紫式部が光源氏の物語を書いたのが源氏物語だが、なぜ源氏なのか不思議に思っていた。スポンサーは藤原道長であり、源氏は藤原氏の競争相手であり、実際に蹴落としていた。

 

井沢元彦の「逆説の日本史」に書いてあったのだが、源氏はそのころ、藤原摂関家が全盛の中で地方に追いやられた一族で、敗れたものへの鎮魂だとあった。

井沢元彦の言い方では、敗れたものの怨霊は祟るので、それを鎮めるためだった。

その時の説明では、蹴落とした相手の恨みで祟られないように源氏にしたというものだった。

ところが、大河ドラマの「光る君へ」を見ていると、黒木華の演じる源倫子が出ている。彼女の父は左大臣で藤原氏と張り合っている。
大河ドラマ「光る君へ」 全体相関図・キャスト - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK
倫子は藤原道長の妻になり、娘は三人も天皇の后になって後の天皇になる子どもを産んだ(一家三后)。
これで道長は最高権力を長期間維持することになり、倫子はその立役者だった。
【「光る君へ」人物紹介】源 倫子 ◆ 黒木 華 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK


それを思うと、源氏物語がなぜ源氏が主人公なのか分かる気がした。

紫式部の女性の立場からすると、源倫子の血が天皇家に最も多く流れているのであるから、その源氏を主人公にしてもおかしくないし、道長も認めたのだろう。

 

ここまで書いて、ある矛盾に気がついた。

一家三后が実現したのは源氏物語が書き始められるより後のことだから、書き始めた時に光源氏と名乗らせた根拠にはならない。

書き始めたときに光源氏としたのは、天皇の子が臣下になった時は源氏の姓を賜るのが通例だったからだろう。臣籍降下という。源氏には分かれた天皇の名前が入った、嵯峨源氏、清和源氏、宇多源氏などあり、源倫子の父である源雅信は宇多源氏だった。

 

以上を書いた後、たまたま以下の記事を目にした。

なぜ『源氏物語』は主人公が「源氏」なのか? 藤原氏が排斥した「源氏の怨霊」を鎮魂するためだった? | 歴史人 (rekishijin.com)

怨霊の鎮魂のためではないというのは私と同じだが、結論は私とは違っていた。