ようやく店じまいしている近くの土産物屋から電話をかけさせてもらって、修理工場と連絡がついた時は本当にホッとしました。何せ日曜日の夕方6時ごろですからね。
夕闇を催促しているような蜩の声のシャワーの中で、電話口での修理工場のおじさんの声が神様の声に聞こえました。

おじさん「今、クルマ動かないのね?」

中山「いや~。一応動きますけれど、低速で止まったり動いたり止まったり動いたりしてます。」

おじさん「??」「そんなん、聞いたことないなあ~」「車、大分古いの?」

中山「いや~。中古ですが買って間もないんですぅ~」

おじさん「とにかく、ここまで2キロ程だけど来れる?」

中山「ガタガタしながらなんとか行ってみます。」

そして、止まったり動いたりガタガタしながらようやく目的の修理工場へ着きました。 
ボンネットを開け、おじさんといっしょにエンジンの点火プラグの辺をのぞき込んだその時、おじさんが叫びました。

「危ない!」「手を持ってきちゃダメ!」

中山「はいぃ~!?」「??」

おじさん「こりゃ、すごいことになっとるな。」「見てみい。熱で点火プラグの配線が融けて断線しとる。」
「けれど、空中放電しながらなんとか点火プラグへ電流は伝わってるわ。」「こんなん見たことない。」

確かに断線した線の端と端の間を青白い稲妻のような電流が放電されているのが見えます。この空中放電で何とか電流が伝わりエンジンがガタガタと動いていたのです。まさに雷が落ちるのと同じです。

おじさん「この放電にさわったら間違いなく心臓止まるから。」「大体、このクルマ欠陥車やからもうドイツでは作られてないんや。」「エンジンがごつすぎてラジエターが冷やしきれないんや。」

中山「...」

おじさん「一応、配線取り換えといたけどまた熱で切れるかもしれん。」
「ええか!」

「放電に触れると心臓止まるで!」

中山「...」

その夜、極度の疲労と落胆の下、何とか大阪までたどり着きました。

そして次の日からです、

私が頼まれた産直バイトは一切断らず新たな車購入のため馬車馬のように働きはじめたのは。

先輩Dr「中山クン、そんな産直バイトしまくって身体大丈夫か?」 

中山「いや、何せ、命かかってるんで。」

先輩Dr「??」

と、このように熱で車の配線も融けることがあるんだということが分かり、なかなかクルマ屋さんでも経験できない経験ができたわけです。

実は、精子も車と同じで、精子が熱でやられるのも、その内部で断線が起こるからなんです。


精子の話(5)熱と精子 続く