参政党に言及した東大論文の問題点

 

令和6年2月5日、東京大学のウェブサイトに、「人はなぜワクチン反対派になるのか ―コロナ禍におけるワクチンツイートの分析―」という論文の紹介が行われました。(紹介文は日本語、論文は英語)

https://www.t.u-tokyo.ac.jp/press/pr2024-02-05-001

 

この紹介文では、参政党を「反ワクチン」と決めつけた上で、

(1)「新型コロナウイルスによるパンデミック下では、反ワクチン的態度が集団免疫の獲得を妨げ、公衆衛生に対する脅威になる」との立論から始まり、

(2)陰謀論やスピリチュアリティをきっかけに、反ワクチンの参政党に支持が集まったという仮説を展開し、

(3)結論として、陰謀論やスピリチュアリティに警戒すべきだという結論を提示しています。

 

1 「反ワクチン」「陰謀論」という定義・根拠が不明

これが東大の論文の紹介文なのかと思わず見返すような内容ですが、まず、以下の記載は、さすがに定義や根拠を欠いているのではないでしょうか。
・「反ワクチンを掲げる参政党」

⇒参政党の当時の主張は、あらゆるワクチンに反対する「反ワクチン」ではありませんでした(後記「参政党の新型コロナウイルス感染症対策」)。情報を集めた上で、子供は接種すべきでないが、大人は各自の判断であり強制や差別を許さないという立場でした。
・「参政党は国際ユダヤ資本などの陰謀論(略)を選挙キャンペーンに用いており」

⇒国際ユダヤ資本(ロスチャイルド家、ウォーバーグ家、シフ家など)の存在は事実であり、陰謀論とはいえません。国際ユダヤ資本に関するいかなる主張が、どうして陰謀論なのか、明らかにする必要があります。

 

2 反ワクチンが集団免疫を妨害したとの前提が疑問

そもそも、まず(1)の新型コロナにおいて、反ワクチンが集団免疫の獲得を妨げた、という論文の前提は、ほぼ誤りであることが判明しつつあります。

日本では既に新型コロナワクチンを80%以上の人が2回以上接種しています。ワクチンを打たないごく一部の人が集団免疫を妨げたという前提が成り立ちません。また、新型コロナワクチンを接種した人も感染しています。バイデン大統領も令和4年3月30日に2回目のブースター(追加)接種を受けたあと、4か月経たない同年7月21日に新型コロナ「陽性」が判明してからは、「非接種者が感染を広めている」とは言わなくなりました。

新型コロナで「反ワクチンが集団免疫の獲得を妨げた」との言説は、ワクチン接種による薬害・後遺症が次々と明らかになりつつある今、時代遅れの感すらあります。

 

3 参政党は「反ワクチン」ではない

また、参政党は「反ワクチン」ではありません。5歳から11歳までの子供には接種させるべきでないとの立場ですが、大人は強制や差別は許さず本人の自由な判断にゆだねるべきとの立場でした。ワクチンの治験期間が短く、中長期的な安全性、ワクチンによる増悪の可能性などの副反応など危険性に関する情報が乏しいことが背景にありました。

 

情報が不十分だから、もっと様々な情報や専門家の意見も集めた上で慎重に判断しましょうと言っているわけです。一部のマスメディアや一部の専門家だけの情報だけで流されるのではなく、ある意味で冷静で科学的なわけです。

当時、ワクチンに何が何でも反対するというのではなく、きちんと感染のリスクと、ワクチンの効果や副反応の危険性を見定めたうえで、個々人で判断しましょうという態度が基本にありました。

私は、こうした冷静で科学的な態度こそ、盛んに接種を勧奨する空気の中で、参政党が支持を集めた理由ではないかと思います。

 

4 「陰謀論」ではない

また、参政党は陰謀論やスピリチュアリティによって支持を集めたのではありません。論文でも「これらがゲートウェイとなって反ワクチン的態度を持つようになる人がいることが明らかになった。」と述べているにとどまり、それが決定的要因かを明らかにしていません。

 

たしかに、一部にそうした人がいたかもしれません。しかし、マスメディアの連日の感染者数の報道等の中、既存の国政政党が全てワクチンに疑問を呈する動きがなかったのに対し、立ち止まって冷静に他の専門家の意見も聞き、ワクチン接種の背景となる国際情勢も分析して、慎重な意見を述べたからこそ、支持が集まったのではないでしょうか。

製薬会社やWHOに資金を提供する国際金融資本の存在は決して「陰謀論」ではなく、既存のメディアの情報にとらわれず、幅広く世界情勢の情報を知ることにつながり、物事を多角的に分析する傾向を示しているとも言えます。

 

こうしたマスメディアの報道や一部の専門家の意見に流されず、また「反ワクチン」「陰謀論」でもなく、科学的で多角的に分析する態度を保ったことが、支持を集めた原因ではないかと私は思います。

 

 

 

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参考:「参政党の新型コロナウイルス感染症対策」

https://www.sanseito.jp/covid_question_list/

ワクチンは任意接種。接種、非接種による差別、偏見、規制は許さない。
・各国民が「副反応や将来の後遺症リスク」と「新型コロナ感染による重症化リスク」を比較衡量できるよう各種情報の提供と評価の仕組みを構築。 
・若年者は上記の前者が後者を上回る。これからがある子どもたちにだけはワクチンを打たせない。 

 

参考:論文にある記載内容(日本語訳は安達の仮訳)

 

Sanseito’s platform incorporates conspiracy theories, spirituality, and naturalism, including anti-global capitalist and anti-Semitic conspiratorial views, and its strong commitment to organic food aligns with its opposition to introducing artificial substances into the body, including vaccines. 

参政党の政策には、反グローバル資本主義や反ユダヤ主義の陰謀観を含む陰謀論、精神性、自然主義が組み込まれており、有機食品に対するその強い取り組みは、ワクチンを含む人工物質の体内への導入への反対と一致しています。

 

While Japan witnessed the emergence of an anti-vaccine Sanseito during the pandemic, countries where such parties did not emerge would likely see anti-vaccine individuals supporting existing right-wing or populist parties. 

日本ではパンデミック中に反ワクチンの参政党の台頭が見られたが、そのような政党が台頭しなかった国では、反ワクチン派の人物が既存の右翼政党やポピュリスト政党を支持する可能性が高い。

 

However, the number of new anti-vaxxers following the anti-vaccine Sanseito increased sharply from March to September 2022, suggesting that Sanseito has successfully appealed to those who became anti-vaccine during the pandemic, resulting in its seat in the Diet.

しかし、反ワクチンの参政党に続いて新たな反ワクチン派の数が2022年3月から9月にかけて急増しており、参政党がパンデミック中に反ワクチンになった人々にうまくアピールし、その結果国会に議席を獲得したことを示唆している。

 

Sanseito made anti-vaccine discourse a central part of its election campaign. 

参政党は反ワクチン論説を選挙戦の中心に据えた。