楕円の瞳/訃報・荒木伸吾〈その1〉 | アディクトリポート

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昨日、内山まもる先生の訃報について、

(以下転載)
「ザ・ウルトラマン」…漫画家の内山まもる氏死去

 内山 まもる氏(うちやま・まもる=漫画家、本名守=まもる)1日朝、自宅の寝室で亡くなっているのを家族が見つけた。千葉県内の自宅で死去、62歳。茨城県出身。葬儀・告別式は5日午前10時から千葉県市原市南国分寺台1の1の4、ライフケア市原会堂で。喪主は長男匠(たくみ)氏。

 代表作に「ザ・ウルトラマン」「リトル巨人くん」など。


書いている最中にも、Twitterで情報が行き交っていたが、
アニメーターの荒木伸吾氏も、同じ1日に亡くなられていた

アニメ監督の荒木伸吾氏死去…「ベルばら」など手がける

 荒木 伸吾氏(あらき・しんご=アニメーション監督)1日午前1時21分、急性循環不全のため東京都板橋区の病院で死去、72歳。名古屋市出身。葬儀・告別式は近親者のみで行う。喪主は妻博子(ひろこ)さん。後日、お別れの会を開く予定。

 テレビアニメ「ベルサイユのばら」「聖闘士星矢」など、多くの作品の作画監督やキャラクターデザインを手掛けた。


荒木伸吾氏は、「何人かの一人=その他大勢」のアニメーターからその経歴を始めながら、
次第に独自の作風をきわめていった、名アニメーター、名作画監督だが、どちらかというと男性ファンよりも,女性ファンを多く獲得されたように思われる。

言葉を換えると、その柔らかく繊細な画調と作風が、男性アニメファンにアピールするより、明らかに少女漫画に重なる世界を構築していたからで、だからガチガチの「野郎=男」の自分には、いろいろな作品に接しながらも、ビミョーに傾倒しきれない部分があって、だけどそれは荒木氏の独自性にもなっていたので、それはそれで一つの道を究めたのだから、正解だったんだろうと思っている。

虫プロ出身で出世作は『巨人の星』(1968~71)で、花形満が大リーグボール1号を渾身の力で打つシーン。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-がた

楠部大吉郎作画監督の、今から見れば堅苦しく泥臭い絵柄のシリーズ中、大胆で新鮮な手法は、初放映時から、「これは今までとまるで違うぞ」と子どもの目(たしか7歳か8歳)にも明らかだった。
川崎のぼるの原作漫画版では、同じシーンは全然別の(さほど印象に残らない)描き方をされてたから、ここでようやく、アニメ「巨人の星」の独自性が発揮されたとも言える気がする。

次が荒木氏が以前に所属していた虫プロの「あしたのジョー」(1970~71)で、杉野昭夫、金山明博との3人共同で作画監督を務めた。

3人とも画力が達者なこともあり、ぱっと見、誰の作画か見分けがつかなかった。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-raki
瞳が縦長楕円なので、荒木伸吾の画だとは思いますが、確証はありません。

当時としては人一倍モダンで、かわいらしく人好きのする主人公キャラが描けるので、
同じ70年の「魔法のマコちゃん」等で、東映動画にも参加。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-他
やはり縦長楕円の瞳なので、荒木伸吾の画だと推測。

魔女っ子路線では,荒木氏の初期の作風が完全に確立して炸裂しまくりの、1974年の『魔女っ子メグちゃん』で、一つの頂点を極めたと思う。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-hutari
絵に描いたような(実際、描いているんですが・笑)縦長楕円の瞳の主人公、メグ(左)と、後世に担当する松本零士の美女キャラを予感させる,ライバルのノン(右)。

東映動画作品では「バビル2世」(1973)で横山光輝キャラを、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-びるる
↓横山光輝の主役キャラは、原作(左)からして「縦長楕円の瞳」だが----
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-いかにもの

同年に『キューティーハニー』では永井豪キャラを、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-ががが
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-はにー
↓永井豪の女性主役キャラは、原作では丸い(真円の)瞳の時も多い。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-だんがーど
(赤い短髪では真円、黄色い長髪だと縦長楕円が多い)

アニメ向けにデザインし直し、
原作漫画とは画調がビミョーに異なる、東映動画的変換の手本(有名漫画タイトルがアニメ化される時の画調が、なんとなく予想できる)を示した。

永井豪作品では、『マジンガーZ』(1972~74)以来、泥臭い画調の作画陣(森下圭介とか)が主流だった巨大ロボット路線に、『UFOロボ グレンダイザー』(1975)の5話から参加して、主に後半のキャラクターデザインを担当。(前半は小松原一男)
デューク・フリードの妹の新キャラ、マリアや、
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-hatutoujouji
初登場時のマリアは、まだ縦長楕円の瞳。
↓小松原キャラをまねても、荒木伸吾が描くと頭身が若干上がる。
作家集団Addictoe オフィシャルブログ-aniki
↓荒木伸吾の作画であることをさりげなく示すゲストキャラたち。
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-げすと
↑木の右側に「キューティーハニー」の早見青児。


ヒロインの牧場ひかるのスタイルを刷新して、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-かるる
↑同じコスチューム、同じキャラでも,描き手によってまるで別人。
左は小松原一男かも(断定しきれず)
右は間違いなく荒木伸吾(もしくは姫野美智)。

新風を吹き込む。

で、このグレンダイザーから、これまでかたくなに楕円の瞳を描いていた荒木キャラの瞳が、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-しんえん
まん丸に変化するのだが、これは姫野美智が新たに作画に加わったため。

というわけで、荒木キャラの瞳が楕円から真円に変化したところまでで、時間になったので、この話はつづく。

ちなみに主役キャラの「縦長楕円の瞳」の伝統は、
$作家集団Addictoe オフィシャルブログ-う゛ぁ
「エヴァ」(1995)に引き継がれたんじゃないかと、個人的には勝手に見込んでいます。