日銀政策変更に関する国会質疑

 

令和6年4月9日参議院財政金融委員会での、参政党代表・神谷宗幣参議院議員による、日銀の政策変更についての質疑でした。

 

本年3月19日までに日銀は、マイナス金利政策を解除する政策変更を決定しました。

・日銀当座預金に適用する金利を0.1%とし、「無担保コールレート」を0%から0.1%程度で推移するよう促す。

・イールドカーブ・コントロール(長期金利を低く抑えるための必要な国債買入れ)の終了。ただし国債買入れは継続し、長期金利の急激な上昇を抑えるための国債買入れや、指値オペなどは実施。

・ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)の買取終了

 

【詳しく】日銀 マイナス金利政策を解除 異例の金融政策を転換(NHKニュース、2024年3月20日)https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240319/k10014395131000.html

 

マイナス金利政策は、2016年1月、日銀当座預金に預ける金利をマイナス0.1%に設定したものであり、金融機関が世の中にお金を出回らせるよう促す、異例の金融緩和政策でした。

 

これを終了させることで、金融引締めの効果を生み、個人や企業の借入金利や国債の利払費に影響する可能性があります。

なぜこのタイミングなのか、IMFの提唱が与えた影響や、国内企業・日本の景気への悪影響の懸念などを中心に質問しておられました。

また、日銀デジタル通貨(CBDC)のメリット・デメリット等についても質問しておられます。

 

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(質疑の主な内容)※正確な反訳ではありません。

 

1 IMFの提唱が日銀に与える影響

(質問)

日銀の政策変更について、今年2月にIMFの対日4条協議で金融緩和の終了の提唱がされている。IMFの提唱が日銀の政策にどの程度影響を与えているのか。

 

(答弁・植田和男日銀総裁(以下同じ))

日銀の政策変更は日本経済の物価見通しの改善に伴って実行したものである。

 

(要望)

質問した理由は、昨年12月委員会で聞いた時、確実なインフレが確認できて、その角度が明確になったときに政策変更ですよという答弁だった。今回は、上がっていく自信が持てるようになりました、と理由が変わっているのではないか。

なぜそんなに急ぐのか。先ほど賃金の話もあったが、あと半年ぐらい待っていればある程度結果が見えてくるから、それからの政策変更でもよかったのではないかと思わざるを得ないが、何か急ぐ理由があったのか。先ほどの答弁でもその点がなかったので、今後様子を見ながらまた聞かせていただく。

 

2 ETF買取終了の今後の変更可能性

(質問)

金融の引き締めを少しずつということだが、急激に行うと冷え込んでしまうので、少しずつという話があった。

ETFの買取はしないとのことだが、既に(ETFが)70兆円分がある、どういう処理をするかは市場に影響を与えるから言えないかもしれないが、仮に市場に売っていく場合懸念されるのは、外国資本に売らないでほしいということだ。

ただでも株式の取引の7割ぐらいが外国人になっているので、もし売る場合は日本人が買えるような形を考えてほしいというのが要望の一つである。

もし市場に流してしまって株価に大きな変動があった場合、政策変更でもう一度買取をすることはあり得るのか。

 

(答弁)

ETFをどういう投資家に売却するのか、売却後また購入再開するかなど具体的なことの質問だったと思うが、具体的にコメントすることは差し控えたい。様々な提案は検討させていただく。

 

(要望)

またETFを買取するなら、東証の場合、大企業はそれなりに内部留保があるので、もう少し中企業まで資金を回すなら、マザーズなど中間以下のところも検討いただきたい。

 

3 金利上昇による日銀の見通しや考え方

(質問)

これから金利の利上げを検討されると思うが、金利のある世界に戻り、金利で資金分配機能が働くと、生産性の低い企業が淘汰され、経済全体の生産性が上昇し、生産性が持続的に上昇すると賃金の持続的向上が期待され、投資や消費が増える、ディマンドプルインフレ目標が達成されるというのが自由主義的な考え方だと思う。

しかし、逆の考え方もあり、経済全体の需要が拡大して中小零細企業の売上が増えないと、それらの企業が生産性向上のための投資や改善改革ができないので、潤ってないと意味がないのではないかという考え方もある。

私たちが現場の経営者の方々をみると、現場の状況はどちらかというと後者の方であり、金利が上がって市場原理が働くと経済が上がるというようになってないのではないかと思うが、総裁は前者・後者どちらの考え方に近いのか。

 

(答弁)

両方のメカニズムが潜在的には働きうると思うが、賃金と物価の好循環が強まっていくなかでは、実質賃金が将来どこかで伸び率がプラスに転じることも見込まれ、それによる消費の持ち直し・増大、経済の需要サイドに強さが戻ってきて、一段と強くなるというメカニズムも働くものと考える。

 

(要望)

現場の働いている方々の賃金にもフォーカスして欲しいという思いが強い。

政策転換で金融機関にはメリットは大きいと思うが、中小零細企業は資金繰りが厳しくなる可能性があり、変動金利で住宅ローンを借りている方も返済が厳しくなるのではないか。さらにこれから売上がないとなると倒産が増えていく可能性もある。

さらに私たちが懸念するのは、このタイミングで経団連や元官僚から消費税15%に引き上げた方がいいという言論も出ていて、とんでもないと思う。岸田総理は2022年11月に向こう10年間消費税は増税しないと明言されていて、このタイミングでは絶対ないと思う。前向きなデータがあるということだが、私はそのような詳細なデータはもっておらず、国民の皆さんと対話しても日本経済は力を取り戻せている状況ではない。

このタイミングで金融引締めや増税を拙速に行うと、中小企業はバタバタ倒れるのではないか。私も中小企業の社長の息子で25年前に倒産したのでその辛さも知っている。慎重な対応をしていただきたいと思う。

(中小企業が)つぶれると、大企業に吸収されるか、円安なので日本の企業技術不動産がまた外資に買われることも起こりうる。

財政政策も金融政策も収支のバランスや国際的なルールを守ることよりも、日本の津々浦々の国民が安心して暮らせる経済状況をつくることが大切だと思う。いつも同じことを要望するが、日銀は経済状況が確実に安定するまでは金融緩和を続けてもらい、その間財政出動をしっかりして、日本企業や国民におかねがきちんと回る状態に確実にして、減税もして、日本経済が力を取り戻すことが確定してからの引き締めをお願いしたい。今拙速に急いでいる気がするので、要望する。

 

4 日銀デジタル通貨について

(質問)

中央銀行発行のデジタル通貨CBDCについて、日銀の考えや総裁の展望を聞きたい。

 

(答弁)

最初の実証実験開始時期を忘れたが、様々な段階を経て、日本でCBDCを導入することが技術的に可能かどうか検討を深めているところである。さらに民間の関連事業者との意見交換のフォーラムもつくり、意見交換もしている。同時に、関係官庁との連絡協議会も発足して必要な制度も検討している。

技術的な検討を続けた先に、どこかで導入すべきかどうかの国民的議論で判断いただくことと思う。導入するという結論が出た場合、できるように準備をしているところである。

 

5 日銀デジタル通貨のメリット・デメリット

(質問)

国民的な議論という言葉があったが、そのためにはデジタル通貨を入れた場合のメリットとデメリットを事前に伝えておき、予備知識がないと議論にならないと思うが、メリットとデメリットは何か。

 

(答弁)

デメリット(コスト)は、新しいシステム導入にあたり作り方次第でそれなりのコストがかかる。メリットは、これが最大のメリットと特定して話すのが難しい。発展途上国では金融包摂といい銀行預金を持っていない家庭がたくさんいるところ、デジタル通貨を導入することで金融活動が個人にとっても活発で身近なものになる。日本の場合すでに個人の金融活動がある意味レベルの高いところまできており、民間の〇〇ペイというデジタル通貨も様々発行されている。メリットを急に考え始めて整理するのはなかなか難しいが、様々な民間のペイメントシステム同士での可用性(インターオペラビリティ、他の通貨から移す)のための共通のプラットフォームをCBDCが提供する機能も期待できるかもしれない。また、様々な金融市場、株式市場、債券市場、不動産のような流動性の低い市場を、証券化して、更にそれをトークン化して、売買を容易にする、小口化を可能にする、さらにこれを取引面で促進するには決済がうまくいく必要がある。そのために便利なCBDCがあるとそうした取引が促進され、金融の技術進歩にも資するメリットがあると指摘されている。

体系的な答えでなくて恐縮だが、そうしたメリットとコストとの総体、プライバシーやセキュリティの問題、これらを総合して導入すべきかどうかが決まっていくものと思う。

 

(要望)

今の総裁の答えを聞いて、前向きに考えておられる気持ちが伝わってきた。われわれも導入すべきだと思っており、プラットフォームが日本が作ったものではなく、外国が作ったものに取られてしまうと、プライバシーや情報の問題、情報の安全保障にもかかわってくる問題だと思う。今のような議論をもう少し広く国民に広めていただき、国民的議論が起きる土壌を作っていただきたいと思う。