外国人の受け入れは国家主権の問題

 

1 国家主権の問題

外国人を入国させるかどうかは、国際慣習法上、国家の自由裁量によって決定することができます。
したがって、特別の条約がない限り、外国人を入国させる義務を負いませんし、在留させる義務もありません。

表現が厳しく聞こえるかもしれませんが、外国人は入国の自由や在留を求める権利を有しないことは、最高裁判例でも認められています。(昭和53年10月4日マクリーン事件最高裁大法廷判決)

 

これは外国人差別云々の問題とは異なり、国家主権の問題であるからです。

コロナ騒動のもとでは、ほぼすべての国が一斉に外国人(日本人も含め)の入国を拒否したことは、記憶に新しいと思います。権利侵害や差別云々という話はありませんでした。

 

なお、上記最高裁判決に対しては、恣意的な判断を許すべきではないなどと、いろいろと批判もあります。

 

しかし、外国人を受け入れるかどうかについて、国益の観点から自由に判断することができるという国家主権の原則を示したものとして、現代でも今一度確認しておく必要があるのではないかと思います。

 

2 入管法の規定

入管法では、入国時に「貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者」は上陸拒否事由(3号)であり、入国を拒むことができます。入国してすぐ生活保護申請、というような外国人は、難民認定の場合は別として、入国の要件を満たしません。

 

また、特定の犯罪歴が上陸拒否事由になることはもちろん、憲法や政府を暴力で破壊することを主張する団体や、公務員に暴行し、公共施設を破壊損傷を勧奨する団体、事業を妨害する争議行為を勧奨する団体などの加入者や、密接な関係者、これらの文書図画の頒布者は、上陸拒否事由に当たります(5条1項11・12号)。

さらに『法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者』は上陸拒否事由(入管法5条1項14号)であり、国益や公安を害するおそれのある外国人は、入国を拒否できます。

もし、上陸後にこれらが判明した場合は在留資格の取消し(入管法22条の4)や、新たに行った場合は退去強制(入管法24条1項4号オワカヨ)を行うことができます。

 

3 川口市の事例

ところで、埼玉県の川口市では、令和5年6月29日、「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」が市議会で可決されました。その中には、「一部の外国人は生活圏内である資材置場周辺や住宅密集地域などで暴走行為、煽り運転を繰り返し、人身、物損事故を多く発生させ」「地域住民の生活は恐怖のレベルに達しており」と表明されています。

https://kawaguchi.gsl-service.net/doc/2016021300027/file_contents/202306-01ikensyo.pdf

 

また、昨年11月21日、川口市長が国(出入国在留管理庁長官宛)に出した要望書の1項にも、『仮放免の許可を厳格化し、退去強制事由に該当すると思われる外国人の収容及び速やかなる送還を徹底すること』と記載されています。
 

自治体からこうした意見が出されるのは異例のことだと思います。

 

外国人の受け入れは基本的に国の裁量です。ましてや、外国人が、入管法に定められた犯罪を犯したり、国益や公安を害する行為をした場合は、入管法上の上陸拒否事由や退去強制事由にも当たります。

 

国家主権や、国益を守るという観点もふまえて、法を運用することが大切だと思います。

 

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(昭和53年10月4日マクリーン事件最高裁大法廷判決より抜粋)

 

憲法二二条一項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していないものであり、このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される(最高裁昭和二九年(あ)第三五九四号同三二年六月一九日大法廷判決・刑集一一巻六号一六六三頁参照)。したがつて、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。

 

すなわち、法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたつては、外国人に対する出入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立つて、申
請者の申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしんしやくし、時宜に応じた的確な判断をしなければならない
のであるが、このような判断は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任せるのでなければとうてい適切な結果を期待することができないものと考えられる。このような点にかんがみると、出入国管理令二一条三項所定の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断における法務大臣の裁量権の範囲が広汎なものとされているのは当然のことであつて、所論のように上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新申請を不許可にすることは許されないと解すべきものではない。