だが今回は、こっち(ギンガ、ギンガ、ギンガ」・後編/蒼きヤマトへの憧憬・68)の話の続きで、
小沢さとるの宇宙戦艦ヤマト・ワンダーと、
松本零士の宇宙戦艦ヤマトの比較。
そもそも松本氏は、小沢氏の代役だったことを知っていたのか?
西崎氏から打診があった時、その件が出ていなければ、知らなかったのではないかと思う。
次に、松本氏は小沢氏のデザインを見たのか?
これも見ていないと思われる。
実際に小沢版ヤマト(ワンダー)を目にしたのは、西崎氏と、同行したスタジオぬえの宮武一貫氏の二人だけ。
見ていない証拠に、
松本ヤマトは、小沢ヤマトの影響を受けていない。
松本ヤマトは、当初より一貫して、
一点消失図法で、艦首から艦尾までが1枚の絵に収まっている。
↑最下段の「冒険王」連載時のカラー扉絵だけ、若干趣が異なるのは、本稿の下の方に掲載したアニメ用画稿を元画にしているため。
やがて小沢ヤマトに感化された、ぬえヤマトの強制パース図、
艦体の一番太った部分にさえぎられ、独特のアングルもあって艦尾が見えないスタイルがアニメ版ヤマトの定番になり、
松本ヤマトも感化されるわけだが、
これがなかなかどうして、あまり手際が良いとは言えない。
↓テレビ初放映当時の、1974年の「冒険王」連載マンガと、「小学五年生」連載の絵物語で、松本零士が描いた、まだスタイルの固まっていないヤマトたち。
絵物語は、「こんなマンガがあったのか!―名作マンガの知られざる続編・外伝」に再録されている。
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結局松本零士版ヤマトは、40年を経た今この時に至るまで、
よく言えば「味がある」が、
あからさまに言ってしまえば、図形的にはグニャグニャに歪みまくりの、
ぬえヤマトとも、アニメヤマトとも別物にとどまっている。
ただし、正確に形状を描ける画力と、デザインセンスは別物なので、
たとえ小沢ヤマトが図形的にはCGに匹敵する正確さでも、
それがアニメーターの技量を左右するわけではなく、
「マジンガーZ」(1972)以前の1966年という成立年代は驚異的ながら、
そのデザインは、あまりにも玩具チック。
後年に小沢氏が、ロボダッチシリーズのデザインを担当したのもうなずける。
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一方で松本ヤマトは、たとえ全体形はグニャグニャ変形しまくりでも、
細部に至るまでセンスの塊。
まとめと清書は、
↓スタジオぬえがやってくれたし、
↑本編の絵柄は、アニメーターの力量に任せられたから、
松本氏自身が、必ずしも写実的描写力を兼ね備えている必要はなかった。
というよりも、独特のクネクネ感やグニャグニャ感、空間の歪ませ方こそが、
松本零士の画風であり魅力なんだから、そこをどうこう言ったって仕方ない。
次回も、松本ヤマトについての話です。