なかなか感想を書くのが難しい、というのも何を書いても本作の重さを表現するには私の言葉では軽すぎるような気がする、そんな映画でした。

 アウシュビッツ強制収容所の所長であるルドルフ・ヘスとその家族の、収容所に隣接した邸宅での生活を、淡々と描き出す本作。悲鳴や怒号、銃声や焼却炉の音が通奏低音のように流れる中で暮らす裕福な家族の日常生活。それは多分、今の自分に通ずるものもあって、観ているものもそれが突き付ける己自身の在り方も、なんかもうずっとおぞましいんだけど、多分これは観た方がいい映画。

 監督の、アカデミー賞でのスピーチは、とても勇気のいることだったと思う。これに反対署名が出たっていうのはちょっとショックだったな……結構好きだった映画の監督も、名を連ねていた。