《妄想物語》 A HAPPY NEW YEAR ① | みんなちがってみんないい

みんなちがってみんないい

田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

全ては
ちずから、わんだほうに呼び出された事から
始まった。


『馬鹿春田!元気?』

『馬鹿は余計だろ。』

『しょうがないじゃない!馬鹿なんだから!』

『うるせぇ。』


凌太がシンガポールに旅立って
3ヶ月。
季節は秋を通り越して冬になった。

12月になって急に寒くなり
吐く息も白くなって、手もかじかむようになった。

俺は、相変わらず
天空不動産の営業所で働いている。

週に一回くらいは、鉄平兄ぃの店で
ご飯を食べる。
それ以外は、まっすぐ家に帰る。
家といっても、
母ちゃんとATARUさんの住む家にいるのは、
気が引けて
営業所近くの、一人暮らしのマンションに引っ越したんだけど…。


なぜ、マンションにまっすぐ帰るかというと……。

……………………………


『凌太!元気かぁ!』

『元気です。てか、毎日聞かないでください。』


毎日帰ったら、Skypeで
凌太とテレビ電話するからだ。
毎日、毎日、その日に起きた出来事とか、
面白かった話とか、
天空不動産の人達の話とか、
たわいもない話をする。

気付くと俺ばかり話しているんだけど…。


『凌太の方は、今日どうだったんだ?』


と聞いても、


『まぁ、今日も無事に終わりました。』


なんて言って、ほとんど、シンガポールでの生活を話さない。


『おい!なんかあるだろう?エピソードとか。』

『うーん、今は、毎日ただ、日々をこなしてるだけなので…。春田さんの話聞いてる方が、楽しいんですよ。』


そうやって、はぐらかされる。
だから、全くシンガポールでの暮らしぶりを
把握する事が出来ない。

でも、凌太の後ろに映ってる部屋は、
とてもシンプルで
当たり前だが、きちんと整理されている。

つまりは、俺も自分の後ろを
凌太に見られているわけで……。


『あー、春田さん!スーツ!!!脱ぎっぱなしでソファーに置かない!!!皺になるから、ちゃんとハンガーにかけて!』

『あっ…すみません…。』


シンガポールに居ても、
凌太は相変わらず、厳しい…。


…………………………………



『で、何だよ、話って。』

『あぁ…忘れてた。』

『忘れるほどの事かよ。』

『うるさい!馬鹿春田!』


ちずは、相変わらずだ。
完全に幼馴染みの関係に戻って、
逆に凌太と仲良くなって、お互いに相談事をしているらしい。

俺は、蚊帳の外になる事が多い。


ちずは、厨房の方に入って、何かを持って戻ってきた。


『はい!これ。』

『何だよ。』


封筒を開けて、中身を出すと、チケットみたいなものが何種類か入っていた。


『実はさぁ、商店街の歳末くじ引きで、一等当てちゃったんだよね。』

『一等?』

『そう!高級旅館ペア宿泊券と航空券セット!!!』

『すげぇじゃん!運をこれっぽっちも持たない、ちずが!』

『うるさい!!!でもさぁ、私、恋人居ないから、必要ないんだよねぇ~。だから、春田にあげるよ。』

『………。』

『何よ!その沈黙と顔!』

『お前、また別れたの?執事2と。』

『私の理想は、もっとてっぺんにあるのよ!』

『一生出会わねぇよ。』

『うるさい!とにかく、春田にあげるから。』

『お前なぁ、俺も要らねぇよ。一緒に行くやつ、いねぇし。』



凌太は、帰ってこないんだから。



…………………………………


『なぁ…今年のクリスマス……、帰ってこないのか?』

『すみません…。クリスマスは、仕事が入ってるんです。』

『……そっか。そうだよな。まだシンガポールに行って、3ヶ月だもんな。』

『すみません。』

『大丈夫だって。どうせ、わんだほうでクリスマスパーティー、あるだろうから、皆、集まるだろうしな。』

『春田さん……。』



……………………………


残念ながら、凌太は、年末、帰ってこない。
仕方ない。
仕事が忙しいんだもんな……

結局、クリスマスも、わんだほうに行くことなく、マンションに直帰した。

いつもと変わらず、クリスマスも、凌太にSkypeしたから、
春田さんも暇ですねと失笑された。



『ちずぅ、俺もいらねぇって。』

『いいから、春田もらってよ。誰も居なくても、一人で行けばいいじゃん!』

『何で、ペア券もらってんのに、一人で行かなきゃいけないんだよ。』

『じゃあ、誰かに譲ってよ。ペアで行けるような人に、譲ればいいじゃん!』

『だいたい、お前がもらったものだろ。何で俺が、譲る人探さなきゃいけねぇんだよ。』

『何でもいいじゃない。私、知り合い少ないから、譲る人いないもん。とにかく、春田、任せたからね!!!じゃあ!』

『おい!ちず!!!』


ちずは、厨房の奥から、自分の部屋に行ってしまった。

何であいつ、俺に押し付けて、逃げてんだ?
訳わかんねぇ……。


『はい!お待たせ。特製カレーライス、ほうれん草アイス乗せ!』

『何でアイス乗せたの?鉄平兄ぃ…。』

『辛さと甘さのマリアージュ、第2弾!!!食べてみろ!』

『……………。』

『どうだ?』

『……ただ冷たくて、青臭くて、甘い…。』

『今度こそ、イケると思ったんだけどな……。』


鉄平兄ぃも、相変わらずだ。
ヘンテコな料理作っては、俺に出してくる。


『あらぁ~、春田くん、食べないのぉ?』

『舞香さんもいたんですか?』

『そう!今、忘年会シーズンでしょう。少しでも鉄平さんのお役に立とうと思って。おほほほほ。』

『舞香のおかげで、助かってるよ。』

『やぁだぁ~、鉄平さんったらぁ。』


舞香さんは、相変わらず天空不動産で、働いているが、夜は、鉄平兄ぃの店を手伝ってる事が多い。

二人は、ラブラブだ。


『そうだ!鉄平兄ぃと舞香さんが、行けばいいじゃん!』

『何言ってんだよ!さっきも言っただろうが、忘年会シーズン真っ只中なんだよ。店閉められるか!』

『そっかぁ……。』


仕方なく、俺は、その宿泊券と航空券を
持ち帰った。


どうしよう……。
そういえば、俺、詳しい内容
何も見てなかったな。

何……高級旅館は、……え?

そこで始めて、重大な事に気付く。


宿泊券に書いてあったのは

《湯布院温泉 美里 12月31日 一泊二日
  お一人様50000円ペア宿泊券 特別プラン付き》


湯布院???

湯布院って…、九州の大分県じゃねぇか!!!

え?え?
慌てて航空券を見ると、東京ー福岡 
になっている。


大晦日に、九州に行くのかよ!
俺…九州なんて行ったことないな。
西日本では、修学旅行で、京都、大阪に行ったくらいだよな…。


今日は、28日。
えっ?俺、譲る人をあと2日で
探さなきゃなんねぇの?

でももったいないよなぁ~
お一人様50000円なんて
とんでもない高級旅館だぞ!

こりゃあ、ちゃんと行く人、
探さなきゃ!
バチが当たりそう。


そうだ!凌太にも、どうしたらいいか
聞いてみるか。

早速、Skypeした。
日本とシンガポールの時差は、
一時間ほど…。
だから、仕事が終わる時間も、
そんなに変わらない。


『もしもし!凌太。元気?』

『だから、毎日聞かない!』

『いいじゃねぇか!お約束の凌ちゃんチェックだろ!』

『意味わかんねぇし。』

『それよりさぁ、なんかちずから、困ったもの預かってさぁ……。』

『どうしたんですか?』

『なんか、大晦日に九州の大分県の高級旅館のペア宿泊券と、福岡までの航空券がくじ引きで当たったらしくてさ。無理矢理押し付けられたんだよ。』

『そうなんですか。』

『俺に行けって言うんだけど、俺、凌太としか、行きたくないしさ。俺が行かないんだったら、誰かに譲れって言って、なんか、勝手に責任重大なんだよ。』

『それは、大変ですね。』

『だろ!どうしたらいいのかなぁ……。』

『まぁ…まずは、天空不動産の皆さんに、尋ねるしか無いですよね。』
 
                     『そうだよなぁ…。明日、当たってみるわ。』

『春田さん……。』 

『ん?どうした。』

『すみません…。俺、明日と明後日、出張で家を離れるので、二日間は、連絡とれないです。』

『あっ…、そうか。わかったわかった。二日間くらい、どうってことないよ。大丈夫。気をつけて、行ってこいよ。』

『はい。ありがとうございます。じゃあ、電話切りますね。』

『おぅ!じゃあな。』


テレビ電話を切って、
急に寂しくなった。

そっか……2日も凌太の声聞けないんだ。
顔も見れないんだ。


凌太……。
いつも平気な顔してるけど…
俺だけなのかな……


凌太に会いたくて、会いたくて……
苦しくなる。

毎日、顔も見てるし、声も聞いてるけど、
それだけじゃ足りないんだ。


早く、凌太に触れたい。


考えてもなんだか苦しくなるだけだ…。
もう、今日はこのまま寝よう。
凌太がシンガポールに経つ前に
プレゼントしてくれた抱き枕に抱きついて
そのまま眠りについた。





つづく