皆様は「いくら見ていても飽きないもの」、まあ好きなものに置き換えても良いと思いますが、お持ちでしょうか?それは「ご主人の顔」と言うことができる方はすばらしいと思いますが、一般的にはペットとか風景、絵画、宝石類などでしょうか。このような質問は日ごろ受けることは少ないですよね。私は20年近く前、まだ独身だった頃にアメリカ人の女性にこの質問をされたことがあります。その時の答えが「それはあなたの顔」、だったらその後の人生も変わっていたかもしれませんが、とっさに言った答えは「アン・イール(うなぎ)」でした。その後のやり取りは「アン・イール??」「イエス!アイ ライク アン・イール ベリーマッチ」「??......」と続きます。もう少し聞きたい方のためにさらに続けますと「Why?」「ビコーズ、イッツ ラブリイ」「??...」。まあ、今から考えると状況としては最悪です。私がうなぎと言えばうな丼とか蒲焼などと取られるのですが、私の意味しているのは水槽の中にいる生きたうなぎのことです。うなぎは小さい頃から何度も飼育した経験があります。また川でもよく仕掛けをして捕まえました。小学生のころ夏休みの早朝に夜の間に仕掛けにかかったうなぎを見て興奮で手足が震えたのをよく覚えています。うなぎのどこが好きなんだと聞かれても「すべてが好き」と答える以外にありません。好きとはそうゆう無条件なものだと思います(次へつづく)。

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前号の続きです。胚の発育にとって最適である水の第1位に輝いた「名水(名蒸留水)」は四国の吉野川を源泉とする蒸留水でした。製造元はオロナミンCを作っている有名な製薬会社です。同じ蒸留水でも、これが他社のものを使用すると若干ではありますが胚発育が悪くなるので驚きです。思わず各会社に聞いて蒸留水の源泉を調べました。ところで、ではなぜ京大病院敷地内の地下水は質が悪くて日々の水質がまるで一定しないのかという疑問が生じます。この地下水は比叡山や北山から流れてくるものですから、伏流水となってからくみ上げられるまで時間的には短いはずで、汚染の機会も少ないと考えられます。結局、原因は分からないままで終わってしまいましたが、「病院地中に昔の変なものが埋まっている説」「上流にある理学部や工学部が汚染物質を垂れ流している説(関係者の方が読まれてたら申し訳ありません)」「比叡山の岩盤自体に変なものが含まれている説」等々、全く根拠の無い諸説が病院内のカンファレンスで飛び交いました。そういえば伏見や山崎あたりと違って、この京都市北部近辺に昔から造り酒屋が一軒もないのも不思議です。やはり昔の人は「きき水の名手」であり、比叡山や北山から流れてくる水は酒造りに良しとしなかったのでしょう。現在、日本国内で使用されている体外受精の培養液は残念ながらすべて外国製です。私たち日本の生殖医療研究者は過去に培養液開発競争に敗れてしまいました。私としては世界に誇れる日本の水で作った培養液で皆様の胚を培養できる日が来ることを今でも夢見ております。最後に一言、名蒸留水でコーヒーを入れたらさすがに美味くなかったです。

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先月の水の話からの続きです。私が京都大学の研究室配属になって与えられたテーマは、大雑把に申し上げますと「ヒトの体外受精の妊娠率を上げること」でした。会社でたとえますと「君の任務はわが社の業績を上げることだ」と言われているようなものです。今でこそ体外受精に使用する培養液や顕微授精に使用する精子注入針は市販されておりますが、その当時はすべて手作りでした。ですから良質の培養液や精子注入針を作ることができる施設は、そうでない施設よりも治療成績が良好でした。このため、いかに良い培養液を作成するかをめぐって内外の治療施設がしのぎを削っておりました。この培養液の作成に私も携わっておりましたが、ヒトの胚は非常にナイーブで少しでもうまく培養液が作成できないと、とたんに成績が落ちてしまいました。同じように作っているのになぜこんなに成績にばらつきがあるのか、すなわち培養液の質にばらつきがあるのか大変不思議でかなり悩みました。胚培養液は体外受精治療の基であり要であるからです。そこで出した結論は「きっと培養液に使用する水の日々の水質の変化が影響している」でした。ところが使用している水は京大病院敷地内の地下水をくみ上げ、これを二段蒸留をかけたもの(沸騰させて蒸留水を作り、その蒸留水をさらに沸騰させて蒸留水にしたもの)でした。常識的に考えても水の中の不純物はすべて除去されている筈ですが、試験的にこれを医療用で日常的に使っている注射用蒸留水に換えてみました。するとなんと成績が一定し、以前よりも治療成績が向上したのです。ちなみに同じ量の水の単価は注射用蒸留水の方が自家製二段蒸留水の100分の1近く安価でした(なにせコカコーラより安いですから)。もう一つ面白いことに数社の注射用蒸留水を比べてみたのですがそこでも治療成績に優劣の差が出るのです。それくらい胚は水質に敏感なのです。この違いは各製薬会社における蒸留水の作成過程の違いと言うよりも恐らく源泉の性質が影響しているだと思います。胚が逆に「名水?」を私たちに教えてくれたようなものです。どんな「きき水の名手」でも蒸留水の銘柄を当てることは不可能でしょう。では、胚にとっての第1位にみごと輝いた「名水(名蒸留水)」を発表したいと思います。長くなりましたのでこれは次回にしましょうか。

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