[中高の始業時間、午前8時半以降に―米学会が声明]
(あなたの健康百科 2014年09月03日)
<十分な睡眠時間確保のため>
米国小児科学会(AAP)は8月25日、青少年が十分な睡眠時間を確保できる
よう、中学校と高校の始業時間を午前8時半以降とすることを求める声明を、
同学会発行の医学誌「Pediatrics」(2014; 134: 642-649)に発表した。
最近の調査で米国の中高生の多くが睡眠不足なことが明らかになったが、
米国では始業時間が8時以前の公立学校が少なくなく、同学会はこのことが
中高生の睡眠不足の一因となっていると説明。
各学区の関係者に、始業時間を遅らせるよう呼びかけている。
<高校生の約9割が睡眠不足>
中高生といえば、勉強や部活動、アルバイト、遊びなどで忙しくなり、
ついつい睡眠不足になりがち。
近年ではこれに加え、テレビや携帯電話、パソコン、テレビゲームなどの
電子メディアが普及していることで、睡眠不足に拍車がかかっている。
米睡眠財団の調査では、米国の6~8年生(日本の小学6年生~中学2年生に
相当)の59%、高校生の実に87%で平日の睡眠時間が推奨(8.5~9.5時間)を満たしておらず、多くの中高生が睡眠不足なことが明らかになった。
睡眠不足はうつ病や肥満など心身への悪影響を招くだけでなく、勉強や仕事の
効率にも影響する。
つまり、中高生の時期に睡眠不足だと、成績が落ちてしまい、自身の将来に
影響する可能性も出てくるのだ。
米国小児科学会は、中高生が睡眠不足になる理由は上記のほかに、成長による
体の変化と、学校の始業時間の早さを挙げている。
<午前7時台始業の学校も>
日本の公立学校は多くが午前8時から午前8時半の間に始業しているよう
だが、米国の公立高校では午前8時前の始業が4割を超える。
中学校も8時始業が平均的で、午前7時45分より前に始業する学校も約2割に
上るという。
思春期はそれまでと比べてさまざまな体の変化があり、その中で睡眠に
関わるホルモン、メラトニンの分泌が遅れ、小学生時代よりも睡眠と覚醒の
サイクルが2時間遅くなるといわれている。
同学会は、こうした体の変化に対して始業時間が早過ぎるとコメント。
始業時間が早いある高校の生徒では、始業時間が30分遅い高校の生徒と比べて
睡眠時間が短く、集中力が下がり、問題ある態度や長期欠席、昼間に眠気を
もよおすケースが多かったことなど複数の研究結果を紹介した上で、始業
時間を遅らせるよう主張している。
<始業時間遅らせても夜更かしにつながらず>
始業時間を遅らせることで夜更かしを招いてしまうのではないかとの意見も
あるが、ミネソタ州の高校生約1万8,000人の調査で、始業時間を午前7時
15分から午前8時40分に変更しても就寝時間は変わらず、睡眠時間が長く
なったなど、複数の研究でこの懸念は否定されている。
同学会は今回、始業時間を遅らせることだけでなく、下記5項目の達成に
向けて努力するよう、米国内の各学区の関係者に強く求めている。
(1)10歳代には8.5~9.5時間の睡眠が必要で、昼寝や週末の"寝だめ"では
補てんできない
(2)健康問題の専門家は、青少年の睡眠不足の一因である体の変化や
学校の始業時間などに関し、本人や保護者、教師、スポーツ指導者
らを教育すべき
(3)青少年や家族をはじめ一般市民は、米国小児科学会などの団体から
睡眠不足がもたらすデメリット、対策のメリットについて教育を
受けるべき。
教育では、本人が行動を変えることの重要性を強調する
(4)小児科医らは、科学的に根拠のある情報や助言を提供し、始業時間を
繰り下げるメリットについて学校管理者や保護者、教師らへの教育を
後押しすべき。
ほとんどの地域の中学校、高校は午前8時半以降の始業を目指すべき
(5)小児科医は睡眠の重要性や健康的な睡眠習慣について、青少年や
家族を定期的に教育し、青少年の就寝時間を決めたり、寝室での
電子メディア利用を監督したりすることについて、保護者の関与を
支援すべき
http://kenko100.jp/articles/140903003117/