「とかく物事には明暗の両方面がある。私は光明の方面から見たい。そうすれば、おのずから愉快な念が湧いてくる。」ーー新渡戸稲造の言葉です。
日清戦争に勝利し、世界列強の仲間入りを果たしつつあった激動の時代、新渡戸は『武士道』を著し、世界の人々に日本文化の根底に流れる精神を紹介しました。
「文明国=キリスト教国」としか考えられなかった頃のこと。異教徒にも関わらず急速に強大な力を持ち始めた極東の島国は、欧米人の目には少なからず不気味な存在に写っていたでしょう。
日本人に対する知識が皆無に近い人たちに、日本人自身でさえ明確に自覚しているとはいえなかった「武士道精神」を、しかも不慣れな英語で解説することは、おそらく困難を極めたはずです。
しかも、そこに書かれた内容によって世界中の人の日本人観が左右されるとなれば、そのプレッシャーは計り知れないものがあったでしょう。何度も挫折しかかったかもしれません。
しかし新渡戸は、光が差し込む「光明の方面」を見失うことなく、最後までその歴史に残る大仕事を成し遂げました。
1900年にアメリカで刊行された『武士道』は大ベストセラーとなり、各国語に翻訳され世界中の人々に読まれました。
発行から4年後、日露戦争が勃発した時、米国のルーズベルト大統領は『武士道』を丹念に読み、日本人の精神性の高さを評価して、仲介役を果たしたとわれています。
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□書籍のご紹介
『武士道』
新渡戸稲造著/岩波文庫
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