ダルシム日記 「サガット」 初日 前編 | ダルシム使いのダルシムブログ

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ダルシム日記 「サガット」 初日 前編
注)これはダルシムが書いている日記です。キャラ対とは関係ありません。






森林公園の一角にあるイベント広場、そこのステージに私ことダルシムは立っていた。
目が覚めるほど鮮やかな晴天。穏やかな気持ちにさせる緑の木々たち。
イベント台から見下ろすと、そこには数十人の子供たちが体育座りをして待ち構えていた。


「それではお待たせいたしました……ストリートファイターになってみようのコーナー!」


司会者の声とともに子供たちが期待と歓喜の声をあげる。
ふむ、かわいい子供たちだ。ゆっくりヨガの道を教えてやりたいところだが……今日は余計な奴もひとり呼ばれている。私の横にいるサガットだ。
偉そうに腕を組みながら、仁王立ちするサガット。ダルシムとサガット、この二人がステージ上に肩を並べていた。


「今日は強いハゲと弱いハゲの方に来ていただきました。
 自己紹介タイムです、まずは帝王サガット様どうぞ!」


司会者に軽くディスられながら、サガットが一歩前に進み出る。
さぁ、弱いハゲよ。子供たちの心をつかむことができるかな?
私が余裕の表情で見ていると……。


「ふっふっふっ……タイガーアパカッ!」



ダルシム使いのダルシムブログ-アパカ


サガットの奴、いきなりアパカをぶっ放しやがった。しかもEX。


「うわーすごい飛んでる!」
「なんか光ってる!」
「すんげ、すんげ!」


ガキどもはなんかよくわからん言葉と汁をたらして狂喜乱舞している。
サガットの野郎が調子こいてアパカ連発してるので、見えないようにズームキックで撃墜してやったら鬼の形相でにらまれた。
「アングリーチャージ……」とかつぶやいてんの。こえぇ。
客席に聞こえないぐらいの声量で「まじすんませんヨガ……」と返答しておいた。


「続いてヨガの使者、ダルシム!」


きたー、私の番だ。
さぁなにをするか、腕を伸ばすか? テレポしてみるか?
いやここは意表をついて……これだ!


「ヨガタワー! はい、ヨガァ~」
(片足だけで立ち、投げ技や飛び道具を回避するダルシム様の特殊技)


ダルシム使いのダルシムブログ-タワー


フラミンゴのように足を突き出し、ポーズを決める私。
決まった。完璧。会心の出来だ。携帯の待ち受け画面として画像を配布したいぐらいだ。
だが私の思いとは裏腹に、子供・親御さん・司会者は全員「えっ? それで?」的な表情をしていた。
なにこの気まずい空気。一瞬、ファミレスで皆がパスタ頼んでいるのに私だけトンカツ定食を頼んだ過去が蘇ってしまった。


「ダルシム空気読めよ……」


おい司会者、マイク入ってるぞお前。心の声は聞こえないようにつぶやけ。
完全にスベった……ならばここはこれしかない!

「うおおお、ヨガブラストォ!」


ダルシム使いのダルシムブログ-ブラスト


決まった、完璧。
上空に高々と炎を吹く私。神秘的ですらある。
驚いた子供たちの声が、ステージに届いてくるぞ……。


「うわ、なんか黄ばんでる……」
「なんか臭くない……?」


えっ、なにこの反応。
サガットの時と違いすぎるだろう。
臭いってのは、炎で焦げ臭いってことだろう?
なのに子供や親御さんたちからは、


「こいつ風呂入ったのいつだよ……」
「もうビザ切れてんだろ? 帰れよ」


的な偏見に満ちた視線が突き刺さってくる。


「いやいや、この焦げ臭いのは体臭ではないぞ?」


私が弁解した途端、会場の苦笑い率が上昇。完全に敵地の反応だ。
とそのとき、客席の一角から男の子の声があがった。


「うっそだぁ~、おじさんがくさいんでしょう?」


声を上げた子は、半袖に半ズボン。クラスのお調子者、といった感じの少年だ。
これは良い、この子を逆に活かして危機を脱するチャンスだ。


「そんなことはないぞ、なんなら臭いをかいでみるか?」
「え~、くっさそぉ~」


少年は大げさに鼻をつまみながら、手を振り振りしている。
その仕草に周りの子供たちも若干笑い出し、会場の空気が和やかになってきていた。
いいぞ、その調子だ。これで実際にかがせて「やっぱくっせぇ~」と言われても、私の軽快なツッコミで笑いに持っていける。


「嘘だと思うならかいでみろ、さぁさぁ」
「よ~しわかったよ、たしかめてやる!」


少年は笑いながらステージに駆け上がると、私の近くに来て、豚みたいに鼻をすんすんさせてきた。


「どうだ? 臭くないだろう?」


尋ねると、さっきまで元気だった少年の表情には影が落ちていた。


「ほんとだ、くさくないね……はは……」


少年はぎこちない笑みを浮かべると、なにかを我慢するように口を両手で押さえた。慌てた司会者が少年の手を引き、ステージの裏に連れて行く。


「えっ、ちょ、おい……」


会場が軽くざわめく。
なにこれ、私が想定していた状況と違う。
それから数分後。司会者は戻ってくると、マイクのスイッチを入れた。


「えー……ヒロシ君は体調が悪くなったので早退しました」


えっ。