公開当時に劇場でも観たし、その後も何度も繰り返し観た本作、旧Twitterで映画を紹介している人間食べ食べカエルさんのリクエストした映画を上映しようという主旨の企画の第一弾として、1回こっきりの映画館での再上映がありまして、なんとチケット争奪戦潜り抜けちゃったので、渋谷に観に行ってきました! 和歌山から! 十分その価値はありました。企画に携わった皆様に大大大感謝。

 感想は結構ネタバレも含みますのでご留意ください。これも初見時の感動は大事にした方がいい映画。冒頭からいいので最初からしっかり集中して観てほしい。

 

 

 第三次世界大戦を経て、平和維持のために争いのもととなる感情を抑制した社会で、違反者や違反品を取り締まる執行官(グラマトン・クラリック)である主人公が、感情を取り戻したことで抑圧に気づき、体制をひっくり返すというお話。

 グラマトン・クラリックが習得している「ガン=カタ」という銃撃と格闘技をミックスしたような戦闘術が有名ですね。

 

 アクションがかっこいいのは言わずもがななのですが、本作、クリスチャン・ベール演じる主人公のプレストンが感情を抑制する薬の投与をやめて、初めて感情を認識する様子が素晴らしいんですよね。悪夢の恐怖に怯えて飛び起きたり、日の出の美しさに打ちのめされたり、感情の奔流に押し流されてしまいそうな不安で薬を打とうと走ったり。薬をきちんと打っている間は戦闘中であっても走ることがほぼなかったと思うので、このシーンを含めて劇中で走ることになるシーンはどれも印象的。

 感情を得てからは、移動中にそっと手袋を外して、いろんなものを素手で触ってその感触を味わうようになるのですが、その手の演技とそれに注目するカメラワークもまたいいんですよね。あぁ、今、初めてその感触を味わっているんだなぁ、というのがわかる。

 摘発に行った先で、集められた違反品(感情を喚起するもの、美術品や装飾品などなど)に触れて、その感触を味わい、そこで見つけたレコードに針を落として、流れてきたベートーベンの交響曲第9番第1楽章冒頭に衝撃を受けて座り込んで泣き出してしまうシーンが圧巻なんですよ。蓄音機の使い方なんて知らないから、レコード置くだけ置いて、そのまま他のものを見始めていたところに不意を突いて流れてくる第1楽章と、それに衝撃を受けていることを表す映像が本当にすごい。スノードームの使い方がうまいんだ……。私が今第九の第一楽章が好きなのは、間違いなくこの映画の影響。(ソフト化した際に特典として収録されていた監督等によるオーディオコメンタリーによると、これが本当はもっと有名な部分を使いたかったけれども、予算削減のために比較的お安いこの部分にした、という話だったような気がするんだけど、何がどう作用するかわかりませんね。この部分で大当たりだったと思うよ……!)これが映画館の大画面&いい音響で見られたのは本当に良かった。

 

 プレストンのこの感動がしっかり描かれているからこそ、この映画のアクションシーンが活きてくるってもので。

 クリスチャン・ベールは今でこそアクションこなす俳優という印象がありますが、実は本格的なアクションは本作が初めてとのこと。でもスタントの誰にもできなかった動きを本人だけができたという話もコメンタリーで出ていた気がする。プレストン同様、努力の人なんだよなぁ。(本作より後の『マシニスト』では激やせをして、その後もバットマンに向けて身体作り直したりと役作りがすごい。)

 アクションについてはいろんな人が言及していると思うし言葉で説明するのも難しいので「観てね!」というしかなくなってしまうんですけど、久々に映画館で観たらあまりに良すぎて「い~ひひ!」ってなってました。

 摘発に行った先で処分されそうになっていたところをうっかり庇って(ここでの説明が苦しいのがまたかわいいドッグパーソンなプレストンである)連れ帰ってしまったあと、飼うわけにもいかないからと元の場所に戻しに行って、捜査隊と出くわしちゃったときのアクションで、両サイドから突き付けられているショットガンを掌底で回転させて己のものとしたあと、両手それぞれの腕の屈伸でポンプアクションするところとか、飛び上がって回転して相手の銃撃をよけつつショットガンでぶち抜くとか、ラスト近くのシーンで、駆け抜けながら倒れた相手の持っていたアサルトライフルっぽいものを背後に蹴上げて?背面からキャッチして構えて残る相手に銃弾を浴びせるとかさ~~~!!! 説明力に限界があるのでこれはマジで観てください。

 ガン=カタについては、ありえないと思いつつ劇中での説得力た高すぎて「あ、はい、強いですよね!」ってなるんですよね。冒頭のまじめなナレーションで「第三次世界大戦があった」「第四次があれば人類は滅びるだろう」「そこで人類は争いの種である感情を抑制することにした」のあとに「違反を取り締まる法執行官グラマトン・クラリックを設置」ときて「クラリックは戦闘技術の粋を結集したガン=カタを習得」みたいにくるので、こうやって書き下すと「はにゃ?」ってなるんだけど、観ている間はなぜか「そうか……!」って納得しちゃうんですよね……。稽古シーンなんかもあるので、クラリックが飛び抜けて強いの納得しちゃうんだ……。

 これが映画館で観られたのは本当に、ほんっっっとうによかったです。

 

 上映後には企画担当の会社の人と、加藤よしきさんという旧Twitterで映画紹介している方とのトークがありまして、いろいろ面白かったです。本作の監督カート・ウィマーの特徴の一つに「悪玉が、絶対許されないようないいわけで命乞いをする」というのがあって、『リベリオン』がまじでそうだったので、次回作の『ザ・ビーキーパー』も命乞いシーンが超楽しみになってしまった。

 あと人間食べ食べカエルさんが「食べ食べさん」とか「人間食べ食べさん」って呼ばれてたのちょっと面白かったな。お名前のコアはそこなんだ……。

 

 食べ食べさんリクエスト企画は、第2弾第3弾が既に決まっており、他にも上映したい映画いっぱいあるようで、末永く続いてほしい~。作品によってはテアトル梅田での上映予定もあるそうで、近畿の民としてはありがたい限り。上映館も増えるといいね。そしたら『リベリオン』もまたやってほし……!

 

 大変楽しく、今後の夢も広がる上映企画でした。楽しかった~! 改めて、企画に携わった皆様に大感謝です。同企画、なるべくいっぱい観に行っちゃうぞ!