機械翻訳、時期が来た SmartTimes 大阪大学教授 栄藤稔氏(日経産業新聞)
日本人による機械翻訳の開発を手掛けるみらい翻訳の社長を務める栄藤氏のインタビュー。
みらい翻訳の機械翻訳の性能がTOEIC960点相当の日本人ビジネスマンの翻訳能力を超えたと発表すると、無料サイトの利用者が急激に増えた。ツイッターからは英語論文の読破や日本語非対応のゲームなど、幅広く使われていることが分かる。「無料でグーグル翻訳より高性能」との評価もあった。
技術開発では、技術がある性能を超えると急速に利用される。機械翻訳がその臨界点を越えようとしている。数年前までの「あんなもの使えない」から「それなしには生活できない」に変わろうとしている。(リンク先より)
実は、というほどではありませんが、翻訳作業の機械化は昔から行われてきました。
辞書は紙の辞書から電子辞書に。
原稿は手書きからPCに。
原稿の文字カウント作業・用語の統一はワードの機能に。
調べ物は本屋からインターネット検索に。
技術の進歩で、1人の翻訳者が処理できる分量は増えていき、翻訳産業は大きく発展しました。
現在、フリーの翻訳者が1日に手掛ける量の目安は、
英日(原文が英語)では1500~2000ワード程度、日英(原文が日本語)では3000~4000文字程度とされています。
AI(人工知能)による機械翻訳の精度が向上したいまは、ポストエディット(PE)と呼ばれる仕事もできました。
機械が訳したものをチェックして直すこと、特に機械が苦手とする意訳の修正です。
現状では、分野によって進んでいるところと進んでいないところがあります。
直訳調になりやすい分野は進みやすく、より意訳が必要な分野はなかなか進んでいない(それより翻訳者が1人で訳した方が速い)です。
AIに対しては、ディープラーニング(深層学習)をさせ、性能を上げていくという取り組みがされています。
そもそもAIがあれほど注目されるようになったのは、ディープラーニングが飛躍的に向上したためとされています。
ディープラーニングは翻訳精度の向上と親和性が高いとされています。
翻訳するAIに対し、適切な訳語をディープラーニングさせていくことで、精度を上げていくということです。
そのうえ、世界では今までになかった新しい事象が沢山生まれていますから、
翻訳するAIに対して、全く新しい事象についての訳語を学習させることも必要になってきます。
機械化が進んだ後は、人間が翻訳しなくてよくなるのでしょうか?
いいえ、翻訳者が主体的に「何を訳すか」を取捨選択することが重要になってくると予測しています。
世界では主流になってどんどん進んでいるけれど、日本では事情があって誰も知らないことが多くあります。
世界に知らされなかったら大変なことになるけれど、事情があって知られていない日本の事象も多くあります。
どんなことが日本に知らされるべきかを判断していくのは、エシカル(倫理的)な仕事だと思います。