認知症に伴う症状の一つに「妄想」があります。
「妄想」で代表的なのは、物盗られ妄想・嫉妬妄想・被害妄想です。
介護医療の業界において認知症の伴う「妄想」を説明するときに
「心の葛藤や、認知機能の低下により現実を歪曲して知覚したり、過去の記憶や経験なども原因」となっていると説明します。
また、「妄想」話をしたときに、「財布が見当たらなくて盗られたと思い込んでいるんだ」 「夫や妻が異性と出来ているんじゃないかと疑っているからだ」 「みんなが自分をばかにしていると思い込んでいるからだ」と発言内容を額面通りに捉えて、発言内容の原因探しをすることでしょう。
しかし、「妄想」が心理的・認知的なもので表出していると考えたり、発言内容の深層心理を探ったところで何の解決策も出てきません。
また、介護医療の世界では「妄想」への対応は、「妄想」の訴えに対して否定せず傾聴し、しばらくしたら話題を変えるという対処がよく紹介されています。
物盗られの場合は、一緒に財布を探して、見つけたらさりげなく本人に「ここを探して見たら」と伝えて、本人が見つけられるようにするとも書かれています。
しかし、この様な対応をしても、「妄想」はおさまらず継続します。
行動分析学では「妄想」話を額面通りに捉えたり、心の問題等で扱いません。
認知症に伴う「妄想」であったとしても、「妄想」話しは言語行動です。要は「妄想=行動」なのです。「妄想」が繰り返されるということは「妄想」の発言をすることで何らかの好子(メリット)出現の強化を受けているものなのです。
個別の分析をしないと「妄想」の機能(目的)は分析できませんが、今までの症例の統計から、8割は介護者からの注目を得るために「妄想」の行動をしています。
ここでの述べる「妄想」話で得られるメリットとは、「妄想」の話をすると対応者が否定せず傾聴してくれる以外に、現実の世界に引き戻そうと説得や注意、文句や叱責をして妄想話を止めようとする対応も含みます。
説得や注意、文句や叱責がメリット???と奇妙に思われる方もいると思いますが、無視されるのに比べれば説得や注意、文句や叱責を受けていた方がよいということもあるのです。
在宅は、家族とほとんど会話がない場合、一人暮らしで他人とたわいもない会話の機会がない場合、老人ホームなどでは大勢の入居者がいる中でスタッフとの会話が少ないと感じた場合などに、「妄想」をし出します。
当たり前の何気ない会話をしたいのにそれがかなわない。
では、どうすれば家族やスタッフが自分に注目を向けてくれるだろうかと考えたときに、変わった行動(家族や介護スタッフを罵ったり、泥棒扱いをする発言)をすれば、家族やスタッフは否が応でも注目を与えてしまいます。
認知症の症状がある人にとっては、例えそれが、説得や注意、文句や叱責であってもいいのです。
「妄想」をすれば家族やスタッフは自分に注目してくれるという不幸な学習をしてしまうのです。
なので、介護医療の業界でベストと言われる「妄想」を否定せず傾聴するという対応は、一見すると親切な思いやりのある対応ですが、
「妄想」発言をしている認知症の症状がある人にとっては好子(メリット)となっているのです。
認知症の症状がある人を助けるつもりが、逆にますます「妄想」の世界の深みにはめてしまっていることになるのです。
では、どの様な対応をすればよいのでしょうか?
ズバリ
「妄想」話に付き合わない=無視(注目を与えない)ことです。
この様に説明すると、必ず介護医療のスタッフからは「介護看護の原点は愛情です」「無視するなんて酷い対応はできません」と言われます。
しかし、このような主張をされる方たちは「妄想」が起きると、何の解決策も見出せず、「認知症だから」と言って認知症の症状がある人を悪者にしたり、スタッフ同士で「いい加減にしてよ」と文句や愚痴を言っているのです。
無視(注目を与えない)は、「妄想」という不適切な行動に対して無視をするのです。
認知症の症状がある人を無視するのではありません。
なので一日中、無視をするのではなく、「妄想」話だけ無視をして、それ以外の時に普通の会話をして、その時にしっかり注目を与えて、たわいもない雑談などでちゃんと注目をえられるということを再学習させるのです。
そんな単純な方法で解決できるわけないと半信半疑の方もいると思いますが、「妄想」の機能(目的)が他者からの注目を得るための発言であれば、間違いなく「妄想」話の頻度は減っていきます。
但し、以下の点をしっかり守ることが大切です。
①「妄想」話に絶対に反応しない(「妄想話を言い始めたら、一言断ってその場から離れるか、離れられないときはアイコンタクトもダメ、「ふ~ん」や「そうですか」などの相槌もせず忙しくて聞けないふりをしたり、何か書き物をしたり、テレビを観たりしてください)
②「妄想」を無視するのは消去の原理ですから消去バーストが必ず起きます。「妄想」話が一時的に増えるので、それに根負けして対応しない(今まで不適切な発言で注目を得られていたのに注目を得られなくなったので、さらに酷い発言をして注目を得ようとします。それに根負けして注目を与えない。仮にそこで注目を与えると、今度はその酷い発言をすれば注目が得られると誤学習してしまいます)
③関わる人全員が統一の対応をする
④ご家族・介護スタッフから妄想以外の会話を積極的に行い、適切な会話で注目を与え強化していく。
ちなみに、「妄想」以外にも、毎回同じ話をする(例えば、今何時?やごはんまだ?)が注目を得るための行動であれば、その話には付き合わず、それ以外の会話の機会をしっかりつくることで繰り返される発言の頻度は減っていきます。
でも、①~④が難しいのです。訓練が必要なのです。
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