[音楽を聞くと遺伝子も反応している、脳への影響もある?]
(Medエッジ 2015年3月27日)
<音楽経験のある人だけが影響>
音楽経験のある人がクラシック音楽を聴くと、遺伝子も反応して活動が変化
するようだ。
フィンランド、ヘルシンキ大学のカンドゥリ・チャクラバルティ氏らの研究
グループが、オンライン科学誌のピアJ誌において2015年3月12日報告して
いる。
<クラシック音楽が遺伝子にどう影響?>
脳の画像検査によって、音楽を聴くことで人間の脳構造や機能に変化が
見られると分かっている。
この効果を仲介する分子のメカニズムはまだ分かっていない。このたび
さらにゲノムや生物情報学的な分析によって、遺伝子レベルでの変化が
あるかを検証することとなった。
研究グループは、クラシック音楽を聴くと人の「トランスクリプトーム」に
効果があるのかを検証した。
人間はDNAの遺伝情報に基づいてタンパク質を作り出している。
タンパク質を作るときには、いったんRNAというDNAの仲間に変換する
プロセスがある。
このRNAの全体を調べるのがトランスクリプトームで遺伝子の活動を検査
できる。
研究グループは、クラシック音楽を聴いたあとの48人の血液を取ってきて、
遺伝子全体のトランスクリプトームを調べた。
クラシック音楽を聴いていない比較対照の15人についても同じく行った。
音楽の経験は音楽に対する反応に影響を与えることが分かっている。
そこで、音楽の適性がもともとある人、音楽教育を受けた人という条件の
影響も調べている。
<音楽適性と関係する場所が活発に>
音楽の適性がもともとある人で45遺伝子、音楽の教育を受けた人で
97遺伝子に変化が確認された。
どんな遺伝子に変化が起きたかを調べると、遺伝子の活動が増えたのは、
主に脳内麻薬と言われる「ドーパミン」の分泌と輸送、神経細胞の新たな
増殖、タンパク質の変化を促す変化などだった。
最も増えていたのは、「アルファシヌクレイン」と呼ばれるもの。
一般的にはアルツハイマー病やパーキンソン病といった病気との関係が指摘
されるタンパク質だ。
23対ある染色体のうち4番目に当たる「4q22.1」という場所の音楽適性と
最も結びついた領域にあって、音楽適性と関連があると知られる「GATA2」
に調節されるものだ。
なお、音楽経験のない被験者では特に違いは見られなかった。
音楽を聞くと遺伝子レベルで変化が起こるというのは今後、さらに注目される
のかもしれない。
http://www.mededge.jp/b/heal/10781