皇位継承の不文法理

 

皇位継承について、現在の皇室典範第1条は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する。」と定めています。

明治22年に制定された皇室典範第1条も「大日本国皇位は祖宗の皇統にして男系の男子之を継承す」と定めていました。

 

この皇統の男系男子が継承されるという決まりは、一時の考えでつくられたのではなく、日本の歴史をさかのぼって調べた上で、こうした法則(ルール)があることを確認したのです。
明治時代の皇室典範について、伊藤博文公は「皇室典範義解」(岩波文庫)で以下のように解説しています。

 

「皇位の継承は祖宗以来すでに明訓あり。和気清麻呂還奏の言に曰く、『わが国開闢より以来、君臣定まりぬ。臣を以て君となすことは未だこれあらず。天つ日嗣は必ず皇緒を立てよ』と。皇統は男系に限り女系の初出に及ばざるは皇家の成法なり。」

 

【大意】皇位継承についてはすでに明文の教えがある。奈良時代の和気清麻呂が奏上した神託によれば、「我が国では昔から君と臣の別が定まっている。臣を君とすることはない。皇位は必ず天皇の子孫を立てよ」と述べられており、皇統が男系であり女系がないのが我が国の皇位継承法である。(※皇緒は天皇の子孫という意味ですが、当然に男系子孫の意味で用いられています)

 

そのうえで、神功皇后が皇位に即かれなかった例、清寧天皇崩御後に子なく、妹は即位せず、履中天皇の孫を推挙された例などを挙げながら、次のように、皇位継承の3原則をまとめています。

 

「万世に亘りて易ふべからざる者、けだし左の三大則とす。
 第一 皇祚を践(ふ)むは皇胤に限る。
 第二 皇祚を践むは男系に限る。
 第三 皇祚は一系にして分裂すべからず。」


【大意】皇位継承で永久に変えてはいけない法は次の3原則である。

1 天皇の子孫に限る

2 男系に限る

3 一系にして分裂してはならない

 

伊藤博文公は、我が国の歴史の中に、日本人が古代から、祖先が守ってきた不文法理(法則)があると洞察されたのです。

皇室典範は、その不文法理(法則)を明文化したものにすぎない、ということです。

 

祖先以来、脈々と受け継がれてきた皇位継承の不文法理(法則)がある、という認識に立つことが、皇位継承法を知るポイントだと思います。