The New England of Journal of Medicineという学術雑誌に『Cycling May Help Freezing of Gait in Parkinson's Disease』という論文が掲載されていました(2010 362(13):e46)。

 論文の中で報告された症例は、58歳の男性で、10年前にパーキンソン病の診断を受けていました。男性は、すくみ足や突進歩行があり、方向転換は転倒す るために介助がなければ不可能でした。しかし、自転車に一旦乗ると、障害物を避けることや、カーブを曲がることができ、スムーズに走行することが可能でし た。この症例以外にも、歩行障害やバランス障害のあるパーキンソン病患者20例が自転車をスムーズに乗ることが可能でした。

 このような歩行障害や姿勢反射障害のある患者さんの多くは、転倒恐怖があり、家に閉じこもりがちです。このことが、うつや、便秘、認知機能の低下、脳血 管障害、循環器疾患、退行性筋萎縮など、その他の症状を悪化の誘因や原因となり、全身状態の衰弱へとつながる恐れがあります。そのような状態を防止するた めに、このサイクリングは活用できる可能性があると考えられています。

 なぜ、パーキンソン病患者は歩行が困難であるのに、自転車に乗ることができるのか?このことについては明らかではありません。しかし、運動症状が重症化したパーキンソン病患者に対するリハビリテーションとして非常に有用である可能性が出現しました。

 現在、論文の著者であるBloem博士らは、マイケルJフォックス基金を用いて、自転車によるリハビリテーション群と通常の運動群とのランダム化比較臨床試験を行われているそうです。

 それにしても、運動症状が顕著なパーキンソン病患者さんが自転車をエクササイズとして利用できるかもしれないということに驚きました。この著者は、症例 が毎日15マイル(24km)の距離をサイクリングしていることを聞き、そんな馬鹿な!?と思ったそうです。このように、普段の何気ない観察や患者さんの コメントからの疑問や気づきが、実は一番大切なことなのかもしれません。

 The New England of Journal of Medicineのページ(下記のリンク先)でビデオを視聴することが可能です。http://content.nejm.org/cgi/content/full/362/13/e46