前頭側頭型認知症は、発症年齢が65歳未満の若年層に多い認知症です。

アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、脳血管性認知症のなかでも介護者負担が大きいと言われています。

なぜかというと特徴が「人間らしさ」をつかさどる前頭葉が侵されることで、人格や行動に変化が表れ症状の強さが際立つためです。

次のような症状が特徴です。

●抑制が利かなくなり、万引きや信号無視、行列に割り込むなど、反社会的な行動をするようになります。

●人の心を推し量る共感性がなくなり、人を傷つけるような発言をしてしまいます。

●易怒性により些細なことで大声で怒鳴る、暴力を振るうことが多くなります。

●保清や身だしなみの無関心が際立ち、お風呂に入らない、着替えをしない、歯を磨かない等のため一人暮らしの方は何年間もお風呂に入らない場合もあります。

●同じことを繰り返す「常同行動」も特徴です。

①手をたたき続けたり、電気をつけたり消したりなど同じ動作を繰り返します。

生活全般では、同じ時間に起き、ご飯を食べ、家を出て、同じルートを散歩するといった決まった「時刻表的行動」をします。

③同じコースを何度も行き来する周遊行動をします。

④同じものを収集する。ゴミ置き場から捨てられたものを収集して溜め込みゴミ屋敷化する。

⑤常同性が食生活に表れ、同じものばかりを食べ続けるようになります。おまんじゅうやチョコレートなど、甘い物をやたら食べるようになります。

●それ以外に、側頭葉という言語を司る領域も侵されることで言葉の意味は分かるけど、話がスムーズに出てこない、会話はスムーズにできるのに相手の言葉の意味が分からなくなってしまめ意思疎通・コミュニケーションが図りにくくなります。

でも、短期記憶等は比較的保たれます。

上記の特徴から、介護者家族はもとより介護医療の専門職の方もお手上げ状態となることが非常に多いため、向精神薬で過鎮静にさせられたり、精神科に入院して戻ってこれないという対応をとられることも多いです。

このような前頭側頭型認知症ですが、実はその特性を逆手に取ることで粗暴さが緩和したり、不適切な生活習慣から適切な生活習慣に改善することができます。

常同行動を特徴とする方の場合は、それを逆手にとって「ルーチン化療法」をしてみましょう。

常同行動に加え、周りの環境に影響を受けやすいという症状を逆に利用して、万引きをしたり、お風呂に入らなかったりする社会的に不適応な行動を、適応的な行動へと行動変容させていこうという療法です。

例えば、毎日デイサービスに通って、決まった時間にお風呂に入ることを習慣にすることで毎日デイサービスに行き、お風呂に入るようになります。

また、編み物・折り紙・タオルたたみ・映画鑑賞・絵を描くetc.の適切な行動をルーチン化することで自己有能感、自己効力感により粗暴さが緩和していきます。

その方の何が得意なのか、何をプライドを持っているのか、役割としているのかなどを見極めて、適切な行動を常同的に取り組むことで相対的に不適切な行動が減っていきます。

私が以前介入したケースでは、その方自身はゴミ捨ての当番を役割と認識して行動しているのですが、はたから見ると、ゴミ出しに来た人のゴミを奪ったり、清掃車が来ると車に近寄ったりして困った行動としか認識されていませんでしたが、その行動を「ほめる、認める、感謝する」かかわりで粗暴さが解消されました。

適切な行動へと行動変容に取り組むときに重要となるのが些細なことでも、その方にとってのメリット(好子)を与えることがポイントです。

その他、聴覚情報処理に難がある(言葉の理解が困難)ので、視覚的に目で見てわかるようにイラストや写真、簡単な文字やひらがな等で、やることを伝えることも効果的です。

自発的な身辺行動や日々の過ごし方を望ましい行動の「時刻表的行動」にするために、「いつ・どこで・次に何をするのか」など一日の流れの日課表、一週間の流れをの週課表を視覚的手掛かり(イラスト・写真・文字など)で示すことで、自分のやるべきことに見通しがつくようになるので混乱したり衝動的な行動を緩和できるようになります。

 

言語療法も効果があります。

漢字は読めなくなってしまいますが、ひらがなは比較的読むことができます。

そこで例えば、100円均一で児童向けのイラストカードの裏にひらがなが書いであるもので、イラストを見て、それが何か当てる練習をゲーム感覚で繰り返します。ここで注意することが「エラーはさせない」です。「これは何ですか?」と2回聞いて答えられない場合は、伝え手が小声で答えを伝えて(言語プロンプト)、相手に行ってもらいます。その直後に賞賛を与えてください。3回連続してエラーをすると「言えない」ことを学習してしまうためです。

毎日、新聞記事をノートに書き写すのも良いでしょう。こうした言語療法が一種のルーチン化療法として気分の安定に役立つこともあます。

 

介護者家族及び介護医療の専門職の方々の対応でお願いしたいのは、失われたものばかりに目を向けないようにしてください。

「これも出来なくなった」「あれも分からなくなった」と不適切な行動に注意が向いて落ち込んだり、悲しくなったり、苛立ったりする気持ちはよく分かりますが、適切な行動に注意を向け、少しでも出来たことを褒めたり、感謝したりする気持ちを持って対応してください。

前頭側頭型認知症の症状がある人は足腰など身体機能は比較的元気です。アルツハイマーのように記憶や空間を認識する能力が衰えることがあまりないので、出掛けても道に迷うことなく、むしろ毎日決まったルートを通って帰ってくることができるので、いつも歩く道に危険な場所がなければ、外出させてあげてください。

注意が散漫になるので、注意をしっかり向けさせるために話しかける時は名前を呼ぶ、ボディタッチする(叩かれたと誤解する場合があるのでその方の特性に合わせてください)、周囲の雑音を消す(テレビを消すなど)、分かりやすく簡潔に話す、文字にして伝えるなどです。

こだわりが強くなるので、発言や行動をなるべく否定・抑制しないこともポイントです。否定・抑制されると怒りの情動反応により暴言暴力に発展します。

 

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