『ハンディキャップヒーローズ』発売に寄せて | アディクトリポート

アディクトリポート

真実をリポート Addictoe Report

『ハンディキャップヒーローズ』の第一部ブログ公開が終わりました。
作者の武田想土です。

今回は、本書を書くに至った動機を述べたいと思います。

本作の一つ前に、環境問題をふくんだ小説を書いたのですが、結局そこで提示した環境問題には、根本的な解決策を示せずに、結末を迎えてしまいました。

そうすると、環境問題の犠牲になっている被害者の方々には、失礼な作品になってしまうのかなと感じました。

そこで今度は、最初に中心課題に取り上げた問題に、きちんと解答を示す作品を書くべきだと気がつきました。

ついでと言っては何ですが、社会問題を作品に含めるのなら、何かしらの折に触れて、自分が強く憂慮している事柄についても内容に含め、自分の考えを述べるべきだと考えました。

そこで具体的に取り上げることにしたのは、
*身体障害者の社会参加
*画期的なテクノロジー導入による社会の変化
*北朝鮮の拉致被害者
*オウム真理教に代表されるカルト教団
といったところです。

それぞれに該当者がおられる事柄ですから、軽々に扱うべきではないので、それは慎重に考えを重ねて、私なりの精一杯の解答を作品に込めました。

一つの意見を世間に公表すれば、必ず相対する二つの意見を受け取ることになります。
一つは好意的なもの、支持や共感であり、もう一つは敵意的なもの、拒否や反発です。

私も自作を公表する流れの中で、両方を受け取ることになりました。
どちらも糧になりますので、ありがたく謙虚に受け止めますし、完全無視されるよりは喜ばしいのですが、そもそも持論展開のために小説を書いたわけですから、出発点から完全に反対方向に歩み出している、拒絶や反発の意見との一致を見ることはありえません。

メディアのとらえ方も人ざまざまなので、映画や小説に対する概念もまた様々で、どうも私の作品への反発は、フィクションが扱うべき領域を越えている、というものらしいことがわかってきました。

では例を挙げますが、どちらが良い小説だと思いますか?
A 社会問題を扱いながら,小説の作品世界の論理や仕組みが優先して、実社会の枠組みやルールが軽んじられたり、無視される。
B あつかった社会問題について、仕組みや決まりは,小説内でも実社会でも違いはない。そのため、作品内での結論や解答は、実社会にも効力がある。

私は当然、Bだと感じていますが、それはフィクションで扱うべきではなく、ノンフィクションやドキュメンタリーでやるべきだとか、小説ではなく哲学書でやるべきだと感じている人も多いようです。

ノンフィクション作家のどなたかが、「作家は脳に汗をかいて書け」、つまり精一杯頭を使って、考えに考え抜いて書けと提唱されましたが、同じことはフィクションにも通じると思います。

世直しの提案をしたいなら、作家にならずに政治家になれ、と言うご意見もいただきましたが、現在の政治が、ほとんど社会的解決力を持ち得ない現状からして、反対に政治家にならない方が世直し提案はよほど可能だと思うし、フィクションの小説にその力を持たせることもまた、じゅうぶんに可能だと考えています。

私は前職を退いてから数年間、様々な試みをしましたが、小説を書く以外のことは、どれもあきらめてやめてしまいました。
それなのに、どうして度重なる却下や拒絶、反発、無理解をくらいながらも、書くことを辞めないのか?
自分でも見失っていた時期がありました。

『ハンディキャップヒーローズ』は、身体障害者が健常者を凌駕する身体能力=スーパーパワーを持つことと、それにまつわる物語です。
骨子は書き始めから決まっていましたが、結末は書きながら、次第に決めて行きました。

クライマックスについてひらめいたのは、つまらない映画を映画館で観ていた時でした。
映画はつまらなかったのに、感動して泣いてたのを覚えています。

その時、なぜ小説を書くことをやめないのかにも気づきました。
読者に伝えたい物語があるからです。

この数年のうちに知り合いで亡くなられる方が多く、なぜ自分はどん底まで落ちたのに、死なないのかが不思議でした。
しかし、この悟り以降、伝えたい物語を伝えきるまで、自分の命を取り上げられることはないのだろうと確信するようになりました。

だからあきらめないし、あなたの目に触れるまで、そのための働きかけをやめたりはしないのです。

作品は自分の子供だし、命をかけて産んだ親には、育てる責任が生じるからです。

『ハンディキャップヒーローズ』は、2006年から2008年の物語で、この年代設定は動かせません。

それなのに、他人任せの姿勢で、読者へのお届けを2年も遅らせてしまいました。

msumit416*mac.com
(*を@に置き換えて)
への件名「問い合わせ」の空メールが、あなたと私の作品の幸運な出会いであればと、心から願っています。


人気ブログランキングへ