週報『ローグ・ワン』〈第1号〉 | アディクトリポート

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『ローグ・ワン』を観る前の不安は、
監督が『GODZILLA ゴジラ』(2014)

ギャレス・エドワーズだったこと。

どうも、
「あの『ゴジラ』or『SW』を自分が監督できる」
というだけで満足しきってしまい、
作品の突き詰めが甘く、達成目標や努力目標が低いらしい。

なので監視体制は欠かせず、
2016年1月11日にいったん完成。

そのバージョンを元に予告編が作られたが、
2016年の6月中旬に、追加撮影/撮り直しが行われた。

そのため、予告編にあった多くのシーンが、本編からはごっそり消えている。




さらにクリス・ワイツの脚本も、
最新作『ジェイソン・ボーン』を除く『ボーン』シリーズの脚本を担当した、
トニー・ギルロイによって相当に手直しされており、
たび重なる改変の弊害だろうか、
ボーディが触手クリーチャーに心の中を探られて、
廃人同様になるという話がそれっきりだったり、
マスタファーだけ、
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星の名前が出なかったりする。

再撮影の余波は、音楽にも及んだ。
当初は『GODZILLA ゴジラ』つながりで、
アレクサンドル・デスプラが担当していたが、

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再撮影分に音楽をつける時には他の仕事が入っており、
急遽、マイケル・ジアッキーノが代行した。
作曲に割けた期間は、たったの4週間半(1ヶ月弱)だったという。

こうして図らずも、
ジアッキーノ(ジアッチーノ)は、
スタートレックと

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スター・ウォーズ新作という、


2大宇宙もの代表タイトル両方の音楽をかけ持ちすることになったわけだが、
両作の区別はきちんとできており、
『ローグ・ワン』でも失望はなく、逆に感心しきりだった。

ジアッキーノの名前を初めて知ったのは、
『Mr.インクレディブル』(2004)で、

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作品のトーンに合う1960年代風スパイ映画風の音楽、
もっと具体的には、007のジョン・バリー調の再現ぶりに感心しきりだった。

そこで今回も、ジョン・ウィリアムズだと言われても信じてしまうような、
堅調な音楽を抑え気味で流しつつ、
最後の聞かせ処も見事に締めくくり、
大任を果たした。

どういうことかというと、
本流「サーガ」(エピソード○)と今回は異なり、



オープニングクロールも、あのテーマ曲もない初のSW映画となったが、
そのパターンが本来の効力を発したのは、せいぜい旧三部作の『ジェダイ』まで。

新三部作(『エピソード1〜3』)の初見は、
全てアメリカだったが、
『エピソード1 ファントム・メナス』(1999)の開映までの盛り上がりと、
終映後のドッチラケの落差は言うに及ばず、
『2』(2002)や『3』(2003)での、
「なにせ『エピソード1』の例があるからな…」
と言う、ぬか喜びへの警戒心から、
オープニングでもイマイチ乗り切れない雰囲気があった。

それでもまだ新三部作は、
ルーカス印のSWの見映えはパチモン臭くても、
ジョン・ウィリアムズの「いつもながらのSW調」の音楽が救ってくれたが、
『フォースの覚醒』(2015)では、その音楽までもが不発。

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つまりいつのまにか、
「純正SWたる信頼と安心のブランド、目印」
のはずのオープニングクロールが、
逆に作品の足を引っ張り、
もはや誰も期待できない単なるお約束として、
パロディ風の効果しか出せない無駄パートに堕していた。

それに比して、
『ローグ・ワン』では、
始まり方こそ、本当にSWの1作なのかと不安視されても、
終わってみればなるほどたしかに、
既存のSWなんかより、
よほど本物のSWだったじゃないかと頷けるし、
音楽も自ら、
エンディングの方はこれまで同様の音楽にすることで、
さりげなく血筋の正当さを主張していた。

だから平日の初日、
それも陸の孤島、
成田のIMA館は全席が埋まるわけでもなく、
たとえ自分以外は誰もしていなかろうと、
生まれて初めて、
映画SWに、惜しみない拍手を贈ったのである。