グローバルヘルス戦略への批判

 

政府は2年前の令和4年5月24日に「グローバルヘルス戦略」を閣議決定し、管理表や工程表を作成しており、パンデミック条約も国際保健規則改正も、その戦略や工程のもとで進んでいます。

 

パンデミック条約や国際保健規則改正などに対する反対は、突き詰めれば、「グローバルヘルス戦略」の根本思想への批判にもつながります。


この戦略が形成された「グローバルヘルス戦略推進協議会」の議事録などをみますと、グローバルヘルス、つまり国際的な保健の連携強化が当然の前提で議論されており、明確な反対意見が見当たりません。

 

しかし、国際協調・国際貢献と称して、外国のルールに従い、外国に金を出し技術を出し人を出し続けることに、政府が何の疑いも持たなければ、失われる可能性があるのは日本の国益です。

 

「国際協調・国際貢献 ⇔ 日本の国益」

 

国益と国際協調貢献は、常に鋭い緊張関係にあります

ただただ、外国のルールに従い、外国に日本の金や技術や人を出し続けると、将来必ずどこかで、日本の国益と相反します。
 

・国内法を、外国のルールに合わせてしまう

・国内の財政や産業が苦しいのに、外国に資金や技術を提供する

 

といった弊害が起きるからです。

我が国の先人たちも、国益と国際協調のバランスをどう維持するかで苦心してきました。

 

日本の国益を守るという問題意識が、このグローバルヘルス戦略には見られません。

グローバルヘルスで得られる、日本の国益は何か、また、日本は国民のために、何を外国から守りぬくか、といった本当の戦略が必要です。

 

こうした問題意識のなさが、参考人の発言にも表れます(第8回の議事概要より)。

 

「パンデミック条約と国際保健規則に反対する議員連盟がもうできている」

「野党の一部の変わった議員の方が中心」

「うっかりすると大衆相手の戦いで負けるということになりかねない」

 

つまり、グローバルヘルスに反対する勢力を「変わった議員」「陰謀論」「大衆相手の戦い(に負ける)」という発想で位置付けてしまうのです。

 

主権を移譲する、ワクチンを強制する、そんな目立ったやり方は今回はしないかもしれません。しかし、WHOの権限強化・国際貢献と称して、今まで以上に、外国のルールに従わせ、外国に資金や技術を提供する、この動きを、守るべき国益を明確にせずに進めることは、批判すべきです。

 

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第5回 グローバルヘルス戦略推進協議会 議事次第 

 

第8回グローバルヘルス戦略推進協議会 令和5年11月28日(火) 議事概要 32頁以下

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/global_health/dai8/gijigaiyou.pdf

○稲場参考人(GII/IDI懇談会 グローバルヘルス市民社会ネットワーク代表 稲場 雅紀)

私は非常にびっくりしたのですが、この間、パンデミック条約と国際保健規則に反対する議員連盟がもうできているのです。野党さんが中心なのですが、野党さんと言っても野党の一部の変わった議員の方が中心なのですが、これはもうできていて、私は逆に野党のメインの先生方から、一体これはどうすればいいのだと、何とかしてください、パンデミック条約とは一体何でしょうかと質問を受けている立場でございまして、これはちゃんとやらなければいけないなと思っています。

ある種そういう意味合いにおいて、逆に様々な思いのある方々がいらっしゃる文脈の中で、大きな逆のうねりとして変な形でいろいろ出てくることを、きちんと情報を流すことによって防がなければいけないのです。実際、例えばインターネットでパンデミック条約と検索したら全部陰謀論ですから、この辺りに関して我々がどのように政府の側もそうですが、特にアカデミアの方とか、あるいはNGO、市民社会の側がちゃんとした説明を投げて、検索したら半々ぐらいにはなるようにしていかないと、来年5月ですから、その後批准しなければいけないとなると結構大変だと思います。
そういった意味合いで考えますと、どのようにまともな正しい情報、あるいはそれをアトラクティブな形で皆さんに理解させるような形で一般に投げていくのか、ここはデジタルの負の問題をどう克服するかという話は非常に大事だと思いますので、特にパンデミック条約の関係ではグローバルにこれに反対するという動きが非常に荒唐無稽な理由で出てきていますので、この辺りにどのように対抗言説をちゃんと投げて、まともなものが勝利するようにしていくか、この辺りをちゃんと考えていかないと、デジタル化の中でうっかりすると大衆相手の戦いで負けるということになりかねないので、これは市民社会としても政府と一体になってやれることですので、この辺りをぜひお願いしたいなと思っているところでございます。(略)

○赤堀外務省地球規模課題審議官 

ぜひ市民社会の方々、有識者の方々、専門家の方々から、パンデミック条約の陰謀論への反論をお願いできればと思いますし、国際保健の重要性についても発信していただければと思います。当省でも議員の方々に御説明しておりま
す。また、当省に多くの苦情の電話がかかってくるので、それにも応対しておりますが、ホームページを拡充しまして、事実関係を情報開示するようにしております。
また、11月6日の週にまさに交渉をやって、私も出ましたけれども、テドロス事務局長がわざわざ来て、パンデミック条約によって主権がWHOに移譲されるというようなことはあり得ないし、起きない、皆さんそれを発信してくださいと言っていまして、その演説もWHOのホームページに載っています。ただ、SNSでそういう拡散が起きると否定するのは難しいので、分かりやすい言葉で我々も発信していきたいと思います。強制的にワクチンを打たせるなどという条約はできません。