ちょっぴり『ヴァチカンのエクソシスト』を思い浮かべたりしていました。『応天の門』かと思いきや。まあそりゃ『陰陽師』なのでそうなんですが。

 なんというか、山﨑賢人と染谷将太の説得力がすごかったな。小林薫、國村隼、北村一輝のベテラン陣に負けてないの。負けてないといえば板垣李光人も負けてなかったけど、いかんせん帝役なので出番と動きが少なかったので、ちょっと印象は薄いかな。でもあれしか出なかった割には結構覚えているのでやっぱりすごかったのかも。嶋田久作は、出てきた瞬間こそ「あ、軍人加藤だ!」となるものの、全然違った印象で通しており、こちらもさすが。五行の説明がわかりやすくてよかったな。

 というわけで、役者陣が相当しっかりしている感じがするんですけど、その中でもやっぱり山﨑賢人と染谷将太が、ずぬけてんだよなぁ。特に染谷将太の笛のシーンがすごかった。この人そのまま国宝級の仏像になれる気がする。『空海−KU-KAI− 美しき王妃の謎』の時も思ったけど、半眼の様子がなんかものすごく貴い。一転して晴明に対して「お前一生友達なんかできないよ」って口とんがらかしていうところのかわいさとか、もう聖俗どっちも素敵すぎて大変。2001年の『陰陽師』で伊藤英明が演じた博雅の印象をすっかり忘れさせる、雅な博雅でした。

 山﨑賢人はねぇ、なんかマジで出せそう。この人が情人離れしたフィクション人物演じるときの「普通に存在しますんで、そういう人」感がすごい。劇中で晴明を評して言う「本物」が呪術の存在を指すのか、人心を操る力を指すのかは、多分鑑賞者の判断に委ねられるんだろうけど、それに対する返答が、なんとも人間離れしていながら妙な色気もあり、すごくよかったですね。

 美術もよかったし、陰陽寮の説明もわかりやすくて、かなり観やすいつくりにもなっていたと思います。もったいなかったのは中ボスの断末魔のセリフがちょっと安っぽいところかな! 策士策に溺れるというか術師術に溺れるといったところでしたが、そのセリフはもうちょっとなんかなかったんか~。反閇のシーンは大変良かったです。

 あと、呪術監修に加門七海がクレジットされており、「あ、がちのひと……」となりました。ずいぶん前にこの人の本(確か小説ではない)を一冊だけ読んで、なんかすごくやばいなと思った覚えがあります。なんという本だったか……。

 全体に、予告を観たときに感じた「大丈夫か……?」という気持ちを見事に払拭してくれた、まじめに取り組まれた作品だったな―と思います。面白かった。