《妄想物語》牧家と春田の答え合わせ④ | みんなちがってみんないい

みんなちがってみんないい

田中圭くんを中心に
過去や現在大好きなもの
日常の中で思う事
発達障害の息子の事
そして
おっさんずラブ春牧onlyで
二次創作を書いています

大好きなものを大切にして
自分と違うものにも
目を向けてみる

皆違って皆いい
好きなものを好きと言おう

そらは、ベッドに座って
花火大会の時の出来事を話してくれた。


『お兄ちゃん、あの日さぁ、休みだって言ってたのに、結局仕事に行ったじゃん。』


花火大会の日、
春田さんと一年前に約束していた日。
休みを取っていたが、
数日前、倒れてしまって、仕事が溜まっていた。
それに、春田さんと何だかぎくしゃくしていて
花火大会には、一緒に行けない気がしていた。

一応浴衣は持っていったけど
今日は無理かなと、少し諦めていた。


『あの日、お母さん、春田さんに会いに行ったんだよ。』

『えっ?何で…?』

『お兄ちゃん、知らないかもしれないけど、お兄ちゃんが倒れて入院した時、お父さん、春田さん呼び出して、お兄ちゃんと別れてくれって、言っちゃったんだよ。』

『え…何で……。あ…。』


そっか…。
だから春田さんは、俺が入院した事知ってて、入院先まで来たんだ……。
春田さん、お父さんとの事は、何も言ってなかった……。


『でも、お父さんも少し反省したみたいでさ、花火大会の日、代わりにお母さんが、春田さんとこに、謝りに行ったんだよ。』


何も知らなかった……。
春田さん、何も……。


『でもお母さん、春田さんの曇った顔が気になって、家に連れて帰って来ちゃったの。お兄ちゃんも、ずっと花火大会、春田さんと行くの楽しみしてたのに、仕事に行っちゃうし。心配になって、たぶん、お節介しちゃったんじゃないかな。』



…………………………


『春田くん、今日花火大会でしょ?何着ていくの?』

『あ………、あの…その……。』

『家に忘れて来ちゃった?』

『あ…はい。』

『じゃあ、これ着てってぇ。うちのお父さん、花火大会とか行かない人だったんだけど、10年以上前かな…。急に仕事早く終わったから、花火大会に行くって言い始めて、当日に用意したら、お父さんには大きすぎて、結局、一度しか着てない甚平なの。』

『お母さん…あ、でも……牧と今日、具体的な場所とか時間…、打ち合わせてなくて……。』

『大丈夫よ!ねぇ、そら!』

『ん?…わかった。了解!』


……………………………


『あっ!』


そらは、あの日、
5時くらいに急に電話してきた。


……………………………


『お兄ちゃん!そらだけど。』

『あぁ…どうした?』

『さっき、春田さんと偶然に会ったんだけど、春田さん、携帯持ってくるの忘れちゃったみたいで、お兄ちゃんに連絡取れないって言ってたから…。祭り会場の入り口で、7時に待ってるって。』

『えっ?』

『じゃあ!私はちゃんと伝えたからね。』


…………………………


あれは、お母さんとそらの仕業だったんだ。

おかしいとは、少し思った。
春田さん、怒ってないのかなって。

だけどその時は、
少し諦めてたから
春田さんと花火を見れるという
うれしさで
深くは考えなかった。


…………………………

『春田さん!お兄ちゃん、祭り会場の入り口で、7時に待ってるって!なんかお兄ちゃん嬉しそうだったよ。』

『…そっか……。そらちゃん、ありがとう!じゃあ、お母さん、お父さんの甚平借りていきます。行ってきます。』

『楽しんでらっしゃいね。』


……………………………

『春田さんも嬉しそうだったから、楽しんで帰ってくるとばかり、思ってたのに。彼氏と花火に行ってたらたまたま会って………なぜか、春田さん…甚平ずぶ濡れだった……。』

『えっ?』
……………………………


『春田さん!あれっ?お兄ちゃんは?』

『あっ……。』

『やだぁ!!春田さん、ずぶ濡れじゃん!どうしたの?』

『…………。』

『そらちゃん、誰?』

『あぁ!まだ会ってなかったよね。春田さん!お兄ちゃんの恋人なの!!』

『そうなんだ!はじめまして!そらちゃんの彼氏の真輝です…大丈夫ですか??俺の車乗ってください!!!早く着替えないと、風邪引きますから!』

『いや…大丈夫。このまま乗ったら車のシート汚すから。』

『そんなこと、気にしないでください!!!さぁ、早く!!』


…………………………


『真輝が家に送ってくれたの。それから先の事は知らないけど……。そのまま、私も家に入ろうとしたんだけど、真輝が、春田さん居心地悪いだろうから、遠慮しようっていうから。』

『じゃあ、後はお母さんが?』

『うん…。その後の事は、お母さん何も話さないから。わかんないけど……。わかんないんだけどさぁ……でも、あの時の春田さんの顔、私、忘れられないんだ……。』


そう言って、そらは、
俺をキッと睨んだ。


『ねぇ、お兄ちゃんは、どうしていつも逃げるの?私、お兄ちゃんの彼氏、全員に会ったけど、みんなお兄ちゃんの事、大切に想ってたよ!』

『そら……?』

『どうしていつも、好きな人から離れようとするの?何で?……春田さん、きっと私に会う前、泣いてた……。』

『えっ……。』

『何でお兄ちゃんは、自分に自信ないの?私、お兄ちゃんの事、大好きだよ!自慢のお兄ちゃんだよ!何で、男の人を好きになる事をそんなに、引け目に感じるの?』

『当たり前だろう…。普通じゃないから。』

『普通って何?…てか、普通じゃなくて何が悪いの?お兄ちゃん、何か悪い事したの?誰かに迷惑かけた?』


そらは、そのまま、捲し立てた。


『ねぇ、じゃあ春田さんの気持ちは?春田さんは、男の人、好きなわけじゃないよね?そういうの越えて、お兄ちゃんの事、好きになったんでしょう?何で、そんな春田さんの事、何で大事にしないの?』

『そうだよな、……わかってる。』


春田さんは、プロポーズをしてくれて、
香港から帰ってきてからも、
春田さんなりに、結婚の事考えてくれた。

だけど、俺は、この先の現実を
考えていた。

長男としての責任……
子供が作れないという現実……
そして…書類上、法的上の結婚は、
認められない事実……

そして……
少し前まで、
俺は、本部に戻り、
狸穴さんのプロジェクトに参加して
自分に余裕が無くなっていた。

春田さんが上海に行くまで、
何とも思わなかった春田さんのだらしなさが
許せなくなっていた。
春田さんを少し負担に感じた……。

そして、そんな自分も
何だか嫌になっていた。

結婚って……何だろう。
良いことばかりじゃない事は、わかりきってる。

男同士という足枷がなくても
結婚生活を続けていくって
大変なんだな……

何だか怖くなって
また悪い癖が出た。
好きな人から逃げた……。


だけど……
春田さんに命の危険が迫って
俺は考えるよりも先に
会社から飛び出していた。

どこに春田さんがいるかなんて
何もわからないのに…
あてもなく探して、途中で
武川さんからの電話で場所がわかって
たどり着いた。

その時に気づいたんだ…。
春田さんの居ない世界なんて
もう考えられない事に…。

ただただ、春田さんが
無事である事を祈った。
春田さんの側にいたい。
ポンコツでもだらしなくても
ダサくても…
いっぱい悪いとこあるけど
それでも春田さんが好きなんだ。



そらは、俺の言葉に
少し我に返ったように謝った。


『お兄ちゃん、ごめん。ちょっと、言い過ぎた。』

『いや……本当の事だから。』

『お兄ちゃん!今度こそ、幸せから逃げないでね。』

『……うるさい(笑)。』



そらの言葉に、素直に返事出来なかったのは、
永遠を続けるということが、
お互いの気持ちと努力次第だと思ったからだ。

いつ、変化してしまうか
わからないもの……。
その時、その時に起こる物事に
向き合う覚悟が必要……
それが幸せから逃げない事だとしたら
簡単に返事出来るものではなかった。

そらは、そんな俺に気づいたのか、少し悪態ついた。


『もう!お兄ちゃん、真面目過ぎ、考え過ぎぃ!』


そして、顔を近づけて言った。


『私も、真輝と結婚するから!!!』

『はぁぁあ?!まだ、お前、21だろ!!!』

『愛に性別も年齢も関係ないでしょ?』

『それとこれとは……。』

『真輝なら、大丈夫だと思うんだ……。お兄ちゃんと春田さんの事、まっすぐに受け止めてくれたから…。』

『そら…。』

『私、それだけは、どうしても譲れない条件なんだ…。だから、お兄ちゃんの恋人にも全員会ったし、私の恋人にも全員会ってもらったし。』

『お前…それで?』


考えてみれば、いつからか、
俺とそらに恋人が出来たら、
必ず家に連れてくるという決まりが出来ていた。


『でも、お兄ちゃんはやっぱり、素敵な恋人しか、連れてこなかったね。皆、お兄ちゃんの事、大切にしてたもん。特に、春田さんの前の人とか。』

『……政宗?』

『別れた後に一回会ったことあるけど、お兄ちゃんの事、心配してたよ。』

『えっ?』

『あっ!これは、政宗さんに口止めされてたんだった!』

『そら!』

『じゃあね!そうそう、シンガポールで男女7人秋物語みたいにならないでよ!』

『はぁ?』


そらは、そそくさと逃げるように、自分の部屋に帰っていった。



俺とそらが、俺の部屋で話してた時、春田さんとお母さんも、二人で話していた。





つづく