健康情報バラエティや健康雑誌では「〇〇をすれば認知症を予防できる」「〇〇を食べれば認知症にならない」と手を替え品を替え多種多様な認知症予防法の情報が喧伝されています。
特に、認知症予防では「脳トレ」が盛んです。
計算問題や間違い探し等、趣向を凝らしたテストが満載で、いかにも脳に効きそうな感じがします。
でも、よく考えてください。
例えば、計算ドリルに取り組んで点数が1点、2点とアップすることや〇〇食品を食べることと、洋服を着替える行動、トイレで排泄する行動、家事を遂行する行動と相関はありますか?
生活を成り立たせるためには、身体行動や家事行動が自発されていく必要があります。
行動とは「刺激=弁別刺激」に対する「反応」です。
そして行動は決まった場所や条件で、同じように行われているうちに自動化していきます。
行動の自動化とは「無意識」に行動できるようになることと思っていただければわかりやすいと思います。
わたしたちが生活を営むときに遂行する行動のほとんどは「自動化=無意識」に行えている状態です。
例えば、尿意を感じたときに、わたしたちは、おしっこをするための行動をいちいち意識することはありません。
では、当たり前にしている、おしっこをする行動を視覚化させてみましょう。
トイレで排尿の行動(※男性)
①尿意を感じる(刺激)➡②トイレの場所を認識する(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡③トイレに行く(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡④トイレのドアを開ける(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑤トイレに入る(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑥チャックをおろす(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑦陰茎を出す(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑧尿を出す(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑨陰茎をパンツとズボンの中におさめる(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑩チャックを閉める(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑪水洗レバーを押して流す(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑫トイレから出る(反応)と同時に(次の行動の刺激)➡⑬トイレのドアを閉める(反応)
このようにトイレで排尿するという行動一つとっても①~⑬の刺激と反応の行動連鎖で成り立っているのです。
これが脳の死滅や脆弱によって、「自動化=無意識」となっていた行動の「刺激」と「反応」の連鎖がうまくいかなくなり、次の行動の呼び水が途絶えるので、行動が連鎖せず完遂しないことが増えます。
要はエラーが増えるため行動の自発頻度が低下して、結果的に「出来ない」とかエラーをするので「やりたくない」となります。
そこで、認知症予防に取り組むなら生活に直結したことに取り組むことが何より重要なのです。
当たり前の行動、「自動化=無意識」となっている行動に対して、行動の連鎖を紙に書き出し、一つ一つの手順を頭の中で言ってみたり、発話(声に出す)をしたり、指さし点検をしながら行動する習慣をつけてみましょう。
①「尿意を感じる」と言う。➡②「トイレは廊下にある」とトイレの場所を言う➡③「トイレに行く」と言ってトイレに向かう➡④「トイレのドアを開ける」と言ってドアを開ける➡⑤「トイレに入る」と言って入る➡⑥「チャックをおろす」と言ってチャックをおろす➡⑦「陰茎を出す」と言って陰茎を出す➡⑧「おしっこを出す」と言っておしっこを出す➡⑨「陰茎をしまう」と言ってパンツとズボンの中におさめる➡⑩「チャックを閉める」と言ってチャックを閉める➡⑪「水洗レバーを押して流す」と言って水洗レバーを押す➡⑫「トイレから出る」と言ってトイレから出る➡⑬「トイレのドアを閉める」と言ってドアを閉める
とはいっても、こんなことを起きてから就寝まですべての行動に行うことは現実的ではないので、曜日ごとにターゲットとする行動を決めます。
例えば、月曜日は 歯磨き・着替え、火曜日は掃除機掛け・洗濯機の操作、水曜日は排尿排便、入浴、木曜日は買い物・金銭支払い、金曜日は自宅からお店までの道順、土曜日は夕飯の調理、日曜日は薬を飲む
その取り組みのなかで、行動を自発しやすくするために環境を整えていくのです。
これを習慣づけることで、自ら生起させた行動に対して、次の行動に対する弁別機能(刺激)を確立させて、言行一致を繰り返し何度も強化されると、反応クラスが確立し、ルーチン化(自己ルール支配行動)されることで、その行動の刺激反応連鎖がより強化して成立します。
ここまで取り組み方法を書いてきましたが、実は、これをしたら認知症にならなくなるわけではありません(よって認知症予防ではありません。すみません。)、認知症の症状を抱えてもルーチン化によって特定の行動は自発できる=自分でできることをなるべく続けられる能力を保つことになるのです。
今繰り広げられている「認知症予防」に効果があると取り上げられているものは、国内外問わず「認知症予防」の科学的根拠は実はありません。
臨床研究によるエビデンスは、推奨グレードA「推奨できるだけの強い科学的根拠あり」、B「推奨できる科学的根拠あり」、C「推奨できる科学的根拠なし」、D「推奨できない」のうち、「認知症予防」と言われているものの全てC「推奨できる科学的根拠なし」但し、健康的な暮らし積極的な社会参加のためには推奨できるレベルと言われています。
誰だって病気にはなりたくありません。しかし、認知症は年齢を重ねれば重ねる程、辿りつく確率は高まることがわかっています。
だから決して認知症になったからと言って、予防に真剣に取り組まなかったからだと責めたりしないでください。
真剣に取り組もうが取り組まなかろうがなるものはなるのです。
要は、何をやってもやらなくても脳細胞は死滅し脆弱して委縮するのです。
大切なのは、認知症の症状を抱えたことを見越して生活を営むための行動が自発し易い環境を整える取り組みを今の内から習慣づけておくことが大切なのです。
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