[子どもの目の健康を守る…斜視・弱視を早期発見するためには]
(読売新聞 2018年1月18日)(心療眼科医・若倉雅登のひとりごと)
<乳幼児期や学童期…二度と獲得できない機能>
私は小学校の校医、認定こども園の園医を15年以上務めています。
そこでの最も大切な役割は、斜視や弱視(眼鏡をかけても視力が出にくい
状態)の発見だと思っています。
それは、乳幼児期や学童期が、ものを見る「視機能」の発達にとって重要な
時期だからです。
視力や、両目で見て距離や奥行きを測定する「両眼視」機能は、この時期に
急速に育ちます。
この時を逃すと、二度と獲得できないのです。
距離や奥行きを測定する感覚は、両方の目が必要です。
3歳児健診が特に重視されるのは、こうした理由があるからです。
小学校、こども園での検査は、次年度に就学・就園する子どもを含めた全員を
対象にします。
まず養護教諭らが大体の視力を測定するので、眼科医としての私は、目の
位置のずれがないかどうかに最も注意しながら、一人一人をチェックします。
一般に「斜視」と聞くと、明らかに目の位置がずれた外見を思い浮かべる
でしょう。
しかし、1回見ただけではわからない潜伏(隠れ)斜視もあり、慎重に確認
しなければなりません。
また、子どもが自然と首を曲げて位置のズレを修正している「眼性 斜頸 」の
ケースもあるので、その点にも注意します。
<1学級に1人程度…1秒で「斜視」判定>
ところで、小児の斜視はどのくらいの頻度で発生していると思いますか。
日本人の頻度を正確に調べた研究はありません。
両眼視機能が不十分なものを斜視とすると、人口の30%近くいる、とする
意見があります。
ただ、世界的には、各国に2~3%前後とする研究が多いようです。
これだと、1学級に1人程度になります。
日本には、眼科の学校医が配置されていない地域がまだ多くあります。
たとえ配置されていたとしても、必ずしも斜視や小児眼科を専門とする
医師とは限りません。
そこで、非常に進化した最新機器の助けを借りることが、斜視や弱視を早く
見つけるための有力な選択肢となってきます。
例えば、米国生まれの「ビジョンスクリーナー」というコンパクトな機器は、
約1メートル先から画面をのぞきこむと、わずか1秒で、近視や遠視などの
両目の屈折や、斜視、瞳孔の検査ができる優れものです。
小児科医でも扱える可能性があり、既に導入している自治体もあるそうで、
今後利用が広がることを期待しています。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180117-OYTET50037/