井上尚弥2度目の4団体防衛成功 7回16秒TKO TJ・ドヘニー腰を痛めて試合続行不能
井上尚弥対TJ・ドへニー 4回、TJ・ドへニー(右)を攻める井上尚(撮影・河田真司)
<プロボクシング:4団体統一スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦>◇3日◇東京・有明アリーナ
【衝撃の瞬間】よろめくドヘニーに、ストップを宣告するレフェリー
4団体統一スーパーバンタム級王者井上尚弥(31=大橋)が防衛(WBAスーパー、IBF2度目、WBC、WBO3度目)に成功した。 WBO世界同級2位の元IBF世界同級王者TJ・ドヘニー(37=アイルランド)の挑戦を受け、7回16秒TKO勝利。デビン・ヘイニー(米国)と並び歴代2位となる4団体統一王者としての2度目の防衛成功となった。なお同歴代1位はサウル・アルバレス(メキシコ)の4度防衛。 7回TKO勝利。最後は相手が腰を痛めたようで、予想外の結末だった。井上は「今日の試合の内容もそうだが、まだまだ完成していない。もっともっと上を目指して戦っていきたい」などと、試合直後とは思えないほど冷静に、ダメージゼロともいえる口ぶりで述べ「また12月、楽しみにしていてください」と次戦の〝予告〟もした。
注目の次戦以降について、リング上で米プロモート大手トップランク社のボブ・アラムCEOが「年内には、ここ東京でもう1試合して、来年にはラスベガスで大きな大きなイベントを開催したいと思います」と公言。井上の「12月」発言は、これに呼応してのもの。次戦12月東京→来年は米ラスベガスでビッグマッチというプランが明らかになった。
井上は「まず、平日の足もとの悪い、お忙しい中、みなさん、会場までお集まりいただき、本当にありがとうございました。今回、テーマとしてボクシングを丁寧に組み立てる、しっかりボクシングというものを理解して組み立てるように、今日は意識をしました。内容と結果通して、皆さんが満足するような、期待していたような試合内容ではなかったと思うんですが。長く試合をしていれば、こういう試合もあるということで。また、次に期待していただきたいなと思います」などと話した。
井上にとって22年6月の元世界5階級制覇王者ノニト・ドネア(フィリピン)戦から6戦連続となる世界王者経験者との防衛戦だった。「判定決着は許されない。仕留めるべき瞬間に仕留められればいいと思う」と気合十分で、リングに立ってドヘニーと対峙(たいじ)していた。
海外のブックメーカー(賭け屋)となる英大手ウィリアムヒルのオッズは、井上勝利に1・02倍、ドヘニー勝利に15倍と、井上の圧倒的有利に動いていた。そんな“楽勝ムード”を井上は自身の言動で払拭した。「周りの雰囲気は自分が一番、感じる。自分にそういう気持ちはなくても緩みは必ず出てきてしまう。過去の経験からも振り返ると、そういう瞬間もあった。言動だったり練習の内容でより心がけている」と気を引き締めて最終調整していた。
ドヘニー戦に向けた総スパーリング数は計101ラウンドにまで到達。今年5月、東京ドームで臨んだルイル・ネリ(メキシコ)戦前には実施しなかった3日間のジム内集中合宿にも取り組んだ。「フィジカルも増やし(実戦トレの)ラウンド数も多くなった。自分の中で気を抜かないために、一番練習したなと自負するぐらい。ネリ戦以上(の練習量)は意識している」。過酷なメニューで追い込み、集中力を研ぎ澄ませていた。
これで世界戦通算勝利数は23勝に積み重ね、元4階級制覇王者井岡一翔(志成)の22勝を抜き、単独1位となった。そして歴代の世界王者の中でも元3団体統一ミドル級王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)と並んで現役最多。世界でただ1人となる現役の4団体統一王者。6戦連続の世界王者経験者撃破で、ボクシングの歴史と新たなモンスター伝説を刻んでみせた。
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