なぜ、俺達の名前を?
不思議に思っていると、男性が話しかけてきた。


『はじめまして。よう来らっしゃったね。私達は、今日、創一さん、凌太さんの、フォトウェディングを、担当させていただく、藤本です。』

『フォトウェディング?』

『今、結婚式を挙げない人が多くて、その代わりに流行っているのが、フォトウェディングです。二人が愛を誓った証にタキシードや紋付き羽織袴で、まるで結婚式をしたかのように教会で写真を撮ったり、二人の思い出の場所、あるいはロケーションの素晴らしい場所で、二人の仲のいい姿を写真に撮ります。』


急な事で戸惑ったが、
俺より戸惑っているのは、凌太だった。

明らかに騙されたような顔をしている。

すると、戸惑っている俺達を見て、
横にいた奥さんが、俺達に話しかけた。


『もしかして、お二人とも了解せずに、誰かが話を進めたのかしら?』

『実は…そうなんです。』

『あらら…、そうなの……。どうしようかしら…。』


お互いに困った顔をする。

せめて、凌太には話しとけばよかったのに…。
でも、言ったら、絶対断りそうだよな。
それもわかっての
天空不動産みんなの計画なんだろうな。


結婚式も全力で断った凌太……。


俺は、撮ってもいいけど、
凌太が嫌な事は、やりたくない。

でも……、元日から俺達の為に
用意してもらってるのに……
さすがに申し訳ない。


どうしたらいいんだ…。


『なぁ、凌太。どうしようか?』

『あ……、はい。大丈夫です。』


凌太もご夫婦の事を考えて、
断れなかったようだ。
でも、気が進まないのは、見てとれる。


俺達は、近くのフォトスタジオに連れていかれ、
まず、俺は旦那さんに、凌太は奥さんに
着付けを手伝ってもらいながら
白のタキシードに着替えた。

凌太の気持ちを思いやると、
何だか俺も気が進まなくなったが、
白のタキシードに着替えた凌太が、
恥ずかしそうにしながら、
俺の前に現れた時、
それは、一瞬で吹き飛んだ。


『あ……、どうです……』


あまりにも、純白のタキシード姿が
透明で、ただただ綺麗で……。
素敵で…俺は、
凌太が言い終わらないうちに
凌太に抱きついた。


『凌太ぁ!!!すげぇ、綺麗!』

『はぁ?何っ?』

『うわぁ!!!もう俺、凌太のタキシード姿見れただけで、満足!』

『何、人前で抱きついてるんですか!』

『いいじゃん!俺、幸せ。』

『……春田さん。』


写真を撮られる事すら、
一瞬忘れてしまっていた俺は、
奥さんの声で我に帰った。


『まぁ…とても幸せそうで、いい表情ね。』

『ほんとだな。いい画だ。撮っている私すら、幸せな気分になる。』


俺達が、ご夫婦を見ると、
カメラはすでに
俺達の方に向けられていて、
何枚か撮られているようだった。


『春田さん!もう!!』

『あ、ごめん…。』


凌太は、我に帰って
恥ずかしそうに
俺の後ろに隠れて、カメラから逃れた。


『凌太?』

『やっぱり、恥ずかしくて無理。』

『何でだよぉ。凌太。』

『……。』


ほんとに素敵なのに……。


完全に凌太は、萎縮してしまった。

でも、初めてかもな。
こんな凌太を見るのも。

いつもみたいに、
可愛い顔して悪態ついて噛みつく、
狂犬になったチワワでもなくなっている。

ただただ、弱々しい
元々のチワワになったようだ。
こんな凌太もいるんだな。
でも新しい顔が見れるって、なんかうれしいな。
凌太の事、一つ知れたのかな。

大切な人の事は、どんな些細な事でも
知りたくなるんだな。
こんな自分に出会うのも、初めてだ。


俺は、小さな声で言った。


『凌太…。無理しなくてもいいから。』

『え?……でも…。』

『大丈夫。こういうの、無理してやる事じゃないし。二人が望んでやる事だろ。』


そんな俺達を見て、ご夫婦も、


『素敵な一枚が撮れたから、十分よね。』

『そうだな。』


と呟いた。


その時だった。


『じぃじ!ばぁば!』

『あら!みゆ!』


みゆ?

声の方に目を向けた。


『え?みゆちゃん???』

『あれぇ~、そういちくんだぁ~。どうしたのぉ~?』


そこにいたのは、なんと、
福岡空港で迷子になってた、みゆちゃんだった。


『あらっ?みゆ、お兄ちゃん達、知ってるの?』

『うん!きのう、まいごになったとき、たすけてくれたの。』

『そうだったの!それは…、ご迷惑おかけしました。』

『いえいえ!…じゃあ、みゆちゃんのおじいちゃん、おばあちゃんですか?』

『そうなの。みゆの母親方のね。』

『おしょうがつに、ママのじっかに、あそびにきたの!』

『そっかぁ!』


そういえば、福岡空港から湯布院の間の途中で、
みゆちゃん達は、バスを降りたんだよな。

熊本に行くために、途中で降りたんだ。


『じぃじ、ばぁばと、そういちくん、なにしてたの?』

『あぁ…、じぃじは、お兄ちゃんたちの、写真を撮ってたんだよ。』


すると、みゆちゃんは、無邪気にはしゃいで言う。


『えぇ!いいなぁ~みゆもしゃしんとってほしい!』


みゆちゃんの提案に、俺は、思い付いた。


『じゃあ、凌太。みゆちゃんと3人で、写真撮らない?』


すると、背中に隠れていた凌太が、
ゆっくり顔を出した。


『あ、うん…。』


すると、凌太を見つけたみゆちゃんが、
ニコニコしながら言う。


『あれぇ~りょうたくんいたの?あっ!かくれんぼしてたのぉ?みゆもやりたい!』

『かくれんぼ…?』


その言葉に、思わず凌太も
頬が緩んだ。


『うん!いいよ。かくれんぼやろう!じゃあ、そういち、おにぃ!』

『え?』

『みゆちゃん、いこ!』

『きゃはは!そういちくん、おにぃ!』

『こらっ!勝手に決めんな!』


俺の言葉を待たずに、凌太とみゆちゃんは、
手を繋いで走って行った。


『まてぇ~!』


俺も条件反射で、二人を追いかけた。


『そういちくん、なんで、おいかけてくるの?それじゃ、おにごっこだよ!』

『そういち、あたまわるいからね。』

『うるさぁい!ふたりとも、まてぇ~!』

『きゃあぁ!!』


かくれんぼをするはずが、
結果的に鬼ごっこになったけど
凌太が、みゆちゃんと逃げながら
自然に笑っていて
俺は、それを見て、とても幸せな気持ちになった。





つづく