じかんざぶとん⑥
樫の木おばさんのツリーハウスは、
扉をあけると小さくこんもりした腰掛けつきの芝生の玄関があって、低めの段をあがると、あたたかな木床の部屋が広がっていました。
床の木目の曲線はまるで生きているみたいで、
板目のラインと深色をした節のあるところをあわせて、ときちゃんはそれらをいろんないきものにみたてては、
あそこはラクダ!
そこの柱のそばに見えるのは、なんだか空を飛ぶいきものみたいだわ!など、そのいきものに名前をつけたりして遊びます。
ラクダの名前はバリー、
空飛ぶいきものの名前はシャスタ、というように…
ツリーハウスを支える柱は3本、
枝が伸びている柱もあって、その枝にはどんぐりの実がたくさんなっていました。
ベッドルームやリビング、キッチンは家具で仕切られ、部屋全体が見渡せて外から見るよりも広く感じ、
コンパクトに全てがそろっている空間は、居心地のよい秘密基地のようで、ときちゃんはいつ来てもワクワクがとまりません。
そしてリビングとキッチンを仕切るタンスは、縦にうねうねしたちょっと変わったカタチをして、床の板目の曲線に沿ってスキマから飛び出してきたようで、引き出しを開けると中には、柱の小枝にひっかける飾りや小物なんかが収納してありました。
木の実や葉っぱのモビール、木の薄皮でつくったリボン、おばさんのお手製の小さな木のランプたち…
どんぐりの季節が終わったら何を飾るのかしら…?
ときちゃんが思い巡らせているあいだ、
キッチンでは、樫の木おばさんが朝ごはんの準備にとりかかっていて、卵を2つ割りほぐし、ミルクと混ぜてパンを浸してフレンチトーストをつくっていて、
菜の花からしぼった油をひいてジュジューッ!とフライパンでじっくり…、しばらくするとフライパンとトーストの間で油の泡がプツプツジュワジュワ踊り、ひっくりかえすとキツネ色に焼き目がついて黄色い甘い香りがふんわりと部屋中に漂ってきました…。
ときちゃんはそのにおいに両手を広げて、くるりと軽快に1回転してピタっと止まり、目をつぶって黄色い香りをスゥーっとかいでから、
「フレンチトーストだわ…、美味しそうな匂い!」
と、パタパタと樫の木おばさんの方へ駆け寄りお手伝い。
パレットのような変形した形の木のお皿に盛り付け、最後にハチミツとすぐりのジャムをかけて完成!
「ときちゃん、美味しそうに盛りつけてくれたね。ついでに牛乳をあたためてくれないかい?」とお願いし、
それから彼女は牛乳をあたため、手際よくお皿をテーブルまで運んで、フォークやナイフを並べます。
ポットの敷物は、家具のあまった木片を繋ぎ合わせてつくったものだそう。
彼女は樫の木おばさんの家で飲み物をを入れるポットには、必ずこの敷物を選びます。
色や形、木目の違う木片が、ぎゅっと一つに集まって、パズルみたいにはめ込まれてユニークで美しくて、ときちゃんのお気に入りなんですよ。
樫の木おばさんの家は、いろんなものが工夫されていて、どれも素敵で心地がいい。
テーブルは東南の、すこし張りだした窓際のそばにあって、太陽のひかりがサンサンと降り注いでいます…
ふと、ときちゃんは、この窓は朝は少しだけ東寄りに、昼間も少し南寄りに移動するような魔法の図面と、そこにたくさんのひかりが描かれていたのを思い出しました。
「おばさんの思い描いたとおりの家だわ…」
隣接した南側にはリビングがあり、丸いテーブルに、落ち葉がつめ込まれたふかふかのソファ、向かい側には天井から吊るしたおばさんの、新作ブランコチェアが風でゆらゆら浮いています…。
ときちゃんはトーストを切って、美味しそうにニコニコほおばり、2〜3切ほど食べてから、ようやく口を開きました。
「あのね、わたしもおばさんのように、お茶会をひらきたいんです。美味しいご飯を用意して、みんなをお招きして楽しい時間を過ごしたくて…、外に置けるようなテーブルや椅子をつくりたいと思っていて、それから…、ハリネズミの赤ちゃん達のために…」
少しボンヤリ考えながら、何気にリビングに目をむけると、
「そうよ、そうなの!ブランコのような、ゆらゆらするベッドもつくりたいの。そうすればぺぺとピッパのお母さんも安心して参加できるでしょう?」
そうして、ナイフでトーストをカットして、すぐりのジャムをたっぷりつけてもう一口ほおばって食べてから、
「私もいろいろ考えて描いてみたの、おばさん、どうかしら?」
ミルクをゴクリと飲むと、ときちゃんがポケットから何枚か葉っぱに描いた家具のスケッチをパラパラだして、樫の木おばさんに手渡しました。(つづく…)
これまでのお話は、
blogテーマの「じかんざぶとん」
にまとめていきます。
あだちまり日和(一覧のページ)
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完成するまでコトバを何度も書き直したりするかもしれないので、それも含めて楽しんでくださいね。
①から⑥まで読んでみてください…
あなたのほっこりした時間になれるよう…
じかんざぶとん①
https://ameblo.jp/adachimari-days/entry-12843531688.html
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