前回の記事「手縫い2」において胃管再建の縫合手術で手縫いよりも縫合機の方が優れていて詰まるのは手縫いのせいだ、とも取れるような記述がありました。
永らく食道がんなどの手術をしてきた医師の書いた本を読む機会がありました。それによると、胸部食道がんの手術では胸部食道を切りとり胃を引っ張り上げて頸部食道につなぎます。
かつてはこのつなぐところをきれいに縫い合わせるところが外科医の腕の見せどころだったそうです。
だった、というのは縫合機の性能が格段に進歩したのでどんなゴットハンドの手縫いよりも縫合機のほうがきれいにできるようになったからだ、ということのようです。
それを読んで私のつなぎ目がよく詰まるのは手縫いのせいなんじゃないの?あのときの執刀医のドヤ顔がちらりと浮かんできます。
もちろんそんな事はありません。単なる私の軽口です。このことについては、当時の主治医に聞いたことがあります。
主治医によると、切った胃を引っ張り上げて頸部食道につなげるときには、手術例のイラストなんかではまっすぐ持ち上げてつなげたようになっていますが、これはわかりやすくするためで実際は螺旋状に捻っているので詰まりやすいということでした。
実際、私もつなぎ目は首の下の真ん中ではなく左鎖骨の上にあります。
私自身、今まで縫合が手縫いか機械かなんて意識したことはありません。
あの番組の上位入賞者の達成感に満ちたドヤ顔を見て、自分の手術の説明のときに執刀医も「私は手縫いなんです」とちょっとドヤ顔になっていたな、と思い出した次第です。
この本を書いた医師も自分の技術なんてそれほどのものではないよ、との謙遜も入っているのでしょう。この医師が言いたかったことは、手縫いか機械かということではないように思います。
現在のがん治療はガイドラインに沿って行われているので、食道がんの手術が行われるようながん拠点病院なら全国どこでも同じレベルの治療が受けられる。
特別な治療を求めて有名な医師や病院に行かなくても大丈夫だ。ゴットハンドでなくても心配いらない、ということを伝えたかったように記憶しています。
この番組のようにゴットハンドとして取り上げられるのは、もっぱら脳神経外科医と心臓外科医で消化器系ではあまり聞きません。ちょっと自慢したい気持ちもわかります。
「縫合機の動画観たけど最近の医療機器の進歩はすごいよね」といった反応を予想していました。ところが「私の手術による不具合は手縫いのせいなの?」とも取れるような反応が返ってきて、私の書き方が悪かったかなと反省しています。
治療法などを書くときには慎重にならなければと反省しています。不愉快な気持ちになられた方には心からお詫び申し上げます。
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