総評75点(模型欲しい指数85%)
原題 DUNKIRK
製作年 2017年
製作国 アメリカ
配給 ワーナー・ブラザース映画
上映時間 106分
(あらすじ)第二次世界大戦が本格化する1940年、フランス北端の海の町ダンケルク。フランス軍はイギリス軍とともにドイツ軍に圧倒され、英仏連合軍40万の兵士は、ドーバー海峡を望むこの地に追い詰められる。背後は海。陸海空からの敵襲。そんな逃げ場のない状況下でも、トミー(フィオン・ホワイトヘッド)やアレックス(ハリー・スタイルズ)ら若き兵士たちは生き抜くことを諦めなかった。一方、母国イギリスでは、海を隔てた対岸の仲間たちを助けようと軍艦だけでなく民間船までもが動員され“史上最大の救出作戦”が動き出そうとしていた。ドーバー海峡にいる全船舶が一斉にダンケルクへと向かう。民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)も、息子らとともに危険を顧みずダンケルクを目指していた。英空軍パイロット・ファリア(トム・ハーディ)も、数において形勢不利ながらも出撃。タイムリミットが迫るなか、若者たちは生きて帰ることができるのか……。(以上Movie Walkerより抜粋)
スピットファイアがかっこよかったぜ!以上!
クリストファー・ノーラン監督の最新作にして最高傑作との呼び声が高い本作。国内の評判も上々といったところですが、僕はちょっとだけ物足りなかったです。
ノーラン監督作についていつも同じ印象を持つのですが、どの作品も映像は抜群にかっこいいのです。そして登場キャラクターも世界観の構築もほぼ完璧、なのにどうしてかモタつく展開や凝り過ぎの時系列演出のせいで、作品に必要な緊張感が最後まで持続できていない気がします。
本作は、3つのパート、ダンケルクの海岸で脱出を試みる一般兵の視点、救援に行く民間船の乗組員の視点、そしてその脱出をアシストする戦闘機のパイロットの視点が順番に描かれるオムニバス形式で展開します。ところがそれぞれの視点の時系が異なるのです。海岸にいる一般兵は、『タイムリミット』の一週間前から。民間船の乗組員は一日前から。そしてパイロットは1時間前からスタートします。映画が進むにつれ、これら三つの時間は、『タイムリミット』の一点に向けて集約していくわけですが、この演出、外連味以外に映画にとって良い効果を上げているようには思えません。
何故なら、歴史的事件なんでネタバレも何もないですが、一応このストーリーは、海岸に取り残された数十万人の連合国軍(イギリス兵)の命運が、サスペンス要素なわけです。「救出は間に合うのか?それとも全滅か」という点ですね。自然、時系列で一番古い、海岸に取り残された一般兵トミーの視点が物語の軸となります。ところが、場面が変わると、時間は進んで民間船の船長がダンケルクへ船を走らせている。一週間前から絶体絶命のトミーたちですが、基準点の一日前の時点で、ダンケルクの残留兵たちはまだ全滅していないことが判ってしまっているので、かなり興が削がれます。
「いや違うんだよ、この映画のサスペンスはやっぱりタイムリミットの一点にあって、そこに間に合うかどうかが描かれているんだ。」という向きもあるでしょう。では、そのタイムリミットとはなんだったのでしょう。前段からわざと使っている単語ですが、この映画ではその一点がはっきりとは提示されません。ドイツ軍の総攻撃が始まる時間?破滅へのカウントダウン?物語は進むものの、一週間後、一日後、一時間後何が起こるのか、鑑賞中、観客にはよくわからないつくりになっています。そしてそのカウントダウンがどうやら終わる段になって、「え?この民間船がダンケルクに到着して、トミーが助かるまでのカウントダウンだったの?」といささか拍子抜けするわけです。
ちなみに、ダンケルク救出作戦で脱出できた英国兵は約40万人。当然のことながら、一時間程度で完遂できる作戦ではなく、1940年の5月24日から6月4日までの約10日間に行われた作戦です。このことから、そもそも映画で採用されたカウントダウン形式がはまる戦場であったか疑問です。
ノーラン監督は本作に関してのインタビューでセリフを極力排し、106分という短めの上映時間で緊張感を持続させ、観客に自らもダンケルクの海岸に取り残されたような臨場感を味わってほしい旨のことを言っています。そうであるならば、僕は三つの視点を同じ配分で描くのではなく、一瞬先の命運さえわからない一般兵トミーをメインの視点にして、あとは同じ時系列でダンケルクという戦場の副次要素、ダンケルクという港町の地形であるとか、迫りくるドイツ軍の神速の用兵であるとか、撤退作戦を立案する参謀本部とか、それをサポートする民間船や戦闘機といったところを、状況説明的に要所で挟んで、主人公トミーは生きて帰れるのかという一本道のストーリーにして、クライマックスに水平線を埋め尽くす救援の民間船を持ってきてベタな感動を狙った方が、迫力があったのではと思います。オムニバス形式にすることにより、戦争に関わる様々な人間模様を描くことはできたのでしょうが、映画を観終わっての最も大きい印象が、「やっぱりスピットファイアはかっこいい。」では、元も子もない気がします。
気に入らなかったところばっかり並べましたが、前述したように、映像はとにかくカッコよく、後味も爽やか、戦争映画につきもののゴア描写も少なく、このジャンルが苦手な人でも気楽に楽しめる気軽なエンターテインメント作品になっているとは思います。『プライベート・ライアン』なんか、苦しすぎて二度と鑑賞したいと思いませんが、この映画は何度か観てもいいなとレシプロ機好きの筆者は思いました。
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