令和6年3月21日参政党神谷代表国会質疑

 

令和6年3月21日の参議院財政金融委員会における、参政党神谷代表の国会質疑は、

1 ストックオプション税制の見直し

2 戦略分野国内生産促進税制

3 GX移行債 

について行われました。

 

難しい言葉が並びますが、簡単に言えば、

・1は外国人投資家を優遇することを目的とした税制(外国人投資家への減税)ではないか

・2の対象が日本企業に限られず外国企業も税制優遇されるのはおかしくないか

・3は地球の温度を0.006度下げるための投資に優先順位を高くすべきなのか


外国企業・外国人投資家の優遇への批判、脱炭素の優先度の高さへの疑問(光熱費のコスト低減や、安定供給を優先すべき)といった観点が強調されています。

 

「日本経済と企業を保護するための、外資規制や防衛策は、今回の政策の中に含まれているのか」といった質問や、「市場主義や自由競争原理に任せて政策を進めると、結果的に大きな外国の資本に市場を全部コントロールされるリスクがある」という意見表明は、非常に重要な視点だと思います。

 

また、脱炭素についても、日本の削減は経済低迷による割合が大きく、日本が世界の3%の炭素量を下げようとしている一方で、世界は炭素をより排出量を増やしている事実を指摘していました。(質疑にはありませんが、中国の排出割合が世界の約31%と最も大きい)

 

 

 

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以下、質疑の概要(正確な反訳ではありません)

 

1 ストックオプション税制の見直し(1)

(質問)

所得税法の一部を改正する法律案の、スタートアップエコシステムのストックオプションについて。

ストックオプションは人材獲得のツールとして活用されており、今回の制度改正も人材確保の目的が大きいと思う。

2014年頃から始まり、昨年まで約800社が導入し、対象人数が5万人にものぼっていた、信託型ストックオプションに対し、導入企業が認識していた課税関係と異なる方針を後で示して、その活用が止まった後に、また今回のストックオプションのテコ入れを提案したのはどうしてなのか、疑問に思っている。

 

日本のスタートアップを支援するのが目的なら、すでに広く活用されていた信託型ストックオプションを継続させていたほうが得策ではなかったかと思うが、見解は。

 

(答弁・青木主税局長)

ストックオプションについては税制適格ストックオプションに該当する場合を除き、行使時に給与所得として課税する取扱いをしている。

信託型ストックオプションも国税当局は、原則として権利行使時に給与課税と取り扱い、昨年5月にQ&Aとしてまとめ明確化したもので、課税要件を変えたものではない。

 

ストックオプション税制は、従業員のモチベーション向上に資するものと対象とする観点から、付与から2年以上経過して権利行使することを要件としている。

信託型ストックオプションも、こうした税法上の要件を満たせば、給与課税を要しない、税制適格ストックオプションとして取り扱うことも可能。

 

今回のストックオプション税制の見直しは、従業員のモチベーション向上に資するものを対象とする考え方を維持しつつ、利便性向上のための改正を行うもの。

 

(要望)

実際に普及していた、モチベーション向上につながっていたのではないか。

2014年から行っていた制度なのに、そういうガイドラインを示すなら早めにやらないと、後出しじゃんけんのようになってしまい、投資意欲が下がってしまうのではないか。

国民が、国内で(投資を)やっていても後から全部税金でとられるなら、海外に投資してしまう。国内に投資を持っていきましょうといっているのに、増やそうとすると、政府が後で課税するなら、投資意欲が下がってしまう。

政府が税を集めて運用してうまくいっているならよいが、国民の資産減っている状況なので、あまりこういうところに網掛けをして、とれるものを全部取るのは、考え直した方がよいのではないか。今後の制度設計の要望として挙げておく。

 

2 ストックオプション税制の見直し(2)

(質問)

今回の大きな変更点は

1 株式保管委託要件の撤廃 ・・・証券会社を介さずに自社で株式を補完する 日本の証券会社に口座を作れない外国人のためのものと考えている。

2 社外高度人材への付与 ・・・外国人にストックオプションを渡しやすくする緩和措置だと思う。

3 権利行使限度額の大幅な引上げ ・・・大口の株式保有者に有利な制度になる。

 

スタートアップエコシステムは、そもそも国内の資本を活用してスタートアップを促進し、国内経済の発展をめざすべきものだと述べておられた。

今回の制度改正は、外国人投資家を優遇し、国内企業やサービスをかなり開放しているのではないかとも見える。

外資の流入をすべて反対するわけではないが、日本経済と企業を保護するための、外資規制や防衛策は、今回の政策の中に含まれているのか、見解をお聞かせください。

 

(回答・青木主税局長)

ストックオプション税制の見直しについて、スタートアップで付与したものは年間権利行使価格の限度額を最大3倍となる3600万円の引き上げ、発行会社自身による株式管理スキームの創設、社外高度人材への付与要件の緩和などを行うもの。

外国人の利用を排除するものではないが、要望官庁である経済産業省から、主として国内の関係者・関連団体等との意見交換をふまえて提出された要望をもとに検討したもので、「外国人の投資家を特別に優遇することを目的としたものではございません」

 

(要望)

外国人を優遇するものではない、と言質をとりましたので、今後の成り行きをしっかり見ていきたいお思います。

今の株式市場の動向を見ても分かるように、外貨がものすごく入ってきている。

「外貨を活用して」と言いながら、株式も大半を持たれたら、こっちがコントロールされる側になってしまう。

門戸を開くなら、いかに(外資を)一定割合に納めて、日本人側が主導権をもってコントロールするかが大事なので、その視点を忘れず制度設計してほしい。

市場主義や自由競争原理に任せて政策を進めると、結果的に大きな外国の資本に市場を全部コントロールされるリスクがある。この点はいろんな観点で言っていく。

 

3 戦略分野国内生産促進税制

(質問)

この目的は、国として特段に戦略的な長期投資が必要となる、GX、DX、経済安全保障の戦略分野における国内投資を促進するためとあるが、経済安全保障の観点から、対象となる企業は日本企業に限られているのかどうか。

(回答・経済産業省大臣官房小林審議官)

令和8年度末までに主務大臣の認定を受けたうえで戦略分野で新たな国内投資を行う企業が対象になる。

外国企業や子会社でも、事業適用計画の認定を受け、対象分野における国内での投資生産を行うのであれば、制度上は排除されるものではない。

外国企業や子会社が対象になる場合、対象物資生産を行うための、日本国内での本格的な長期投資が必要になり、雇用の確保にも取り組むこととなる。また税額控除措置の効果が発生するには、日本での納税も行われることになる。

(要望)

日本企業と外国企業で差をつけることは避けるべきだということだと思うが、「戦略」と名前がついているのであり、外国企業や株式の大半が外資である場合は、純日本企業と差をつけて対応すべきではないかと思う。

先ほどの小池議員の話を聞いていても、もうかるから日本にやってきているのに、そもそも外国企業に減税が必要なのか、国民の庶民に減税をした方がよいのではないかと思う。

 

4 GX移行債

(質問)

今年2月24日にキヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏らによって「非政府有志による第七次エネルギー基本計画」が出された。今年は第七次エネルギー基本計画がつくられる予定。

今は、国際環境がだいぶ変化している。しかし、日本政府は、低炭素・脱炭素の弊害を顧みることなく、合理的な根拠やエビデンスを示さずに、脱炭素政策を強化しているように感じられる。

 

杉山氏のレポートでは、これからのエネルギー政策は、安全保障と経済成長を重視する必要があるとして、11の政策を提言している。

・光熱費を低減するために、エネルギーへの税や賦課金は撤廃・削減する

・化石燃料の安定利用をCO2規制で阻害しない

・太陽光発電の大量導入を停止し、再エネなどの代替技術は性急な導入拡大をせずにコスト低減を優先する

・CO2排出総量の目標をおかず、部門別の排出量の割当てをしない

 

この提言の背景には、数字がある。

日本政府は、2030年までに46%削減する、さらに50%減の高みに向けて挑戦を続けると宣言しているが、仮に、2050年に日本がカーボンゼロを達成しても、政府が根拠とするIPCCのデータに基づく計算をすると、日本が行う努力は、地球全体の気温を「0.006度」低下させるだけ。

 

現実には2023年の化石燃料による世界のCO2排出総量は368億トン、2022年度に比べ1.1%増えて過去最高を記録。

日本は2013年から2022年にかけてCO2を20.5%削減と孤軍奮闘しているが、キヤノングローバル研究所の調査では、その15.5%は経済活動量の低迷によるもの。経済が低迷して工場が止まったり減ったりしているからCO2が減っているとのこと。

 

脱炭素が困難な国政情勢の中、ESG投資のパフォーマンスが低下している。世界中の機関投資家はESG投資から手を引いている。世界的にみるとGXや再エネ投資に対する軌道修正を始めているのが今のトレンド。こうした流れをふまずに、日本だけがこの分野に大規模な投資を続けるのは合理的でなく、日本だけ不利益を被る可能性がある。

 

今やるべきことは国内で可能な限り賄える化石燃料の発電と原発による安価で安定したエネルギー供給を確保すること。再エネなどの化石燃料代替技術は性急な導入は控えてまず、東日本大震災前までのレベルのような、コストの削減をしないと、経済が回らない。

 

再エネ賦課金また上げると発表していたが、0.006度の効果をあげるために、国民の生活を圧迫し、日本の経済産業力を落とすことは愚の骨頂だと思う。

 

日本が地球の環境保全や脱炭素に本気で取り組むなら、歳出削減対策をしっかりやった火力発電所の開発に力を入れるべきであり、アジアの国々に提供することが重要。

 

日本の排出する炭素は地球全体の3%。それを半減させても、地球規模でみるとほぼゼロである。

 

政府マスメディア教育機関が脱炭素を先導しており、多くの国民が脱炭素の優先度を間違えていると感じている。「非政府有志による第七次エネルギー計画」を参考にした新しい計画の立案が必要。

 

GX移行債の資金は、先ほどの大企業にほとんどが行ってしまう分野の税制の穴埋めに使うのではなく、電気料金の削減や、エネルギー安全保障の強化に使うべきだと思うが、政府の見解は。

 

(回答・小林審議官)

排出削減に資する火力・原子力発電の活用は、排出削減と経済成長・産業競争力強化の同時実現に向けて大変重要と認識している。

本税制だけでなくガスタービンでのアンモニアステーションの技術開発、原子力分野の次世代革新炉の技術開発についてもGX移行債を活用していく。

 

電化と電源の非化石化だけではカーボンニュートラルは実現できず、日本の産業構造の強みを生かす観点からも、自動車・鉄化学等の多排出産業の熱需要の脱炭素化に向けた

取り組みも大変重要。

 

世界でも戦略分野の投資を一国内で実現するための産業政策が活発化する中、日本でも本税制を創設し、生産段階でコストが大きい等の理由により投資判断が難しい、電気自動車、グリーンスチール、グリーンケミカルの3分野でGX移行債を活用して国内投資を強力に引き出していく。

 

本税制だけでなくGX移行債を活用した投資促進のための補助金、カーボンプライシング等の規制・制度を総合的に講じることで、国内投資・生産拡大、技術優位性を生かしながら、排出削減と経済成長に貢献する。

 

(質問)

移行債をつくり予算をかけるが、政策の優先順位として、0.006度の地球の温度を下げることと、人口減少や、国民負担率が高く国民が苦しんでいる中で、わざわざ税金を集めて、0.006度の温度を下げる必要があるのか。大臣の見解は。

 

(答弁・鈴木財務大臣)

最近の自然災害の頻発・強力化の現実を目の前にすれば気候変動対策は優先順位は高い。日本の排出量が全体の3%、半減しても0.006度であるといえども、国際社会の一員としてしっかり協力していきたい。