ここではまだ8合目までいったら迂回して元の山小屋で合流する気でいた。ところが、雨風に耐えながら下っていると、だんだんガスが濃くなり視界も悪くなってくる。風もさらに強くなりほぼ台風の感じ。ときおり、よろっと体が持って行かれるメンバーもいる。ガスが濃いときは自分たちが下りるルートの先5~10mくらいまでが認識できる範囲。先頭を行くメンバーのウェアの色がぼやける。初めての登山は新田次郎「八甲田山、死の彷徨」の様相を呈してきた。無事下山した今となっては大げさだが「遭難」の文字が浮かんだのは、たぶんオレだけではなかったはず。こうなったらお互いが自分たちの安全を確保することが第一。3.11での「津軽てんでんこ」を思いだす。どうか全員無事でいてくれ、ゆっくり組の女子と年寄り(以降B班と呼ぶ)。
そんなこんなで8合目山小屋までたどりつく、既に元の山小屋まで迂回して合流するのは無理と諦め、このまま富士宮ルートで下りる旨をB班にメールで連絡。小休止の後、またひたすら雨風に打たれながら下っていく。道は相変わらず溶岩ごつごつで気を緩められるところはない。常に1歩1歩、足をどこにおこうか考えながら下る。このところ平均風速20m/s、最大風速30m/sって感じ。どこまで下っても悪天候のまま。「遭難」の不安は消えず、だまーってひたすら1歩1歩足場を確保して下るだけ。
ジョークを言う心の余裕など到底ない。3番目に並んで下っているメンバーのザックカバーが風で飛ばされる。バサバサバサ。20m横に見えているのだが、もう取りに行けるものでもない。見ている内にさらに遠くにとばされた。オレの後ろ(しんがり)で進んでいた諏訪のザックカバーも知らないうちに飛ばされていた。そうなると中の荷物も濡れてしまう。その辺りを想定した準備をしているだろうか。