写真は5月25日の毎日新聞の記事です。

 

 

中川先生というのは、がん治療専門医で、東大病院で放射線治療を35年にわたり臨床の現場に立って働いている中川恵一医師のことです。

私の住む福島県には、放射線の専門家として2011年の原発事故の後に度々訪れて、放射線と健康への影響についてアドバイスしてくれている馴染みのある先生です。

この記事では、2018年にご自分の膀胱がんを見つけたときのショックを話されています。「これは夢だろう」「何かの間違いだろう」と思ったそうですから私達が告知されたときに頭が真っ白になるというのも仕方ないことかもしれません。


2015年3月、私は食道がんを告知されました。近所のクリニックで食道がんの疑いがあると告げられて精密な検査を受けるために大きな病院を紹介されました。受診まで2日あったので図書館でがんに関する本を借りられるだけ借りてきました。その中の一冊が中川先生の著作でした。

この本にによると、外科の医師から手術をすすめられた際には、「ハイ、お願いします」と即答しないで「別な角度から検討したいので放射線医(できれば専門性の高い放射線腫瘍医)か抗がん剤の専門家の腫瘍内科医のセカンドオピニオンを受けてみたい」と応じた方がいい、とあったように思います。


先生によると、欧米では切らずに治す放射線治療が大きな役割を果たしているが、日本のがん治療の現場では、手術が主役の座にあり外科医が幅をきかしていて自分のような放射線医は小さくなっているそうです。

特に食道がんのような扁平上皮がんには放射線治療は効果があるそうで放射線を当てる前と当てた後の食道がんの写真が載っていました。この写真を見ると放射線を当てた後は食道にあった大きながんが消滅していました。

この時の私は、「オレががんのワケがない」「ちゃんと検査すれば良性だとわかるはずだ」「万が一がんだとしても早期だろう、大掛かりな手術など不要なはずだ」という心境だったので中川先生の意見に大いに関心を持ちました。



紹介された病院でレントゲン、胃カメラ、CTとひと通りの検査を済ませ、食道がんであることを告知され手術を勧められました。

「おっ、やっぱり外科医はそうきたか。ここで即答しちゃいけないんだよな」中川先生の教え通りの答えをしてセカンドオピニオンを要求しました。

私の中では、外科医は「了解しました。納得できるように放射線と内科の専門家の意見も聞いてみられるのもいいでしょう」と紹介状を書いてくれる、というシナリオが頭にありました。

ところが現実は全く違った展開になりました。

「セカンドオピニオンですか?」

「もんどさん、さっき胃カメラの検査をしましたよね。実はこの時にカメラに血がついてきたんですよ」

「エッ」

「私も長いこと食道がんの専門医をやっていますが胃カメラに血がついてくるというようなことはそうそうないんですよ」

「ハア・・・」

「いいですか、胃カメラに血がついてくるということはもんどさんの食道の壁はがんに食い荒らされてズブズブな状態だということです。がん細胞が食道の壁を食い破って食道の外に飛び出してくる寸前の状態なんです。確定的なことは言えませんがリンパ節への転移の可能性もあります。セカンドオピニオンだなんて悠長なことを言ってられる場合じゃないんです」

 

(下の写真はバリウムを飲んだレントゲン写真です。白い部分にバリウムがはいってます。上から下がってきたバリウムが途中から食道がんで詰まっています)




それまでの穏やかな説明から一転、テーブルをバンバン叩かんばかりの迫力に私もカミさんも気圧されて、事の重大さをやっと実感した瞬間でした。

後日、この主治医の強硬な態度の意味することがわかることがありました。

入院してからすべての検査を終えて、あとは手術を待つばかりというときに主治医から心臓の再検査をするように指示されました。がんが肥大して心臓を圧迫している、心臓が手術に耐えられないかもしれない、という理由でした。

再検査を済ませて循環器科の診察室に入ってみると医師が腕組みしてモニターを凝視していました。しばし無言で重苦しい空気が流れました。

今でもこの時のことを思い出しては冷や汗が流れます。手術できるギリギリのタイミングだったんですね。

主治医も命がけで告知してくれたと今では心からこの時の対応を感謝しています。

中川先生のアドバイスは次の機会があれば(ないことを祈ってますが)ぜひ試してみます。

 

 

 

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