気がつくまでに、32年もかかってしまいました。
『THE ORIGIN』完結に思う
のおまけの二つ目は、安彦ザクについて。
大河原ザクは、テレビファーストシリーズから「オリジン」までに、けっこう変わっているが、
↑1979年の元祖デザイン(左)は、模型(MGシリーズ)のデザインの際のものを流用して、『第08MS小隊』(1996~99)でリニューアル(右)。
↓『ジ・オリジン』版のザクの設定画も、基本プロポーションはリニューアル版に準じたもの。
安彦ザクは、細部はともかく、基本プロポーションは、ほとんど変わっていない。
↑テレビ第1話より。
↓『ジ・オリジン』の最終回より、ザク登場の最後の数コマから。
ということをふまえて、
↓これを見ていただきましょう。
ドムの(アニメファーストガンダム用の)設定画ですが、それが何か?
これは
↓大河原邦男の設定画が細身過ぎたので、
安彦良和が描き直したことはよく知られているが、
通説になっている、
「ジオンのモビルスーツは、ドムから太めになった」というのは本当だろうか?
そもそもなんで、大河原氏は、今の目で見ると「細すぎだろ!」としか思えないドムのデザインを、しゃあしゃあと(失礼)納品したのか。
だが氏としては、あくまでもこれまでどおりにデザインを提供しただけで、
↓左から劇中登場順に、量産型ザク、シャア専用ザク、旧型ザク、グフ、ドム。
↓側面図
↓背面図
「なんで今回だけ直されるの?」という気持ちだったと思う。
一方の安彦良和だって、ある意味で絶句。
「この期に及んで、まだこんなプロポーションで描いてくるかね」
と呆れたのが本音だったと思う。
つまり
↓これは、
「ドムからはこういうプロポーションに変更します」
ではなく、
「オレは前から、ジオンのモビルスーツは、このプロポーションで描いてるよ」
ということを、安彦氏がさりげなく示唆したわけである。
これに気がついてからなるほど、TVアニメ版を見返してみると、
シャア専用ザクだって、
↓劇場用ガンダム用に描き直されたもの。
旧ザクだって、
↓旧ザク独特の攻撃ポーズ(上)は、『ジ オリジン』にも引き継がれている(下)。
グフだって、
↑グフだけ、なぜか設定画通りの劇中の印象なのは、初登場時の作画監督が中村一夫だったため。
↓安彦プロポーションを告げられていない中村は、設定画に忠実なグフを描いた。
↓こちらが安彦グフ。ザク同様にずんぐりしている。
↓『劇場版Ⅱ/哀・戦士』のために安彦氏が描き足したもの。
↑ザク共々、かたくななまでに、ずんぐり体型。
みんな見事にそろって、ずんぐり力士体型!
だったらなんで、安彦氏はドムに至るまで、大河原氏にダメ出ししなかったのかといえば、
安彦氏ご自身が、人と口論するのを嫌う温和な性格だったうえに、
作画監督という立場から、気に入らないなら、気に入るように自分で描き直せばいいだけのことだったからだ。
すでに主役のガンダムを自分流に描き直していたこともあり、
↑こりゃ当然、描き直すわな。ちなみに配色案も安彦氏による。
ザクの方まで直したら、
あまりにワンマンが過ぎると思われるのも、いやだったんではないか。
とはいえ、それを心得ていたのは安彦氏本人だけで、他の作画監督は知らされていない。
グフはデザインが勇ましかったから、まだいい(=サマになった)けど、
↑中村一夫作画監督の回のガンダム対グフの画。
↓安彦良和作画監督の回の対決の図。
「大河原設定画のとおりに描くと、こうなってしまう」という悪しき例となってしまった。
そんなこんなで、もしも設定資料のザクを、安彦良和がドムのプロポーションで描き直したら、どうなるか、2枚ほど描いてみた。
あれ~、これって……
どっかで見たような気が……。
ボルジャーノンじゃん!
劇中に登場するザクは大河原ザクではなく、安彦ザクだと気づいていた人は、私だけではなく、1999年には、アニメ製作スタッフにいたというわけですね。
今日の大発見、いかがでしたか?
えっ、そんなのとっくに知ってた?
おみそれしました。弟子にしてください。