ジェフ・シーガルの執念/エレク・ロト・アミア〈その4〉 | アディクトリポート

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これ(フィギュアのない理由/アミア・エレク・ロト〈その3〉)の続きで、
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さすがにアミア、エレク、ロトの話は終わりです。

今回をざっと要約すると、
「ザ☆ウルトラマン」(1979)のエレク、ロト、アミアが、
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「ウルトラマンUSA」(1989)のチャック、スコット、ウーマンベスに一本化されたのは、
円谷プロ社内だけでなく、
外的要因もあったのではないか、
——と言う話。

前に
↓この動画を紹介したが、

大賢者(Mentor)が、
「アルタラへようこそ」
と言っている。(0:28あたり)

つまり〈ザ☆ウルトラマン〉の英語版では、
ジョーニアスの故郷の星は、
sann
U40(ユー・フォーティ)ではなく、
アルタラなわけ。
みst
↑U40のウルトラマンたち。

惑星アルタラというのは、光の国と同じM78星雲にあって、
「ウルトララマンUSA」の、
チャック、スコット、ウーマンベスの出身星。
usa
——ということになってるが、
なぜかWikiの、「ウルトララマンUSA」の項には記述がなく、
あるのは、M78星雲と、敵の方の出本、ソーキン星だけ。

でもって、惑星アルタラの記述があるのは、
Wikiの「M78星雲」の項

この出典は、いったいどこなのか?
——と、長年疑問だったので、
さっきの動画を見て、「はっ、もしかして?」
と思い至った。

というのも、「ウルトラマンUSA」(1989)の
usa

アメリカ公開題名は、
ULTRAMAN THE ADVENTURE BEGINS
begins
ウルトラマン 冒険が始まる


でもって、色々調べたら、
「ザ☆ウルトラマン」はアメリカでは2本のテレビムービーになっていて、
1本目は、
The Adventures of Ultraman
さいしょ
ウルトラマンの幾多の冒険


2本目は、
Ultraman II: The Further Adventures of Ultraman
ふぁーざー
ウルトラマン2 更なる冒険


最初に考えたのは、アメリカでは
*「USA」=「冒険の始まり」で冒険が始まって、
*「ザ☆」第1弾=「幾多の冒険」で、冒険が続き、
*「ザ☆」第2弾=「更なる冒険」で、しめくくられたんでは
——ということ。

なので、U40は、「USA」の星、アルタラと一本化され、
↓「ザ☆」のアミア、エレク、ロトは、
けっと
アメリカ人が先に知っていて、なじみのあった、
↑ベス、チャック、スコットの後日、後年の姿ってことなんじゃ。

そうだ、そうだ、そうに決まってる!

と考えたが……
それだと色々と、辻褄の合わないことが出て来た。

たとえば、キャラの名前。

「ザ☆」が「USA」の後だったら、
「どうせ外見の違いなんて、ウルトラマンに疎(うと)いアメリカ人にはわからないだろう」
とタカをくくられ、
●アミアは既出のベス、
●エレクも同様にスコット、
●ロトも揃えてチャック
と呼ばれるはずだが、
↓アミアは、ちょい変えのアーニャ(Anya/アニア)5:28あたり。

↑エレクはモーロ(Mauro?=イタリアの「マウロ」)、ロトはジェロ(Jelo?)と呼ばれている。5:44あたり。

主人公ヒカリ超一郎(しかしこの名前、もう少しどうにかならなかったのか…)は、
“スコッティ”・ハリソン(Scotty Harrison)で、
仮説どおり、先に“スコット”が登場していたら、
まぎらわしくて、何ともまずいネーミング。
(実際に、「USA」の英語版では、スコットは時々、愛称のスコッティと呼ばれている)

ジョーニアスの方は、単にウルトラマン(アルトラマン/アルットゥラマン)。
zauru
主人公とウルトラマンの声は同じ。

そこでもう少し調べてみたら、
「ザ☆」の海外版第1弾、
“The Adventures of Ultraman”は、1981年放送のテレビムービー。

1982年に、Family Home Entertainment (ファミリー・ホーム・エンタテイメント)からビデオ化された。

PART 1
PART 2
PART 3
PART 4
PART 5

テレビ版の、ウルトラの星関連エピソードを、
脚本家のジェフ・シーガル(Jeff Segal)が再構成。

PART 6
PART 7
PART 8
PART 9
PART 10

↓シーガルは、脚本以外に、
jefu
↑共同監督としてもクレジットされている。
製作は円谷プロ単独で、海外の会社名は出て来ない。

単に日本語を英語に吹き替えて、エピソードを羅列するのではなく、
他の実写ウルトラシリーズとは異なる「ザ☆」だけの特色、
すなわち、
ウルトラマンの故郷の星と、
その住人たちによって展開する、
地球を離れた異世界でのスペースオペラ

のエッセンスを凝縮した、
監督・脚本のジェフ・シーガルの功績は、
よほど作品に精通していないと不可能な離れ業として、
讃えられるべきだと思う。

やっつけ仕事からは、この方向性は出て来っこないからね。

ジェフ・シーガルというと、
『サイボーグ009 超銀河伝説』(1980)の制作協力のため、来日。
サイボーグ008(ピュンマ)のキャラクター造形についてアドバイスをほどこし、唇が強調された容姿を修正させた。


シーガルは、同時期円谷プロと接触し、「アメリカ版ウルトラマン」制作を試みる。
日本のウルトラマンを何世代か未来に進めた世界が舞台。登場ウルトラマン名は「ウルトラマンヴォルカン」。しかし、結局制作は実現しなかった。

——が思い浮かぶが、
姓のシーガル(Siegal)の綴りが違う。

もしもヴォルカンのつづりが“Volcan”なら、火山の“volcano”に起因する、
↓地底人ファイヤーマン(左)や、地球の大地の巨人ガイア(右)、
ぼるけ
↑地底からの使者ビクトリー(左)や、そのモデルチェンジ、ビクトリーナイト(右)
のようなウルトラマンだったのかも。


でもって、このシーガル氏、
「009」参加の触れ込みが、
『スター・ウォーズ』にも関わった、
だったが、いくら調べてもスタッフにこの名前を見いだせず、
「超銀河伝説」の記者会見で、そこらへんを訊かれると、
「私はルーカス氏に、二言三言アドバイスしただけ」
とお茶を濁して、アヤシサ炸裂。

ネットで改めて調べると、
「SWのコミック作家」が、日本では「SWの脚本家」と間違って紹介された
となっており、綴りはSegal。

だけど、どのコミックの、何を担当したのかは、わからずじまい。

やはり山師(ペテン師)の類だったようですが…。

ええっと、
「ザ☆」英語版に話を戻すと、
1作目「幾多の冒険」放送から2年後の、
1983年に、
第2弾「更なる冒険」が放送される。
前作とは異なり、音楽はオリジナルをそのまま使用。



「ザ☆」の1話から4話を、3話と4話の順序を入れ替えてまとめたもの。

PART 1
PART 2
PART 3
PART 4
PART 5

ヒカリ隊員は、ハリス(Harris)と呼ばれ、ウルトラマンの声は別の人。

PART 6
PART 7
PART 8
PART 9
PART 10
PART 11

製作には、AEi(アソシエイツ・エンタテイメント・インターナショナル)が名を連ね、
あえい
1983年(MCMLXXXIII)作品とクレジットされている。

この「更なる冒険」は、
「幾多の冒険」で、ジェフ・シーガルがメインに据えた、
ウルトラ族対悪の軍団
爬虫異種族バデルと、U40の同族ヘラー一味がごちゃ混ぜになっている)
の戦いを徹底排除し、
「ウルトラマン」の基本フォーマット、
1話完結、怪獣対ウルトラマンの戦いがクライマックス
——に戻すのに伴い、
おそらくは1作目が不発に終わった責任をなすりつけられた
ジェフ・シーガルが、完全に蚊帳(かや)の外にされてもいる。

そしてこの4年後の1987年に、
アメリカでは都合3本目のアニメ版テレビムービー、
「冒険が始まる」が放送される。

PART 1
PART 2
PART 3
PART 4
PART 5
PART 6
PART 7
PART 8

アメリカでは円谷プロの認知度が低く、
しかも過去の2度の試み「幾多の冒険」「更なる冒険」が成功とは言い難かったので、
あちらでは知名度バツグンのアニメの老舗(しにせ)、
↓ハンナ(ハナ)・バーベラ・プロの名前を先に出し(上)、
円谷プロは添え物(中)、
ba-bera
最注目は、ハンナ・バーベラ側の顧問として、
ジェフ・シーガルが返り咲いていること!

ううむ、すさまじい執念だ。

どこから聞きつけたのか…。

そしてどうやって、ハンナ・バーベラ側に入り込んだのか。

ここまでウルトラマンにこだわるアメリカ人が、
そうそういるはずはないから、
「009」の“i(アイ)付き”シーガルは、
一連の“i(アイ)なし”シーガルと同一人物としか思えず、
Siegal表記は日本側の誤記だろう。

そこで改めて、SEGAL(i抜き)の方で検索したら、
この人物は、すでに「ザ☆」日本放送の1年前の1978年には、
ULTRAMAN: THE JUPITER EFFECT(ウルトラマン:ジュピター・イフェクト=木星の影響)という、惑星直列に題を取った脚本を書きながら、企画実現には至らなかった。
——というから、アメリカ版(英語版)ウルトラマン実現に、
相当の執念を燃やしていたことがわかる。

「ジュピター・イフェクト」は、
↓おそらくアメリカ本国で1978年末(日本は79年夏)に公開された、
yuyuyu
↑『スーパーマン』の気運に刺激されて、
シリアスな大人向けの、
本格的なウルトラマン実写映画を目指したらしい。


でもって、シーガルとしては、
「冒険が始まる」(1987)を、
自分が脚本、監督を担当した、
「幾多の冒険」(1981)の続編、後日談と考えていた可能性が高い。

だからこそベス、チャック、スコットは、
81年版と同じ、惑星アルタラの出身で、
そこにいたアーニャ(アミア)、モーロ(エレク)、ジェロ(ロト)が、
地球人に憑依したものということになるのでは?

3人の名前が違うのは当然。
だってベス、チャック、スコットという名前は、
憑依されたパイロットの3人の本名=地球人名、
●ベス・オブライエン(Beth O'Brien)
●チャック・ギャビン(Chuck Gavin)
●スコット・マスターソン(Scott Masterson)
——に起因するからで、
さしずめ初代ウルトラマンを、海外で他のウルトラマンと区別するため、
ウルトラマンハヤタ
と呼んだり、
中国ではウルトラマン「早田」の誤植で、
超人吉田(ウルトラマンヨシダ)
になってしまってるのと同じ事。

↓ホントにウルトラマンヨシダがいたら、
yosida
↑顔にブツブツがあることでしょう。


だから、ベス、チャック、スコットの姿が、
アミア、エレク、ロトに似ているのは偶然ではなく、
当初からそのように意図されていたわけ。

証拠の一つに、
ハンナ・バーベラ側からは、
「ウルトラマンにマントをつける」提案があったというが、

当初ハンナ・バーベラ側から提示されたデザインでは、ウルトラマンがマントを付けていた。これは、アメリカでは「マントも付けずに空を飛ぶヒーロー」という概念が理解できなかったからだと言われている。(←違うと思います)日米間で何度も打ち合わせを続け、ようやく決定稿のデザインに落ち着いたという。

これはアミアのデザインをそのまま使えという、
dokoga
おそらくはシーガルの提案のことを指すのであろう。

こうして、
ジェフ・シーガルが、「ザ☆」と「USA」を関連づけた意図を斜め読みして、
「アメリカの英語版アニメでは、ウルトラマンの出身星はアルタラらしい」
と、アホな日本人の誰かが混同した挙げ句、
「USA」3戦士の出身星まで、惑星アルタラにされてしまった
……みたいだが、
そもそも「アルタラ」とは、なんのこと?

綴りはULTARAで、
ULTARAN(アルタラン)の故郷の意味。

日本ではULTRAは「ウルトラ」だが、英語読みでは「アルトラ/アルットゥラ」

「究極の」のULTIMATEを、むかしは「ウルティメート」とカナ表記だったのが、



近年は、
アルティメート

アルティメイト

アルティメット
と、より原音に近い表記に変わって来たように、

アルティメート・プッチーニ・オペラ・アルバム
V.A.
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ULTARAN(アルタラン)とは、「ウルトラ人」
ULTARA(アルタラ)とは、「ウルトラ人の星=ウルトラの星」
を指しているに過ぎない。

ちなみに最新映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』(2015)
(Avengers: Age of Ultron)の
ULTRONは、単独なら「アルトロン」なのに、
このタイトルだと「ウルトロン」が適切らしく、英語って一貫性がなくて、
ほんとにわからんよ。


M78星雲の「光の国」は、
「タロウ」(1973)から「ウルトラの星」と呼び替えられたが、
なんのことはない、「惑星アルタラ」というのは、
まさにその「ウルトラの星」と同義だったのである。

だから「ウルトラ銀河伝説」(2009)で、
ぶんじょう
ベス、チャック、スコットの3人は、
光の国=ウルトラの星の住人として描かれているわけです。
(※いや、そこまで理解して出演させたかはアヤシイが…)

もっとも、あくまでもアニメ「ザ☆」作品世界においては、
怪獣の方は
●バルタン星人
anibaru
●レッドキング
れっど
●アボラス
●バニラ

●アーストロン
●ゴーストロン
●ゴキネズラ
——と、7体もが実写版と共通なのに、
M78星雲、光の国のウルトラマンは地球を訪れておらず、
本作における「ウルトラの星」は、U40と同義だから、
ゆゆ
そこらへんの経緯やしがらみのない英語版で、
U40を、単にアルタラ=ウルトラの星としたシーガルの判断と選択は適切なんだが、

一体誰だよ!
「USA」の3人の出身星が惑星アルタラだなんて、
中途半端な英語力と理解力でこじつけたヤツは?


ここまで読んでもらいながら、
何も得るところがないのもなんなんで、

ウルトラウーマンベスの英語本名は、
あーにゃ
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ウルトラマンチャックの英語本名は、
もろい
ルトラマンモーロ

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ウルトラマンスコットの英語本名は、
jero
ルトラマンジェロ

ポロポロ
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——かもしれないというムダ知識だけでも、覚えて帰って下さい